令和5年9月定例会

意見書・決議

議案及び採決結果  ● 主な質問・質疑  ● 会期日程  ● 本会議一般質問  ● 予算総括質疑  ●意見書・決議  ● 議員提案条例

医療機関等の看護職員の賃上げを可能とする財政支援に関する意見書

 国では「新しい資本主義」の実現に向け、人への投資と分配を進めるとされている。
 現に、産業界では政府の方針に沿って賃上げが進んできている。しかしながら、医療機関や訪問看護ステーション、介護保険施設等は公定価格(診療報酬、介護報酬等)により運営されており、電気代等のエネルギー関連費用をはじめとする諸物価高騰の直撃を受けてもこれを価格に転嫁することができず、職員の賃金引上げを行いたくてもそのための原資がないという状況である。令和4年度診療報酬改定では「看護職員処遇改善評価料」が新設されたが、一部の医療機関に勤務する看護職員のみを対象としているため、看護職員を見ても、全体の3分の2にあたる約100万人がなお対象外という状況にある。
 先般、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画において「すべての職場における看護師のキャリアアップに伴う処遇改善のあり方について検討する」とされたことを踏まえ、国家公務員医療職俸給表(三)が見直され、本年4月より施行された。これを契機に、民間病院等の看護職員の賃金に波及することが期待されるが、これも医療機関等の経営が成り立ち、安定して原資が確保できることが前提となる。このような状況にあって、すべての看護職員の賃上げを実現するには、国からの医療機関等に向けた更なる財政措置が必要である
 医療・福祉分野の就業者数は、2022年平均の就業者数6,723万人の約14%にあたる908万人であり、そのうち約19%(173.4万人、2020年就業者数)が看護職員である。すべての看護職員の賃上げを実現することは、労働者の所得向上に繋がり、成長と分配の好循環が実現する。
 よって、国におかれては、医療機関等の経営を支え、すべての看護職員の賃上げが可能となるよう、以下の事項について、実現されることを強く要望する。



  1. 物価高騰に苦しむ医療機関、訪問看護事業所、介護保険施設・事業所等の経営を支援し、すべての看護職員の処遇改善が可能となるよう、必要な財政措置を講ずること。
  2. 令和6年度診療報酬改定において「看護職員処遇改善評価料」の対象をすべての看護職員に拡大するとともに、介護報酬、障害福祉サービス報酬改定において同様の措置を講ずること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する


  令和5年12月21日


長 崎 県 議 会

(提出先)

衆議院議長  額 賀 福志郎 様
参議院議長  尾 辻 秀 久 様
内閣総理大臣  岸 田 文 雄 様
財務大臣  鈴 木 俊 一  様
厚生労働大臣  武 見 敬 三  様
内閣官房長官  林   芳 正  様



医療介護分野における物価高騰と賃上げに対応するための
適切かつ恒常的な財源の確保に関する意見書

 今般の食材料費、光熱費等の物価高騰は、賃金の上昇とも相まって広く国民のみならず、医療機関、介護事業所等にも大きな影響を及ぼしている。
 賃金については、2023年春闘では平均賃金上昇率が3.5%と30年振りの高さとなり、令和5年度人事院勧告では約3.3%の給与改善が求められているが、医療・介護分野の賃金は、公定価格である診療報酬等が原資となっているため、長らく低く抑えられ他産業に大きく後れを取っている。
 公定価格により運営する医科歯科医療機関、薬局、介護施設等は、物価高騰や賃金の上昇分を価格に転嫁することができないにもかかわらず、財務省の財政制度等審議会においては、診療報酬本体のマイナス改定、診療所の診療報酬の大幅な引き下げなど、医療費削減に向けた議論がなされている。
 これでは、「少子超高齢社会」に対応できる医療・介護の体制確保が困難となり、地域医療の崩壊へと繋がっていく。
 物価高騰と賃上げ、さらには日進月歩する技術革新への対応には十分な原資が必要であり、唯一の原資である診療報酬及び介護報酬によって、プラス改定の対応を行い、医療・介護分野従事者約900万人の賃金を上げることにより、他産業へのさらなる原動力ともなり、全国津々浦々まで、物価高騰対応や賃金上昇の波を行き渡らせ、我が国全体の賃金上昇と地方の成長の実現が見込める。
 よって、国におかれては、国民の生命と健康を守るため、医療・介護分野における物価高騰・賃金上昇に対する取組を進め、国民に不可欠、かつ日進月歩している医療・介護を持続的に提供するため、次期診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬のトリプル改定を含め、医療・介護・福祉については適切かつ恒常的な財源の確保を強く要望する。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する


  令和5年12月21日


長 崎 県 議 会

(提出先)

衆議院議長  額 賀 福志郎 様
参議院議長  尾 辻 秀 久 様
内閣総理大臣  岸 田 文 雄 様
総務大臣  松 本 剛 明 様
財務大臣  鈴 木 俊 一 様
厚生労働大臣  武 見 敬 三 様
内閣官房長官  林   芳 正  様



医療・介護・障害福祉分野における処遇改善等を求める意見書

 介護事業所や障害福祉サービス等事業所では、人材の確保・定着が難しく、運営に支障をきたす事態が深刻になっている。また募集しても応募がなく、公的に定められた人員配置基準は何とか満たしたとしても、現場で必要としている職員数に満たない欠員状態が続く事業所が多いのが現状である。
 厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2022年6月)でも、福祉施設等の介護職員の超過勤務手当などを含む平均賃金は月額25万7,500円で、全産業平均の34万100円と比べて、8万円を超える格差がある。
 今日、最低賃金の引き上げや大手企業を中心にベースアップ (基本給の引き上げ)などによって賃上げが進む中で、介護職員などへの対策は打たれておらず、賃金格差がさらに拡大している。
 また、8月に出された人事院勧告は民間企業の賃上げをうけてプラス改定となり、私立保育園等の公定価格や児童養護施設の措置などは4月にさかのぼって増額される一方で、介護報酬や障害福祉サービス等報酬には反映されない状況である。
 介護や障害福祉を支える職員は、専門職として位置づけられているにもかかわらず、低賃金、人手不足による過酷な労働を強いられることが続けば、職員の離職に歯止めがかからない状態に陥り、施設の運営も困難となり、必要な福祉サービスの提供ができなくなる恐れがある。
 よって、国におかれては、以下の通り、介護職員等の賃金水準を確保するための制度改革と同時に、職員の人権を尊重し生活を保障する取り組みを迅速に推進することを強く求める。



  1. 医療・介護・障害福祉分野の賃上げについて、経済対策での処遇改善支援事業を早期に実行すること。その上で、2024年度の同時改定においては物価高騰・賃金上昇等を踏まえ処遇改善等を行うこと。
  2. 新型コロナウイルス感染症による緊急時のサービス提供に必要な介護人材確保のため、手当の支給など、地域医療介護総合確保基金における「新型コロナウイルス感染症流行下における介護サービス事業所等のサービス提供体制確保事業」の活用を推進すること。
  3. 介護や障害福祉を支える職員は、専門職として位置づけられており、高齢化社会を支える必要不可欠な人材であることから、公営住宅の空き住戸の「地域対応活用」を促進すること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


  令和5年12月21日


長 崎 県 議 会

(提出先)

衆議院議長  額 賀 福志郎 様
参議院議長  尾 辻 秀 久 様
内閣総理大臣  岸 田 文 雄 様
財務大臣  鈴 木 俊 一  様
厚生労働大臣  武 見 敬 三  様
国土交通大臣  斉 藤 鉄 夫  様
内閣官房長官  林   芳 正  様
 



認知症との共生社会の実現を求める意見書

 認知症の高齢者が2025年には約700万人になると想定されている現実に対して、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症施策を総合的かつ計画的に推進するための、共生社会の実現を推進する認知症基本法が先の国会で成立した。現在、政府において、認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議において、認知症の本人及びその家族をはじめ、認知症に関わる様々な方々から幅広い意見を聴きながら、認知症基本法の施行に先立っての方針を取りまとめている。
 今こそ、認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(=共生社会)の実現をという目的に向かって、認知症施策を国と地方が一体となって進めて行くときである。
 私たちが目指す共生社会とは、誰もが認知症になる可能性がある中で、生活上の困難が生じた場合でも、重症化を予防しつつ持てる力を生かしながら、周囲や地域の理解と協力の下、本人が希望を持って地域の中で尊厳が守られ、自分らしく暮らし続けることができる社会である。
 よって、国におかれては、認知症との共生社会の実現に必要な予算措置も含め、行政の体制を一層強化させ、一刻も早い認知症との共生社会を、各地域で実現することを強く求める。

  1. 認知症基本法の円滑な施行
    本年6月に成立した「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」の施行に向け、立法の趣旨を踏まえ、円滑な施行に向け、施行後に設置する「認知症施策推進本部」をはじめとする準備に万全を期すこと。特に、認知症の本人が、自身が認知症であることを隠すことなく、朗らかに日常を続けられる様に、認知症に対する偏見や差別を解消するため、古い常識の殻を破り、基本的人権に根差した希望のある新しい認知症観の確立のために、省庁横断的かつ総合的な取り組みの推進に総力を挙げること。
  2. 地方自治体への支援の強化
     地方自治体における都道府県認知症施策推進計画・市町村認知症施策推進計画の策定において、今までの延長ではなく、共生社会の実現に向けた統合的かつ連続的な計画の策定を可能にする専門人材の派遣など、適切な支援を行うこと。また、各自治体が主体的に実効性の高い施策を自在に展開するために、自由度の高い事業展開と予算措置のあり方を検討すること。
  3. 地方自治体の組織体制の強化
     地域住民に対する法の理念等の普及啓発、安心・安全な地域づくりの推進等、共生社会の実現を推進する取り組みを、部門間の縦割りをなくして総合的かつ継続的に推進すること。また、各自治体の施策を適切かつ的確に展開するために、認知症の本人が企画から評価まで参画できる体制の整備を検討すること。
  4. 労働環境の整備
     認知症の人の働きたいというニーズを叶える環境整備も重要である。若年性認知症の人、その他の認知症の方々の就労や社会参画を支える体制整備を進めるとともに、働きたい認知症の人の相談体制を充実し、認知症と診断されても、本人の状態に応じて、社会の一員として安心して生活できる事業者も含めた社会環境を整備すること。
  5. 「ご家族」への支援体制の拡充
     独居や高齢者のみ世帯が急増する中で、一つの事業所で相談から訪問介護、通所、ショートステイまで、一人一人の状態の変化に応じて継続的に対応できるオール・イン・ワンの介護保険サービスを24時間365日提供する小規模多機能型居宅介護サービス事業について、見守り体制の整備も含めて拡充すること。
  6. 身寄りのない方にも柔軟に寄り添い支える社会の構築
     身寄りのない方を含め、認知症になったとしても、その状態に応じて、安全に安心して生活が出来る社会環境の構築に向け、一人一人の意思を最大限に尊重し総体的かつ柔軟に寄り添い支える、成年後見制度や身元保証等のあり方について現状の課題を整理し検討を進めること。また、住まいに課題を抱える方々に対する総合的な相談対応、一貫した支援を行う実施体制を整備すること。
  7. 認知症に関する基本事項を繰り返し国民が学べる環境の整備
     すべての国民が正しく認知症に向き合う社会環境を整えるために、認知症発症予防から人生の最終段階まで、認知症の容態に応じ、相談先や、いつ、どこで、どのような医療・介護サービス・地域支援を受けることが出来るのか(認知症ケアパス)、更に認知症の人を支える周囲の人における意思決定支援の基本的考え方や姿勢、方法、驚かせない!急がせない!自尊心を傷つけない!など配慮すべき事柄等(認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン)を、繰り返し国民が学べる環境を整備すること。

以上、決議する。


  令和5年12月21日


長 崎 県 議 会

(提出先)

衆議院議長  額 賀 福志郎 様
参議院議長  尾 辻 秀 久 様
内閣総理大臣  岸 田 文 雄 様
総務大臣  松 本 剛 明  様
財務大臣  鈴 木 俊 一 様
厚生労働大臣  武 見 敬 三 様
内閣官房長官  林   芳 正  様