令和7年2月定例会
意見書・決議
離島・半島地域の振興対策に関する意見書
離島・半島地域は、豊かな自然と独自の歴史・文化を有し、自然環境の保全や食料の安定的な供給など国家的・国民的役割を担っており、県民のみならず国民共通の財産である。
本県の離島・半島地域では、これまで県、関係市町においても様々な振興施策を実施し、着実な振興が推進されてきた。
しかし、離島・半島地域を取り巻く環境は依然として厳しく、人口減少・少子高齢化の進行、航路・航空路の維持、医療や福祉などの生活インフラ整備の遅れなどの課題を有している。
平成29年度に有人国境離島法が施行されて以降、特定有人国境離島地域では、法に係る各種施策の積極的な推進により、法施行前の水準と比べて人口の社会減が抑制され、一部市町では社会増を達成する年が出てきているものの、人口減少や地域の衰退といった構造的な課題の解決には至っていないところである。特定有人国境離島地域における地域社会の維持に向け、これまで以上に市町や関係団体等との連携を図りながら、地域の振興施策に取り組む必要がある。
また、令和6年能登半島地震では、改めて半島地域の社会基盤の脆弱性が浮き彫りになったことを踏まえ、半島地域において住民が住み続け安定した暮らしを送れるよう、半島振興計画などに基づき、地域が有する豊かな地域資源を活かしつつ、地域の創意工夫を凝らした取組への支援の充実などが必要である。
よって、県におかれては、下記の事項について、積極的かつ真摯に取り組まれるよう、強く要望する。
記
1 離島・半島地域振興対策について
(1)半島振興法の確実な延長に向けて、防災・減災対策や近隣県との広域連携事業など市町が有効に活用できるよう、必要な財源の確保など国による支援措置の拡充等について、政府・与党等に要望すること。
(2)テレワークなど多様な働き方の浸透も踏まえ、移住者増に向けて、離島・半島地域における移住支援事業の更なる活用に努めること。
(3)観光振興について、引き続き、しま旅滞在促進事業を実施し、離島地域への誘客を図るとともに、半島地域における地域資源の活用など県内周遊につながる旅行商品の企画・造成などに取り組むこと。また、観光消費額の増加に向け、離島へのクルーズ船の入港等によるインバウンド消費を取り込めるような観光コンテンツづくりに努めること。
(4)しまの産品ステップアップ推進事業を通じて、大手食品メーカーとコラボレーションした商品の全国販売や支援した事業者の販売額の増加など成果があがっていることから、引き続きしまの事業者への支援を実施するとともに、事業者の生産体制の拡大など環境整備に対する支援にも努めること。
(5)廃校になった学校跡地などの遊休施設について、外国人労働者など移住者向けの宿舎や、移住体験施設、企業誘致への活用など、地元市町等と連携し、庁内部局間で横断的に取り組むこと。
(6)水産振興について、漁業者の減少は地域の活力の低下等につながることから、赤潮対策、藻場造成、漁業の高付加価値化による漁業所得の向上、海業の取組を先進的に実施している地域の経験やノウハウの横展開など県内の漁業者の就業意欲を高める取組を実施すること。
(7)農林業や水産業における流通コストや生産コストの上昇分の円滑な価格転嫁に向けて、コストを反映した価格形成を促すための環境整備に関係機関と取り組むこと。
2 有人国境離島法対策について
(1)有人国境離島法の改正・延長に当たり、災害対策やデジタル技術の活用、人手不足対策など、関係市町等に意見を聴き、政府・与党等に要望すること。
(2)雇用機会拡充事業について、事業者に対するフォローアップの取組や当該事業の活用を促す効果的な情報発信を引き続き行うとともに、創出された雇用の場に対する島外も含めた人材確保に市町と連携して取り組むこと。
(3)航路・航空路運賃低廉化事業について、その効果が増すよう引き続き、島内外に向け、制度の利用方法等の周知やPRを図ること。
3 離島・半島航路対策、離島航空路対策について
(1)島原半島と近隣県を結ぶ半島航路は、半島地域の産業や観光の振興にとって非常に有力な手段であり、航路の活性化に資する有明海沿岸地域の観光協会による広域連携の観光振興の取組などについて、関係自治体とも連携しながら、より一層関わっていくこと。
(2)離島航空路線は、住民の日常生活はもとより、交流人口の拡大にもなくてはならない重要な交通手段であり、運航事業者と連携し、離島航空路線の維持、安全かつ安定的な運航に努めること。
4 関係人口拡大対策について
(1)離島留学制度について、生徒がしまで安心して生活を送れるよう、引き続き生徒やしま親、教員に対するサポート体制の強化を図るとともに、学校の教育内容の更なる充実や離島留学生を受け入れる体制の充実など当該制度の魅力度向上に努めること。
(2)観光まちづくりの取組について、地域の魅力をいかした県内周遊の促進につながるよう、企画立案の段階から意見交換や方向性の確認など市町が参加できる仕組みづくりに取り組むこと。
(3)関係人口の創出・拡大について、長崎県をひとまとめとするだけではなく、離島地域や半島地域など地域の特性や物理的距離を踏まえ、よりユーザー目線に立った取組を行うとともに、インフルエンサーの活用など本県の魅力の効果的な情報発信に努めること。
(4)ノマドワーカーが長期間滞在し、消費行動による地域経済への波及効果が得られるよう、宿泊施設との連携や民間の新規事業の創出に資する調査研究を実施すること。
以上、意見書を提出する。
令和7年2月21日
長 崎 県 議 会
(提出先)
長崎県知事 大石 賢吾 様
観光振興対策・国際戦略対策、IR対策、新幹線・二次交通対策に関する意見書
新型コロナウイルス感染症の蔓延により大きな打撃を受けた本県観光は、一昨年5月の行動制限の解除や訪日者に対する水際措置の終了等により回復基調にある。
人口減少が続く本県において、観光は、消費の拡大や雇用の創出など、地域経済への波及効果が大きく、地域を活性化させる裾野の広い重要な産業であり、引き続き、特徴ある地域資源に恵まれた本県ならではの観光資源を磨き上げ、誘客の取組を積極的に展開していく必要がある。また、インバウンドの拡大、国際交流を通じた地域活性化、外国人材の受入確保等に向けた取組を強化していく必要がある。
本県のみならず、全九州の期待を背負い、経済界や行政、議会が一体となって誘致を進めてきた、九州・長崎特定複合観光施設(九州・長崎IR)については、一昨年12月に認定を行わないこととした国の審査結果が公表された。
雇用の拡大や関係人口の拡大など地域活性化の起爆剤として大きな期待をかけていた本県、特に佐世保市をはじめとする県北地域にとって、大変残念な結果であるが、この地域の振興は、県勢浮揚に不可欠であり、九州・長崎IRに代わる実効性のある地域振興策の速やかな施行は喫緊の課題である。
また、これまでの人的、財政的投資を無駄にしてはならず、今回のプロジェクトで得られた様々な知見を、今後の本県の施策に有効に活用しなければならない。
西九州新幹線(長崎~武雄温泉間)は、開業後2年が経過し、一定の開業効果が認められる一方、九州新幹線西九州ルート(新鳥栖~武雄温泉間)については、関係者で引き続き協議が進められているものの、依然、整備方式が決まっていない。
全国の新幹線鉄道網に繋がることは、西九州地域の発展に必要不可欠であり、佐賀県をはじめ関係者となお一層議論を積み重ねていく必要がある。併せて、整備した新幹線の開業効果を限定的なものとせず、広域的に波及させるため、在来線と新幹線網との接続の確保など、その効果を拡大、定着させるよう取り組む必要がある。
よって、県におかれては、下記の事項について、積極的かつ真摯に取り組まれるよう強く要望する。
記
1 観光振興対策・国際戦略対策について
(1)インバウンドの更なる回復に向けた、宿泊、食、体験などの観光情報の発信を強化し、国際クルーズや国際定期航空路線の誘致拡大を図ること。
(2)更なる観光需要の取り込みに向けた効果的なプロモーションや県内周遊の促進、観光関連産業における人材の確保・育成を推進すること。
(3)本県の魅力的な歴史・文化・自然・食を活かした長崎のファンづくりにつながる観光コンテンツの造成及び充実に努めること。
(4)国際友好交流、県産品輸出、外国人材受入等を促進するための戦略的かつ計画的な取組を強化すること。
2 IR対策について
(1)九州・長崎IRプロジェクトにより得られた知見を活かし、実効性のある、佐世保市をはじめとする県北地域振興策を、全庁を挙げて強力に推進すること。
(2)今後の対応については、国の動向等、情報収集を引き続き行い、適宜、県議会に情報提供を行うこと。
3 新幹線・二次交通対策について
(1)一刻も早く、武雄温泉駅での対面乗換方式を解消し、全線フル規格による整備を早期に実現すること。
(2)北陸新幹線との一体的な財源確保やフリーゲージトレイン導入断念の経緯を踏まえた地方負担の見直し、並行在来線等の諸課題の解決に向けた佐賀県との協議など、政府・与党、JR九州や関係先への働きかけを強化すること。
(3)西九州新幹線の利用促進及びその開業効果を広域的に波及拡大させる取組をJR九州や市町等と連携し、積極的に推進すること。
(4)全線フル規格による整備実現後の県北地域からの新幹線網への直通運行など、佐世保線の輸送改善について、政府・与党、JR九州などに強く働きかけること。
以上、意見書を提出する。
令和7年2月21日
長崎県議会
(提出先)
長崎県知事 大石 賢吾 様
半導体・デジタル戦略対策、スタートアップの育成支援対策及び防災対策に関する意見書
人口減少・少子高齢化の進行等に伴う地域経済や公共交通、地域コミュニティの維持・確保、県民の安全・安心な暮らしの実現、目下の人手不足や物価高騰等の不確実な社会・経済状況を踏まえた対策については、スピード感を持って的確に取り組んでいかなければならない。
今後も世界的な成長が見込まれ、国の強力な支援策のもと九州を中心に国内での投資が活発化する半導体関連産業について、その需要を本県に取り込むため、新たな雇用の創出が期待できる企業誘致や県内企業の取引拡大に繋がるサプライチェーン構築などの取組を積極的に進め、若年層を中心とした人口の流出対策や地域経済の活性化を図っていくことが重要である。
また、スタートアップの創出を促進するため、首都圏の投資家等との連携を強化し、県外からのスタートアップの呼び込みや、首都圏企業等との取引拡大の推進を図るなど、様々なチャレンジができる環境整備・仕組みづくりを通して、県全体の産業振興に繋げていくことが重要である。
さらに、様々な行政課題に対応し、質の高い行政サービスを提供していくためには、庁内DXの推進と行政事務におけるデジタル技術を活用した業務効率化をしっかりと進めていく必要がある。
加えて、頻発化・激甚化する自然災害から県民の生命・財産・暮らしを守り、地域社会の機能を維持するためには、災害に強いインフラの整備を急ぐとともに、能登半島地震での課題等を踏まえて、防災対策を強化していく必要がある。
よって、県におかれては、下記の事項について、積極的かつ真摯に取り組まれるよう、強く要望する。
記
1 半導体・デジタル戦略対策について
(1)半導体関連産業の更なる集積に向けて、地域の現状を踏まえつつ、アンカー企業の立地に対応できる工業用水を備えた工業団地を早急に整備すること。
(2)県内企業への発注が期待できる半導体製造装置のアンカー企業や、高度専門人材の雇用創出となる設計・開発拠点などの誘致に当たってはグローバルな視点を踏まえつつ、再生可能エネルギーの活用を誘因とすることも含めて取り組むこと。
(3)県内企業の技術力等の向上を支援するとともに、それらを活かした半導体関連産業のサプライチェーン構築・強化を図り、県内雇用の創出、県民所得の向上に繋げること。
(4)半導体関連産業で活躍する産業人材の育成・確保に向けた取組を充実させること。
(5)県内企業と大学等が連携する技術開発等の取組を推進すること。
(6)半導体関連産業の集積に伴う公共インフラの整備及び環境対策の取組の充実を図ること。
(7)AIやRPAの活用、行政手続のオンライン化など、行政におけるデジタル化を推進するとともに、様々な産業分野の県内中小・小規模事業者における人手不足や物価高騰など厳しい経営環境等の改善に向けて、生産性の向上に繋がるデジタル化の推進を図ること。
(8)離島・半島を多く有する本県の特性に鑑み、光ファイバーや5Gに加え、衛星通信技術等を活用した情報通信インフラの整備促進を図ること。
(9)ドローンやメタバース等の新技術の利活用を促進し、新技術実装連携“絆”特区の指定を踏まえた施策の展開を図ること。
2 スタートアップの育成支援対策について
(1)スタートアップの創出と起業の機運醸成に向けて、CO-DEJIMAなどスタートアップ交流拠点の更なる活用促進に努めること。
(2)交流会やワークショップの開催等によって、離島・半島地域を含めた県内全域でのスタートアップ創出の促進に取り組むこと。
(3)投資家や都市部大企業はもとより、近隣諸国等との交流も視野に入れつつ、マッチングを推進することで、県内スタートアップの資金調達や売上拡大など成長に向けた支援の強化を図ること。
(4)都市部スタートアップ集積拠点との連携強化等によって、県外からのスタートアップの呼び込みに努めること。
3 防災対策について
(1)県土強靱化に向けて、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の期間終了後も、切れ目なく継続的かつ安定的に取組を推進するため、「国土強靱化実施中期計画」を早期に策定し、その実現に必要な予算・財源を通常予算とは別枠で確保するよう、国に対し、強く要望すること。
(2)孤立集落対策や避難所環境の改善、防災教育及び人材育成など、昨年10月末に県が取りまとめた「能登半島地震を踏まえた防災対策の見直し」について、市町や防災関係機関、民間事業者、ボランティア団体など、さまざまな担い手と連携しながら、着実な推進を図ること。
(3)防災対策の見直しを取りまとめた時点で、国が検討中であった項目については、その後の国の検討結果や財政措置等を踏まえ、見直しを継続して行い、着実な推進を図ること。
(4)災害対応におけるAIやデジタル技術の利活用など防災DXの推進を図ること。
以上、意見書を提出する。
令和7年2月21日
長崎県議会
(提出先)
長崎県知事 大石 賢吾 様
東京一極集中の是正に向けた抜本的な改善策を求める意見書
地方創生の取組開始から10年の歳月が流れた。この間、本県でも様々な事業で地方活性化に注力してきたが、活力を生み出す元になる県民人口は、長崎県においては離島・半島を有し、他県と比べても人口減少が著しく人口減少に歯止めがかからない。
昨年の我が国の合計特殊出生率は1.20と過去最低を記録し、東京都は0.99まで低下するなど、都市部は地方よりも出生率が低い傾向で、少子化の一要因となっている。国全体の人口減少が続く中、一部地域では社会増で人口が増えており、特に進学又は就職を契機に若者が大量に流入する東京都の活力は高まる一方で、若者が流出する地方の活力は削がれていく。
また、東京都は集積する企業から徴収する法人事業税をはじめとした十分な税収があり、潤沢な予算を背景に手厚い行政サービスを提供できるが、財政力が劣る自治体には難しく、明らかに都道府県格差が生じている。人口及び産業が東京都1か所に集中することにより、国際競争力を伸ばして地方の発展に寄与するという意見もあるが、財政力豊かな自治体の住民だけが恩恵を受ける現状に対して、地方から不満の声が上がっており、格差の解消策が求められる。
よって、本県議会は、国会及び政府において、地方でも住民が持続可能な安定した暮らしを営み、また、全国どこでも同じ行政サービスを受けるために、全ての地方自治体が十分な収入を確保できる税制の改革、東京に集中する中央官公庁の地方分散、更に企業・大学に地方移転を促す制度構築など、東京一極集中の是正に向けた抜本的な改善策を講ずるよう強く要請する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年3月19日
長 崎 県 議 会
(提出先)
衆議院議長 額賀 福志郎 様
参議院議長 関口 昌一 様
内閣総理大臣 石破 茂 様
総務大臣 村上 誠一郎 様
文部科学大臣 あべ 俊子 様
厚生労働大臣 武見 敬三 様
経済産業大臣 武藤 容治 様
内閣官房長官 林 芳正 様