令和6年6月定例会

意見書・決議

議案及び採決結果  ● 主な質問・質疑  ● 会期日程  ● 本会議一般質問  ● 予算総括質疑  ● 意見書・決議  ● 議員提案条例

国土強靱化の計画的かつ着実な推進を求める意見書

 本県は、前線に伴う集中豪雨や台風の常襲地帯に位置していることに加え、急峻な山地や崖地が多く、全国で2番目に多い約3万6千箇所もの土砂災害警戒区域を抱えていることから、頻繁に洪水・浸水被害や土砂災害が発生している。また、令和6年能登半島地震の教訓を踏まえると、多くの半島を抱え、高規格道路のミッシングリンクも存在する本県では、大規模災害の発生時に人流・物流が寸断する危険性が高い。
 頻発化・激甚化する自然災害から県民の生命・財産・暮らしを守り、地域社会の機能を維持するためには、防災インフラの整備や交通ネットワークの強化などを急ぐ必要があり、国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の関係予算を最大限に活用しつつ事業を進めているが、その取組みはまだまだ道半ばである。
 全国の多くの自治体が同様な状況に直面していることを踏まえれば、5か年加速化対策の最終年度となる令和7年度の予算を十分に確保するとともに、国土強靱化基本法の改正によって位置付けられた「国土強靱化実施中期計画」を令和6年中に策定し、5か年加速化対策期間の終了後においても、継続的かつ安定的に対策を推進することが大変重要だと考える。
 また、世界的な原材料の品薄・高騰の影響による資機材の価格高騰への対応や、インフラ整備の担い手確保に資する建設業の賃金水準の向上などが強く求められている昨今の社会情勢の中でも、国土強靱化を長期安定的に進められるよう配慮することも不可欠である。
 さらには、働き方改革のため、令和6年4月から物流・運送業界などに時間外労働時間の上限が課されたことに伴い、物流の安定化・効率化など生産性向上を図るために必要な強靱なネットワークなどの社会資本整備も、なお一層強く求められている。
 よって、国におかれては、国土強靱化の計画的かつ着実な推進に向け、下記の事項を講じていただくよう強く要望する。



  • 「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の最終年度となる令和7年度においても、例年以上の予算を通常予算とは別枠で確保すること。
  • 「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の期間終了後も、切れ目なく継続的かつ安定的に取組みを推進するため、令和6年中に「国土強靱化実施中期計画」を策定し、その実現に必要な予算・財源を通常予算とは別枠で確保すること。
  • 大規模災害発生時の防災・減災に加え、物流の安定化・効率化など生産性向上にも資する国土強靱化対策が資材価格の高騰や賃金水準の上昇があるなかでも、長期安定的に進められるよう、新たな財源の創設等により、必要な予算の所要額を満額確保すること。
  • 令和6年度末に期限を迎える「緊急浚渫推進事業」及び令和7年度末に期限を迎える「緊急自然災害防止対策事業」、「緊急防災・減災事業」について、期間を延長すること。
  • 災害が発生した自治体に対し迅速かつ円滑な支援を行うため、地方整備局や研究機関等において必要な人員と体制の充実・強化を図ること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


  令和6年7月10日


長 崎 県 議 会


衆議院議長  額賀 福志郎 様
参議院議長  尾辻 秀久 様
内閣総理大臣  岸田 文雄 様
総務大臣  松本 剛明 様
財務大臣  鈴木 俊一 様
国土交通大臣  斉藤 鉄夫 様
内閣官房長官  林 芳正  様
国土強靭化担当大臣  松村 祥史 様
内閣府特命大臣(防災)



地方財政の充実・強化を求める意見書

 地方自治体は、社会保障関係費が年々増加し、物価高騰が続く中で、地方創生・人口減少対策や地域経済活性化・雇用対策、人づくり、大規模災害に対応するための防災・減災対策、DX・GX化の推進など、様々な政策課題に直面している。
 さらに、こども・子育て政策についても、国のこども未来戦略方針に基づく「加速化プラン」への対応が必要になるなど、行政需要はますます増大している状況にある。
 政府においては、「経済財政運営と改革の基本方針 2024」において、地方の一般財源総額について、2024年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保するとしたところであるが、長期化する原油価格・物価高騰等により社会経済活動へ大きな影響が生じるなど、地方財政は極めて厳しい状況下にあり、地方が物価高騰等の環境変化に適切に対応しつつ、地域経済の回復・拡大に継続的に取り組んでいくためには、更なる地方財源の確保・充実が必要不可欠である。
 よって、国におかれては、2025年度の地方財政予算全体の安定確保に向けて、次のとおり適切な措置を講じるよう強く求める。

  1. 地方財政計画、地方税のあり方、地方交付税総額など地方に関わる重要政策については、国と地方の協議の場において、地方と十分に協議を行い、その意見を反映すること。
  2. 地方創生・人口減少対策をはじめ、社会保障関係費の増嵩への対応、地域経済活性化・雇用対策、人づくり、防災・減災対策、DX・GX化の推進、物価高騰対策など、地方の実情に沿ったきめ細かな行政サービスを十分担えるよう、今後も安定的な財政運営に必要な一般財源総額の確保・充実を図ること。
  3. 地方交付税については、本来の役割である財源調整機能と財源保障機能が適切に発揮されるよう総額を確保するとともに、財源不足への補填については、臨時財政対策債の発行等によることなく、法定率の引上げを含めた抜本的な改革等による対応を検討すること。
  4. 地方創生を確実に推進するため、地方財政計画における「地方創生推進費(1.0兆円)」、「地域デジタル社会推進費(0.25兆円)」及び「地域社会再生事業費(0.42兆円)」を維持・確保すること。また、本県は離島・半島など条件不利地域を多く有するとともに、人口減少や高齢化が全国よりも進展している状況であり、その算定については配慮すること。
  5. デジタル田園都市国家構想交付金をはじめとする地方創生関連予算については、地域の活力再生や移住定住促進などの取組を推進するため、継続的かつ安定的な財源を確保すること。
  6. 全国的な賃上げの動きを踏まえ、会計年度任用職員を含む職員の給与関係経費については、地方自治体の財政運営に支障を来すことのないよう、必要な財政需要を地方財政計画に適切に計上すること。
  7. 地方自治体は、国を上回る行財政改革や歳出抑制の努力を行う中で基金の確保など財政運営の年度間調整に取り組んでいることから、地方の基金残高の増加を理由に地方財政計画の圧縮や、地方交付税の削減を行わないこと。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


  令和6年7月10日


長 崎 県 議 会


衆議院議長  額賀 福志郎 様
参議院議長  尾辻 秀久 様
内閣総理大臣  岸田 文雄 様
総務大臣  松本 剛明  様
財務大臣  鈴木 俊一  様
内閣官房長官  林 芳正  様



災害発生時における信頼性の高い情報連携体制の構築への支援を求める意見書

 現在、情報通信技術の進歩と、それに伴う様々なサービスの拡大により、私たちはいつでもどこでも、情報を入手したり、発信したりすることが出来る様になっている。そのため、インターネット上には膨大な情報やデータが流通しているが、その中には、事実とは異なる、偽情報や誤情報が流される事もあり、適切な対処が必要である。
 特に、災害発生時における情報は、多くの人々の命に直結する重要なものであり、現在、必死の復旧と復興を進めている能登半島地震においても、多くの偽情報が発信され、現場は大変に混乱したとされ、具体的には、救援を求める情報を受けて現場に行っても、誰もいなかったというケースも多々あったと聞いている。また、被災地の状況を知らせる画像情報においても、現場の実態とは全く違う合成されたと思われる画像も拡散されていた。
 いつどこで発生するかわからない災害に対して、特に発災直後は情報が大変に混乱する中で、被災者の命を救うために、1分1秒も無駄にはできない。その活動を大きく阻害する偽情報の拡散防止は喫緊の課題である。
 よって、国におかれては、災害発生時における信頼性の高い情報連携体制の構築に向けての支援の積極的な推進を求める。



一、情報発信者や情報発信機器の事前登録等により、情報の信頼性を担保し、現場からの正確な情報を収集し活用する情報連携環境を整備すること。

一、IoTセンサーやドローンを活用して、リアルタイムでの国と地方自治体の災害情報共有体制を整備すると同時に、適切な情報分析と迅速な対策を促す気象防災アドバイザーの自治体への配置を支援すること。

一、正確な情報を発信する公的情報サイトや政府認定のアプリケーション等、国民への普及を強力に推進すること。

以上、地方自治法第99条に基づき意見書を提出する。


  令和6年7月10日


長 崎 県 議 会


衆議院議長  額賀 福志郎 様
参議院議長  尾辻 秀久 様
内閣総理大臣  岸田 文雄 様
総務大臣  松本 剛明 様
内閣府特命担当大臣  松村 祥史 様
(防災、海洋政策)
デジタル大臣  河野 太郎 様
国土交通大臣  斉藤 鉄夫 様
内閣官房長官  林 芳正  様



地域における「こども誰でも通園制度」の制度拡充等を求める意見書

 「こども誰でも通園制度」は、子育て家庭の多くが「孤立した育児」の中で不安や悩みを抱えており、支援の強化を求める意見がある中、全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備するとともに、全ての子育て家庭に向けて、多様な働き方やライフスタイルにかかわらない形での支援を強化するため、月一定時間までの利用可能枠の中で、就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる新たな通園給付制度である。
 具体的な制度設計に当たっては、基盤整備を進めつつ、地域における提供体制の状況も見極めながら、令和7年度には法制度化し、令和8年度には法律に基づく新たな給付制度として全自治体で実施すべく、令和5年度から各地で試行的な事業が行われている。
 地域の実情に合わせた速やかな制度の導入に加え、育児と多様な働き方やライフスタイルの両立の推進のために、国におかれては、以下の事項についての特段の取り組みを求める。



一、十分な受け入れ先を確保するための施策を講じること
 試行的事業の職員配置や設備基準は、認可保育所並みの水準となっているが、認可保育所等の実施事業所が不足している地域においては、制度の導入推進を図るためにも職員配置や設備基準を満たすための財政的措置を含む支援策を講じること。

一、自治体によって一人当たりの利用時間の上限を増やせるようにすること
 試行的事業では、補助基準上の一人当たり利用時間の上限は10時間としているが、それぞれの自治体における乳幼児数や地理的特性によって、利用時間のニーズにバラつきが生じることが想定される。こうした中、全国の市町村で実施する給付制度とすることを前提としながら、自治体によって地域差が生じることについてどのように考えるのか、といった論点も含め、利用時間の在り方について検討すること。

一、障害児や医療的ケア児を受け入れられるようにすること
 障害児や医療的ケア児とその家族を支援する観点や保護者の事情により通園ができない乳幼児についても、家庭とは異なる経験や家族以外と関わる機会を創出する観点から、こども誰でも通園制度においても障害児や医療的ケア児の受け入れを認めるとともに必要な財政的措置を講じること。

一、重層的な見守り機能が発揮されるような制度設計とすること
 こども誰でも通園制度を地域資源の一つとして整備し、こども誰でも通園制度と合わせて地域に多様な子育て支援サービスを整え、重層的な見守り機能が発揮されるような制度設計とすること。

以上、地方自治法第99条に基づき意見書を提出する。


  令和6年7月10日


長 崎 県 議 会


衆議院議長  額賀 福志郎 様
参議院議長  尾辻 秀久 様
内閣総理大臣  岸田 文雄 様
内閣府特命担当大臣  加藤 鮎子 様
(こども政策・少子化対策)
財務大臣  鈴木 俊一  様
内閣官房長官  林 芳正  様



聴覚補助機器等の積極的な活用への支援を求める意見書

 今日、社会の高齢化に比例して、難聴の方も年々増加している。難聴は認知症の危険因子の一つと言われており、また難聴になると、人や社会とのコミュニケーションを避けがちになり、その後社会的に孤立する可能性も懸念される。
 この難聴対策として補聴器が知られているが、一般的に「補聴器」と呼ばれているものは、収集した音を増幅して外耳道に送る「気導補聴器」である。一方で様々な原因で外耳道が閉鎖している方には、骨導聴力を活用する「骨導補聴器」が用いられてきた。
 近年、これらの2種類の補聴器に加えて、耳の軟骨を振動させて音を伝える「軟骨伝導」等の新しい技術を用いたイヤホンが開発された。この聴覚補助機器は、従来の気導・骨導補聴器では十分な補聴効果が得られない方や、装用そのものが難しい方に対しての新たな選択肢となった。
 この様に、さまざまな難聴者に適用出来る聴覚補助機器等の選択肢が整った今、国におかれては、我が国の更なる高齢化の進展を踏まえて、認知症の予防と共に、高齢者の積極的な社会参画を実現するために、以下の通り聴覚補助機器等の積極的な活用を促進する取り組みを強く求める。



一、さまざまな難聴者に適用出来る聴覚補助機器等の積極的な装用を促すため、耳が聞こえにくい高齢者や難聴者に対する聴覚補助機器等の購入支援制度を創設すること。

一、耳が聞こえにくい高齢者や難聴者と円滑にコミュニケーションを取れる社会の構築を目指し、行政等の公的窓口などに合理的配慮の一環として聴覚補助機器等の配備を推進すること。

一、地域の社会福祉協議会や福祉施設との連携のもと、聴覚補助機器等を必要とする人々への情報提供の機会や場の創設等、活用促進につながる社会環境を整えること。

以上、地方自治法第99条に基づき意見書を提出する。


  令和6年7月10日


長 崎 県 議 会


衆議院議長  額賀 福志郎 様
参議院議長  尾辻 秀久 様
内閣総理大臣  岸田 文雄 様
厚生労働大臣  武見 敬三  様
内閣官房長官  林 芳 正  様



九州新幹線西九州ルート整備促進に関する決議

 九州新幹線西九州ルートは、昭和48年、整備計画路線として決定され、約半世紀にわたり、多くの方々の熱意と強い信念をもって事業を推進してきたものであり、本県議会としても、県政の最重要課題と位置づけ、その実現に向けて取り組んできた。

 新鳥栖~武雄温泉間の整備の在り方については、与党PT西九州ルート検討委員会が令和元年に「フル規格により整備することが適当」と判断されて以降、これまで幾度となく議論が交わされているものの、実質的な進展は見られず、未だ整備の目途が立っていない。

 全国の整備計画路線のうち未整備区間は、九州新幹線西九州ルート(新鳥栖~武雄温泉間)及び北陸新幹線(敦賀~新大阪間)の2区間のみであり、近年、東九州新幹線や四国新幹線において整備計画路線への格上げに向けた気運が高まる中、現在の膠着した状態に強い危機感を抱いているところである。

 人口減少が喫緊の課題である本県としては、全国の新幹線ネットワークにつながり、関西直通運行を実現し、インバウンドを含む交流人口を拡大させる必要がある。

 また、整備にあたっては、時間短縮など新幹線効果を最大限発揮させることが重要であり、利用者の利便性や鉄道の持続可能性の観点からも、与党PT西九州ルート検討委員会やJR九州が最良とされている、新鳥栖を起点としてフル規格で佐賀駅を通るルートが最も望ましいと考える。

 今後の議論を進展させるために、フリーゲージトレイン導入断念の経緯を踏まえた対応を政府・与党へ働きかけていくとともに、長崎、佐賀両県だけではなく関係者を含めた協議を実現し、ルートや地方負担、在来線などの諸課題について1日でも早く解決していかなければならない。

 本県議会としては、県民及び関係機関のなお一層のご理解とご支援のもと、県民の悲願である全線フル規格による整備の早期実現に向けて、諸課題の解決など全力で取り組んでいくことを決意するものである。

以上、決議する。


  令和6年7月10日


長 崎 県 議 会