令和4年11月定例会

意見書・決議


離島・半島地域の振興対策に関する意見書

 離島・半島地域は、豊かな自然と独自の歴史・文化を有し、自然環境の保全や食料の安定的な供給など国家的・国民的役割を担っており、県民のみならず国民共通の財産である。
 本県の離島・半島地域では、これまで県、関係市町においても様々な振興施策を実施し、着実な振興が推進されてきた。
 しかし、離島・半島地域を取り巻く環境は依然として厳しく、人口減少・少子高齢化の進行、航路・航空路の維持、医療や福祉などの生活インフラ整備の遅れなどの課題を有している。
 平成29年度に有人国境離島法が施行されて以降、特定有人国境離島地域では、新たな関連施策の積極的な推進により、法施行前の水準と比べて人口の社会減が抑制され、一部市町では社会増を達成する年が出てきているものの、人口減少や地域の衰退といった構造的な課題の解決には至っていないところである。人口の社会増減の均衡を図るためには、これまで以上に市町や関係団体との連携を図りながら、振興施策に取り組む必要がある。
 また、令和4年11月に成立した改正離島振興法には、遠隔医療、ジェットフォイル等の船舶に対する設備投資、高度情報通信ネットワークの充実、小規模離島の日常生活に必要な環境の維持、離島留学や遠隔教育等の充実など、離島に対する各種配慮規定の充実が図られており、離島市町の人口減少の抑制と定住促進に向け、改正法を最大限活用する必要がある。
 さらに、半島地域においても住民が住み続け安定した暮らしを送るため、半島振興計画などに基づき、地域が有する豊かな地域資源を活かしつつ、地域の創意工夫を凝らした取組への支援の充実などが必要である。
 よって、県におかれては、下記の事項について、積極的かつ真摯に取り組まれるよう、強く要望する。

  1. 離島・半島地域振興対策について
    (1)改正離島振興法における、ジェットフォイル等の船舶の設備投資、高度情報通信ネットワークの充実、スマート農林水産業の推進、小規模離島の日常生活に必要な環境の維持、教育の充実などの各種配慮規定を踏まえ、国に対し補助制度の創設・拡充を要望するとともに、市町や民間団体ともしっかりと連携を図りながら、離島地域の更なる振興に力を注ぐこと。
    (2)改正離島振興法において、都道府県による離島市町村への支援の努力義務が新設されたことを踏まえ、これまで以上に離島市町への支援に努めるとともに、実効性のある離島振興計画を策定すること。
    (3)後継者不在の企業の事業承継については、国の制度を積極的に活用し、関係機関と連携のうえ、県内の企業や経営者が置かれた状況に応じた支援に努めること。
    (4)地域産業雇用創出チャレンジ支援事業については、さらなる活用に向けて効果的な周知に努めること。
    (5)県内料理人と生産者による「食」の魅力発信のための長崎UMAのウェブサイトは、SNSも含め丁寧に発信するなど、より多くの人に閲覧されるよう努めること。
    (6)引き続き市町とも連携して情報発信を行い、離島・半島地域への誘客へ取り組むこと。
  2. 有人国境離島法対策について
    (1)有人国境離島地域の人口の社会増減の要因について、分析と検証をしっかりと行うとともに、国境離島地域5市2町との連携を深めながら、雇用の場の創出をはじめとする各種施策を着実に進めること。
    (2)航路・航空路の運賃低廉化に関しては、準住民の適用範囲の拡大に加え、交流人口の拡大を図るため、島民以外にも割引がなされるよう必要な支援制度の充実等を引き続き国へ要望すること。
    (3)離島漁村支援交付金について、県内外の事例も参考とし、計画した雇用人数を確保するための取組を行うこと。
  3. 離島地域航路・航空路対策について
    (1)離島地域航路・航空路は、新型コロナウイルス感染症の影響で輸送人員及び運送収入が減少しており、また、事業者は今後も厳しい経営状況が見込まれるため、これまで以上に事業者及び関係市町と積極的に連携し、離島地域航路・航空路の維持に向けた支援・取組を行うこと。
  4. 関係人口拡大対策について
    (1)離島・半島地域でのワーケーション受入を積極的に推進するとともに、県外の人とのオンラインコミュニティなどを通じた移住者の裾野の拡大に努めること。
    (2)高校生の離島留学推進事業について、コーディネーターの配置の強化を図るため、部局横断的な取組の検討を行うとともに、里親の住宅改修費用等を含めた留学生の受け皿の体制整備に努めること。
    (3)朝の連続テレビ小説など影響力が大きい作品を契機とした旅行需要を一過性のものに終わらせず、その後の観光客の増加やリピーターの確保につながるような地域の魅力を発信する取組を行うこと。

以上、意見書を提出する。


  令和5年2月20日


長 崎 県 議 会

(提出先)

長崎県知事  大石 賢吾  様



IR対策、新幹線対策及び観光振興対策・国際戦略に関する意見書

 九州・長崎特定複合観光施設(IR)については、経済界や行政、議会が一体となって誘致活動を展開し、昨年4月に国へ区域認定の申請を行い、現在、その審査がなされているところである。
 また、長年の悲願であった九州新幹線西九州ルートは、昨年9月23日に武雄温泉~長崎間が西九州新幹線として開業し、県内に新たな賑わいを創出している。
 一方、新鳥栖~武雄温泉間は、関係者で協議が進められているが、依然、整備方式が決まっていない。西九州地域の一体的発展のためには、全線フル規格により、新大阪まで直通運行し、全国の新幹線ネットワークに接続することが必要不可欠である。
 さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大により甚大な影響を受けた観光関連産業の復活に向けて、旅行に対する価値観の変化や新たな旅行需要への対応に取り組むなど、「観光立県長崎」の回復とさらなる発展のための対策を早急に進めなければならない。
 また、インバウンドの再開、外国人材の受入確保等に向けた国際戦略にも早急に取り組む必要がある。
 よって、県におかれては、下記の事項について、積極的かつ真摯に取り組まれるよう強く要望する。

  1. IR対策について
    (1)九州・長崎IRに対する幅広い県民の理解と協力が得られるよう努めるとともに、国や関係団体等と連携を図りながら、ギャンブル依存症対策や治安維持など懸念事項の払拭に向けた十分な対策を講じること。
    (2)IRの実現を見据え、必要な公共交通や道路、港湾等の整備を促進するとともに、長崎空港の施設整備や機能拡充を図ること。
    (3)昨今の世界情勢を背景とした燃油価格や資機材の高騰、金利上昇などの社会経済情勢の変化、並びに、アフターコロナを見据えた区域整備に向けて、国やIR事業者等と十分な協議を行い、柔軟な対応を図ること。
  2. 新幹線対策について
    (1)一刻も早く、武雄温泉駅での対面乗換方式を解消し、新鳥栖~武雄温泉間のフル規格による整備を実現すること。
    (2)北陸新幹線との一体的な財源確保や地方負担、並行在来線等の諸課題の解決に向けて、政府・与党、佐賀県、JR九州など関係先への働きかけを強化すること。
    (3)新幹線の開業による効果を最大限に高め、その効果を県内各地に波及拡大させる取組を市町等とともに積極的に押し進めること。
  3. 観光振興対策・国際戦略について
    (1)新幹線の開業等をはじめとした大型プロジェクトの効果も活用しながら、コロナ禍を経て変化する新たな旅行需要への対応など、本県の実情に合わせた対策に取り組むこと。
    (2)県内や近隣県からの誘客に引き続き取り組むとともに、本県観光の強みであり需要の高い教育旅行の誘致に取り組むこと。
    (3)国内外の観光客を惹きつける観光コンテンツの造成・充実のほか、ユニバーサルツーリズムの推進など、市町や民間事業者と連携して受入態勢の強化を促進すること。
    (4)インバウンドの早期需要回復に向けて、本県の観光地としての認知度向上を図るとともに、多様な魅力や安全・安心への取組に関する情報の発信を充実強化すること。
    (5)国際友好交流、県産品輸出、外国人材受入等を促進するための方策について、戦略的かつ計画的に取り組むこと。
    (6)新型コロナウイルスの感染状況を見極めながら、国際クルーズの需要回復及び国際定期航空路線の早期の運航再開に向けた取組を実施すること。

以上、意見書を提出する。


  令和5年2月20日


長 崎 県 議 会

(提出先)

長崎県知事  大石 賢吾  様



ながさき新産業創造に関する意見書

 長崎県の総人口は、1960年の176万人をピークに、現在では128万人まで減少し、このままの状態が続けば、2060年には、78万人となり、生産年齢人口(15~64歳)は現在の半数程度になると推計されている。
 若者の県外流出などによる人口の減少は、県内需要の減少による経済規模の縮小、労働力不足、限界集落の増加など、県の活力の低下を招くものである。
 これに加え、国内で初めて新型コロナウイルスによる感染が確認されてから既に3年が経過したが、今なお収束の目処が立たない状況にあり、その影響により本県の経済・雇用情勢は厳しい状況が続いている。
 こうした中、県におかれては、経済構造の転換と地域経済の好循環を実現するため、各種施策を講じてきたところであるが、人口減少、少子化に歯止めをかけるまでには至っていない。
 このため、本県経済の早急な回復に向けたアフターコロナ対策や本県への移住・定住の促進、企業誘致等による雇用創出など、これまで行ってきた施策を加速させることに加え、デジタル化の進展や脱炭素に向けた社会の変化を踏まえ、デジタルの力を活用した地域課題の解決や新たな産業の創造が重要であり、それを下支えする人材の育成・確保など早急な取組も求められている。
 よって、県におかれては、下記の事項について、積極的かつ真摯に取り組まれるよう、強く要望する。

  1. アフターコロナ対策について
     今後のコロナ関係融資返済の本格化を見据え、県内中小事業者等の資金繰り等への支援を適切に行うこと。また、燃油や資材価格の状況等を踏まえた農林漁業者の安定的な経営継続に資する対策に取り組むこと。さらに、消費者行動の変化に応じた観光・物産等の効果的な情報発信に努めること。
  2. 人口減少・少子化・人材育成対策について
     人口減少・少子化が進む中、各分野の将来を担う人材の確保に向けて、県内企業における働きやすさなどの魅力向上や採用力向上に対する支援、農林水産業における新規就業の取組強化や経営規模拡大の支援強化、市町との更なる連携による移住の促進に加え、長崎県の総体的なイメージ向上につながるよう、戦略的な情報発信に取り組むこと。
  3. 新産業・再生可能エネルギー振興対策について
    (1)新たな基幹産業の創出を目指し、国の「グリーン成長戦略」等も踏まえ、今後成長が期待される半導体や航空機等の成長分野におけるサプライチェーンの充実・強化に向け、ビジネスマッチングをはじめとした販路開拓、人材育成・確保、新規参入の支援を強化すること。
    (2)洋上風力関連産業は、本県の長年の基幹産業である造船業で培った技術力や人材が活用できる分野として期待されており、促進区域の指定を受けている五島市沖、西海市江島沖をはじめ、今後、国内各地で市場の拡大が見込まれることから、県内企業の取引拡大につながるよう支援を強化すること。
    (3)半導体分野は、世界的に投資が活発化しており、九州内においても投資増強の動きが加速している状況にあることから、こうした規模拡大の動きを県内半導体関連産業の更なる集積に結びつけるため、必要となる設備投資や水源確保のための予算の充実に努めること。
    (4)脱炭素化社会の実現に向けては、国の動きを踏まえ、本県の実情に即した取組を盛り込んだ実行計画の見直しを行うなど、市町や民間団体と連携して推進すること。
  4. DX・デジタル化対策について
    (1)県内の各産業分野におけるデジタル技術の活用による生産性の向上や付加価値創出の取組をさらに促進するとともに、市町はじめ関係機関と連携しながら国のデジタル田園都市国家構想を踏まえた総合的な施策の展開を図ること。
    (2)各産業分野におけるデジタル化やDX推進の重要な鍵となるデジタル人材について、教育機関や県内企業と連携した人材育成を推進するとともに、育成されたデジタル人材の県内産業における活用が進むよう、受け皿となる環境の整備を図ること。
    (3)本県の基幹産業である農業・水産業において、地域の実情に応じたスマート農業、スマート水産業により、持続可能な農業・水産業の実現を図ること。

以上、意見書を提出する。


  令和5年2月20日


長 崎 県 議 会

(提出先)

長崎県知事  大石 賢吾  様



緊急事態条項の新設を求める意見書

 新型コロナウィルス感染症は、長期に渡って全国各地で拡大し大きな被害を及ぼしてきた。この間、全国の9割を超える中小零細企業の経営に深刻な影響が発生し、日本経済に大きな打撃を与えている。さらに医療従事者や病床の不足が解決できず、医療崩壊の危機を招くという想定されなかった事態が発生した。
 また、「首都直下地震」や「南海トラフ巨大地震」の発生が、今後30年以内に高い確率で予想されている。東日本大震災の際には、災害対策基本法に規定されている「災害緊急事態」が布告されず、緊急政令が出されなかったため、被災地ではガソリン等の不足や震災ガレキ撤去の遅れが生じ、関連死の増加にも繋がった。加えて、被災地方自治体の機能停止も問題となった。
 また、北朝鮮のミサイル発射が相次ぐなど我が国周辺に国際的な緊張が増している状況においては、外国からの予期せぬ攻撃などの安全保障に関わる緊急事態に対して国民の安全を守るために、避難・救援等に万全の態勢を構築していくことは、国を挙げて不断に努めるべき施策である。
 しかしながら、今後、どれほど重大な緊急事態が発生しても、現在の法体系では、平時の延長線上での国家運営を行わざるを得ない状態にあり、十全な対応ができない恐れがある。
 緊急時において、国家の責務と権限を明確にし、国民の生命と財産を守るための最大機能を発揮させるために、法令の緊急事態規定に関する多岐にわたる論点を整理し、国民に分かりやすく提示して理解を得たうえで、緊急事態条項を新たに設けることが必要である。
 よって、国におかれては、緊急事態条項を新設することに取り組まれるよう、強く要望する。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


  令和5年3月17日


長 崎 県 議 会

(提出先)

衆議院議長   細田 博之  様
参議院議長   尾辻 秀久  様
内閣総理大臣   岸田 文雄  様
総務大臣   松本 剛明  様
法務大臣   齋藤  健  様
厚生労働大臣   加藤 勝信  様
国土交通大臣   斉藤 鉄夫  様
防衛大臣   浜田 靖一  様
内閣官房長官   松野 博一  様