令和7年6月定例会
意見書・決議
国土強靱化の計画的かつ着実な推進を求める意見書
近年、自然災害は全国的に激甚化・頻発化しており、至る所で多くの人命や財産などに甚大な被害をもたらしている。特に、能登半島においては、地形的特色で周辺からのアクセスが限定された脆弱な道路ネットワークが、地震により寸断されたことで人流や物流が長期間滞り、被災地の復旧が思うように進まない中、同年9月に豪雨災害にも見舞われ、さらなる甚大な被害を受けており、半島地域の自然災害に対する脆さを改めて浮き彫りにした。
また、令和7年1月に埼玉県八潮市で発生した下水道管の破損による道路陥没事故は、インフラの老朽化対策が待ったなしの課題である事を如実に示している。
本県においても、前線に伴う集中豪雨や台風の常襲地帯に位置しており、急峻な山地や崖地が多く、全国で2番目に多い約3万7千箇所もの土砂災害警戒区域を抱えていることから、頻繁に洪水・浸水被害や土砂災害が発生している。また、多くの離島半島を有し、高規格道路のミッシングリンクも存在する本県では、大規模災害の発生時に人流・物流が寸断される危険性が高い。加えて、県が管理する橋の約6割が10年後に建設後50年以上経過するなど、高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化が急速に進行している。
このような状況から県民の生命・財産・暮らしを守るためには、防災インフラの整備や交通ネットワークの強化、交通・上下水道等ライフラインの老朽化対策などを急ぐ必要があることから、令和7年度までの「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」予算を最大限に活用して事業を進めているが、その取組は未だ道半ばであり、資材価格や人件費の急激な高騰の影響による事業進捗の遅れも懸念されている。
今後も継続的かつ安定的に国土強靱化の取組を推進していくためには、予算規模については5か年加速化対策を上回るおおむね20兆円強程度を目途とすることや、今後の資材価格・人件費高騰等の影響については予算編成過程で適切に反映することなどが盛り込まれた「第1次国土強靱化実施中期計画(令和7年6月6日閣議決定)」を早期かつ着実に実行し、必要となる予算を切れ目なく確保していくことが極めて重要である。
ついては、国土強靱化の計画的かつ長期安定的な対策の推進に向け、下記の事項を講じられるよう強く要望する。
記
・「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」終了後も、切れ目なく継続的かつ安定的に取組を推進するため、「第1次国土強靱化実施中期計画」に基づき、その実現に必要な予算・財源を通常予算とは別枠で早期に確保すること。
・資材価格や人件費の高騰等の影響についても、予算編成過程で適切に反映させるとともに、今後の災害の発生状況や事業の進捗状況、経済情勢、財政事情等を総合的に勘案し、必要となる予算額を満額確保すること。
・令和7年度までの時限措置となっている「緊急自然災害防止対策事業債」、「緊急防災・減災事業債」等の地方財政措置を継続すること。
・災害が発生した自治体に対し迅速かつ円滑な支援を行うため、地方整備局や研究機関等において必要な人員と体制の充実・強化を図ること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年7月10日
長 崎 県 議 会
(提出先)
衆議院議長 額賀福志郎 様
参議院議長 関口 昌一 様
内閣総理大臣 石破 茂 様
総務大臣 村上誠一郎 様
財務大臣 加藤 勝信 様
国土交通大臣 中野 洋昌 様
内閣官房長官 林 芳正 様
国土強靱化担当大臣 坂井 学 様
内閣府特命大臣(防災)
地方財政の充実・強化を求める意見書
地方自治体は、こども・子育て政策の強化を含む社会保障関係費が年々増加する中で、地方創生・人口減少対策や地域経済活性化・雇用対策、人づくり、大規模災害に対応するための防災・減災対策、DX・GX化の推進など、様々な政策課題に直面している。
政府においては、「経済財政運営と改革の基本方針 2024」において、地方の一般財源
総額について、2025年度から2027年度までの3年間、2024年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保するとしたところであるが、長期化する原油価格・物価高騰や賃上げに伴う財政需要のさらなる増加が見込まれるなど、地方財政を取り巻く環境はますます厳しくなっており、地方が安定的な住民サービスを維持しつつ、地域経済の回復・拡大に継続的に取り組んでいくためには、更なる地方税財源の増額確保・充実が必要不可欠である。
よって、国におかれては、2026年度の地方財政予算全体の安定確保に向けて、次のとおり適切な措置を講じるよう強く求める。
1. 地方財政計画、地方税のあり方、地方交付税総額など地方に関わる重要政策については、国と地方の協議の場において、地方と十分に協議を行い、その意見を反映すること。
2. 物価高騰や賃上げに伴う財政需要の増加が見込まれるなか、地方創生・人口減少対策をはじめ、こども・子育て政策の強化を含む社会保障関係費の増嵩への対応、地域経済活性化・雇用対策、人づくり、防災・減災対策、DX・GX化の推進など、地方の実情に沿ったきめ細かな行政サービスを十分担えるよう、今後も安定的な財政運営に必要な一般財源総額の増額確保・充実を図ること。
3. 地方交付税については、本来の役割である財源調整機能と財源保障機能が適切に発揮されるよう総額を確保するとともに、財源不足への補填については、臨時財政対策債の発行等によることなく、法定率の引上げを含めた抜本的な改革等による対応を検討すること。
4. 東京一極集中が続き行政サービスの地域間格差が顕在化する中、拡大しつつある地方団体の税収の偏在や財政力格差の状況について原因・課題の分析を進め、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築を図ること。
5. 地方創生を確実に推進するため、地方財政計画における「地方創生推進費(1.0兆円)」、「地域デジタル社会推進費(0.2兆円)」及び「地域社会再生事業費 (0.42兆円)」を維持・確保すること。また、本県は離島・半島など条件不利地域を多く有するとともに、人口減少や高齢化が全国よりも進展している状況であり、その算定については配慮すること。
6. 新しい地方経済・生活環境創生交付金をはじめとする地方創生関連予算については、「若者・女性にも選ばれる地方」の実現に向けて、移住促進や関係人口創出、高付加価値型の産業・事業づくりなどの取組を推進するため、継続的かつ安定的な財源を確保するとともに、地方の実情に応じた柔軟な活用ができる仕組みを構築すること。
7. 全国的な賃上げの動きを踏まえ、会計年度任用職員を含む職員の給与関係経費については、地方自治体の財政運営に支障を来すことのないよう、必要な財政需要を地方財政計画に適切に計上すること。
8. 地方自治体は、国を上回る行財政改革や歳出抑制の努力を行う中で基金の確保など財政運営の年度間調整に取り組んでいることから、地方の基金残高の増加を理由に地方財政計画の圧縮や、地方交付税の削減を行わないこと。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年7月10日
長 崎 県 議 会
(提出先)
衆議院議長 額賀福志郎 様
参議院議長 関口 昌一 様
内閣総理大臣 石破 茂 様
総務大臣 村上誠一郎 様
財務大臣 加藤 勝信 様
内閣官房長官 林 芳正 様