令和3年2月定例会

意見書・決議

定例会を終わって  ●主な質問・質疑  ●会期日程  ●本会議一般質問  ●予算総括質疑   ●意見書・決議  ●議員提案条例

離島・半島地域の振興対策に関する意見書

 離島・半島地域は、豊かな自然や独自の歴史・文化を有し、自然環境の保全や食料の安定的な供給などで我が国にとって重要な役割を担っており、県民のみならず国民共通の財産である。
 本県の離島・半島地域では、これまで県、関係市町においても様々な振興施策を実施し、着実な振興が推進されてきた。
 しかし、離島・半島地域を取り巻く環境は依然として厳しく、人口減少・少子高齢化の進行、航路・航空路の維持、医療や福祉などの生活インフラ整備の遅れなどの課題を有している。
 そのような中、特定有人国境離島地域においては有人国境離島法に基づく施策を有効に活用し、県市町が一体となって、雇用機会拡充や滞在型観光の促進などに取り組み、これまでに人口の社会減が大きく改善するなどの効果が現れているが、これを継続し、人口減少に歯止めをかけていくことが必要である。
 また、半島地域においても住民が住み続け安定した暮らしを送るため、半島振興計画などに基づき、地域が有する豊かな地域資源を活かしつつ、地域の創意工夫を凝らした取組への支援の充実などが必要である。
 さらに、昨年から続く新型コロナウイルス感染拡大の影響で、離島・半島地域においても、観光関連産業を中心に深刻な打撃を受けているため、各地域の状況を十分に把握し、国・関係市町などと連携した対策が必要である。
 よって、県におかれては、下記の事項について、積極的かつ真摯に取り組まれるよう、強く要望する。
 



  1. 離島・半島地域振興対策について
    (1)農業・水産業を始めとする一次産業におけるIT化は、生産性向上のために重要であり、各事業者への導入支援の取組を推進すること。
    (2)本県水産物の輸出拡大及びブランド化に向け、産地における流通・加工機能の強化に取り組むこと。
    (3)本県を代表する農業地帯である島原半島では、農業生産基盤の整備などによって人口減少・少子化の改善に繋がる事例もみられることから、今後も農業関係予算の確保・充実に努めること。
    (4)営農条件が厳しい県北地区の半島において、農業の担い手確保や所得向上を図るため、地域に合った農地の基盤整備や水田の畑地化などを推進すること。
    (5)半島振興法に基づく国税の割増償却制度の活用を促進させるなど、半島地域の振興施策に積極的に取り組むこと。
    (6)新型コロナウイルス感染拡大防止のため、以下の対策及び支援を強化すること。
     ア 離島及び本土医療機関の患者受入体制の整備及び関係自治体との連携強化
     イ 離島での患者発生時における救急搬送体制の強化
     ウ 港湾での検疫体制を始めとする水際対策の強化
     エ 帰省シーズンなどの広域的な移動に対する感染拡大防止対策の強化
     オ 離島・半島航路など、地域の公共交通の確保・維持に向けた取組の強化
     カ 金融機関に対する円滑な県制度融資の実行要請

  2. 有人国境離島法対策について
    (1)特定有人国境離島地域社会維持推進交付金については、国へ予算規模の維持を求めるとともに、地元の要望や意見に沿った提案を行うなど、交付金対象事業の拡充を図ること。
    (2)社会減の改善に特に重要な雇用機会拡充事業については、今後も多くの雇用の場が創出されるよう、課題の分析や優良事例の他市町への横展開などに努めること。
    (3)本県漁業者の操業が、外国貨物船の航行や漂泊の影響を受け、制約されている事例があるため、これまで以上に漁業者の安全と操業の安定に向け、国への働きかけに努めること。

  3. 離島地域航路・航空路対策について
    (1)離島地域航路・航空路は、新型コロナウイルス感染症の影響で輸送人員及び運送収入が減少しており、事業者は今後も厳しい経営状況が見込まれるため、これまで以上に事業者及び関係市町と積極的に連携し、離島地域航路・航空路の維持に向けた支援・取組を行うこと。

 
 以上、意見書を提出する。 


  令和3年2月24日


長 崎 県 議 会

(提出先)

長崎県知事       中村 法道 様




観光振興及び交通対策に関する意見書

 特定複合観光施設(IR)については、民間、行政、議会が一体となって「オール九州」による誘致活動を展開してきた。こうした中、去る12月18日に、政府において「特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針」が策定され、区域整備計画の認定申請期間が本年10月から来年4月までと示されたところである。よって、本年は、IR事業者を選定し、区域整備計画案を作成していくというまさに正念場である。
 また、長年の悲願であった九州新幹線西九州ルートは、いよいよ令和4年秋に武雄温泉~長崎間が開業する。西九州地域の発展のためには、全線フル規格で整備して新大阪への直通運行を実現し、全国の新幹線ネットワークに接続することが必要不可欠であるが、新鳥栖~武雄温泉間の整備方式が決まっておらず、このままでは武雄温泉駅での対面乗換が長期化、さらには固定化するおそれがある。
 さらに、近年好調に推移してきた観光関連産業は、新型コロナウイルス感染症により甚大な影響を受けており、コロナ禍の中、旅行形態も変化してきている。当面は、厳しい状況にある観光関連産業を下支えする取組を継続することが不可欠であるが、併せて、コロナ収束後を見据え、「観光立県長崎」の回復とさらなる発展のための対策も着実に進めなければならない。
 加えて、インバウンドをはじめとする国際関係施策についても同様に、コロナ収束後を見据えて戦略的に取り組むことが重要であり、また、その交通対策としても、本県への人の往来の要となる長崎空港のさらなる利活用を図ることが必要である。
 よって、県におかれては、下記の事項について、積極的かつ真摯に取り組まれるよう強く要望する。
 



  1. IR対策について
    (1)上限3箇所とされる区域認定に向け、県内及び九州内の連携を強化するとともに、県庁全部局を挙げて諸準備に取り組み、公平性、公正性及び透明性を確保しながらIR事業者を選定した上で、区域認定を獲得することができる区域整備計画を作成すること。
    (2)交通アクセスの強化は区域認定の獲得に向けた重要な要素であることから、公共交通や道路、海路等の整備を促進するとともに、長崎空港の施設整備や機能拡充を図ること。
    (3)九州・長崎IRに対する県民のさらなる理解促進に取り組むとともに、ギャンブル依存症や治安維持などの懸念される事項について、国や関係団体等と連携し十分な対策を講じること。

  2. 新幹線対策について
    (1)武雄温泉駅での対面乗換を早期に解消するため、一刻も早く新鳥栖~武雄温泉間のフル規格による整備を実現すること。。
    (2)北陸新幹線との一体的な財源確保や、地方負担、並行在来線等の諸課題の解決に向けて、関係者への働きかけを強化すること。
    (3)令和4年秋の武雄温泉~長崎間の開業に向けて、新幹線駅周辺のまちづくりを促進するとともに、その開業効果を高め、県内各地に波及拡大させる取組を市町等とともに進めること。

  3. 観光振興対策について
    (1)コロナ禍を経た旅行ニーズの変化への対応や、国の事業との連携など、これまでのコロナ禍における取組の経験を踏まえて、観光振興施策を推進すること。
    (2)コロナ対策において明らかとなった県内や近隣県からの観光需要を引き続き掘り起こし、取り込むとともに、本県観光の強みであり需要の高い教育旅行の誘致についても継続的に取り組むこと。
    (3)国内外の観光客を惹きつける観光コンテンツの造成・充実のほか、ユニバーサルツーリズムの推進や観光に携わる人材の育成などの受入環境の整備について、国の事業も活用しながら市町や民間事業者とともに進めること。

  4. 国際戦略について
    (1)国際友好交流、県産品輸出、外国人材受入等を促進するため、コロナ収束後を見据え、戦略的かつ計画的に取り組むこと。
    (2)コロナ収束後のインバウンドの受入拡大に向けて、本県の多様な魅力や安全・安心への取組に関する情報の発信を強化すること。

  5. 交通対策について
    (1)長崎空港の24時間化の実現に向け、リモート化の整備を推進し、交通アクセスの確保等について関係者との協議を進めること。
    (2)国際定期航空路線の再開に向けて、航空会社と連携を図り利用促進対策を実施するとともに、新規国際定期航空路線・国際チャーター便の誘致に向けて、戦略的な取組を推進すること。

 
 以上、意見書を提出する。 


  令和3年2月24日


長 崎 県 議 会

(提出先)

長崎県知事       中村 法道 様



人口減少・雇用対策に関する意見書

 総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によると、令和元年において、国全体の日本人人口は対前年比で△50万5,046人であり、調査開始以降では最大の減少幅とされている。一方、本県の日本人人口は対前年比で△1万5,197人であり、そのうち社会増減数は△7,130人となっており、いずれも全国水準を大きく上回る状況にある。
 本県では、平成27年に、県民をはじめとして県内の様々な関係者と共に、人口減少問題を克服し取り組むための指針として「長崎県まち・ひと・しごと創生総合戦略」(以下「第1期総合戦略」という。)を策定し様々な施策を講じてきた。その結果、雇用創出や移住促進については効果が上がったものの、大学生の県内就職率の悪化や基幹産業の低迷等による従業員数の減少等も重なり、全体としての人口減少に改善の兆しが見られない状況が続いている。
 こうした中、令和2年に策定された「第2期長崎県まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、第1期総合戦略で一定の成果が得られた分野については現在の取組を継続し、施策の充実・深化や量的確保を行い、十分な成果が得られていない分野については、その要因分析を深め、足らざる取組の追加・拡充に努めることを基本とし、各種施策に取り組まれているところであり、これまで以上の具体的な成果が求められる。
 また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、本県経済は大幅に下押しされ、解雇等の増加や求人が低調に推移するなど雇用環境にも大きな影響を及ぼしている一方、感染症の拡大に伴いテレワーク等の働き方が急速に普及し、地方への関心が一層高まるなど、国民の意識・行動に大きな変化が生じており、これらの環境変化に対応する的確な施策を講じることも求められている。
 よって、県におかれては、下記の事項について、積極的かつ真摯に取り組まれるよう、強く要望する。



  1. 社会減対策について
    (1)海洋エネルギー関連産業、航空機関連産業、AI・IoT・ロボット関連産業の振興については、新たな基幹産業の創出に向けて引き続き推進し、良質な雇用の場の創出、ひいては経済の好循環を実現できるよう努めること。特に、海洋エネルギー関連産業については、国の「グリーン成長戦略」において、洋上風力をはじめとした再生可能エネルギーについて最大限の導入を図ると明記されていることを踏まえ、今後の脱炭素社会の実現に向けた動向等をしっかりと注視し、取り組むこと。
    (2)新型コロナウイルス感染症の拡大により、テレワーク等の場所に捉われない働き方が普及するなど、新たな地方回帰の流れが生まれていることを踏まえ、地域間競争を勝ち抜き、首都圏等の人や企業を本県に呼び込むため、市町及び関係機関等と目標を共有するなど緊密に連携するとともに、通信環境の整備や就職・転職支援等の環境整備及び態勢整備を積極的に図ること。
    (3)集落維持における買物弱者対策については、新型コロナウイルス感染症の拡大により、移動販売等に係る取組が増加している状況を踏まえ、民間事業者やNPO等との連携による移動サービス等への支援を行うこと。
    (4)県内市町における移住支援の取組については、支援制度をはじめとして相談窓口の環境や啓発パンフレットの内容等に様々な工夫が施されるなど、相談件数や移住件数も年々増加し着実に成果を挙げている事例がある。このような優良事例については、県が率先して各市町と情報共有等を行い、県下一体で移住支援施策のさらなる充実を図ること。
    (5)事業承継については、長崎県事業承継ネットワークによる支援対象事業者の掘り起こしを推進するとともに、他の関係機関等とも連携したうえで、優遇税制等の関係施策について、着実な周知を図ること。
    (6)藻場の再生にあたっては、ハード面及びソフト面での取組を着実に進めるとともに、離島漁業再生支援事業等の各種施策を活用し、地元漁民による取組についても、積極的な支援を図ること。
    (7)中山間地域等直接支払事業については、担い手の高齢化等の状況を踏まえると、今後の農地保全活動の継続が困難となることが懸念されるため、市町等との連携を強化し適切な対策を図ること。また、支援の実施にあたっては、県職員が積極的に地域へ入り込むとともに、関係団体等とも十分に連携したうえで、それぞれの実情に応じた措置を図ること。
    (8)本県の人口減少に歯止めをかけるため、統計データの利活用による要因分析を通じて、ターゲットとニーズに合わせた実効性の高い施策を講じるとともに、各種施策にかかるターゲットに届くように効果的な周知活動に努めること。

  2. 人材確保対策について
    (1)新型コロナウイルス感染症の影響による雇用環境等の悪化に対しては、国の制度をはじめとして様々な施策を適切に活用するとともに、十分な庁内連携体制を構築し、施策の方向性を見定めたうえで全庁を挙げた対策を講じること。また、今後の新型コロナウイルス感染症の見通しを予見することは極めて困難であるため、県におかれては、本県経済等に与える影響等をしっかりと注視するとともに、必要と認められる場合は、適時適切な支援措置を図ること。
    (2)AIやIoTなどの情報関連産業を本県の成長産業とするにあたり、情報系人材の育成及び確保は極めて重要であることから、近年の長崎大学や長崎県立大学における情報系学部の創設を捉え、大学をはじめとした産学官金連携による取組を一層推進するとともに、資格取得支援やリカレント教育等の充実に係る検討を図ること。
    (3)漁業就業前の技術習得研修に係る研修期間は原則で最長2年間とされているが、本研修期間では十分な技術習得が適わず、就業後の操業に支障をきたすおそれがあるため、研修期間を延長するなど研修制度の充実を図ること。
    (4)看護職員の修学資金貸与制度については、県内就職率の向上に効果的な施策であるが、より多くの学生を県内就業に誘導できる実効性の高い制度になるよう充実を図ること。
    (5)介護分野に係る外国人材の受入れを求める事業所に対しては、ベトナムのドンア大学との「介護分野における協力に関する覚書」における連携体制を活用するなど積極的なマッチング支援を図ること。
    (6)本県農業における労力の確保については、農繁期と農閑期の混在に起因する外国人材の周年派遣が課題となっていることから、外国人材の安定的な派遣、ひいては農家の規模拡大につなげるため、株式会社エヌにおいて、JA等との産地間連携による周年派遣の実現を図ること。
    (7)県内企業の魅力発信を目的としたフリーペーパーや保護者向け映像の作成等にあたっては、内容の充実はもちろんのこと、ターゲットに当該情報が届いて初めて期待する効果を得られることから、情報発信の手法についても検討や改善を重ねるよう努めること。

  3. 若者・女性対策について
    (1)本県の社会動態においては、若者や女性の転出超過が特徴として挙げられるため、人口減少に歯止めをかけるためには、重点的かつ効果的な対策を講じる必要がある。中でも、若者や女性の県内定着及びUターンの促進等を図るため、若者や女性に選ばれ、活躍や自己実現等ができる魅力的な働く場の創出に取り組むとともに、職場環境の整備や業務分担の工夫等により女性が働きやすい環境を整えている企業の見える化・情報発信等の推進を図ること。
    (2)キャリア教育及びふるさと教育については、地元企業や地元自治体等との連携を強化し、教員の産業界等に係る知見の一層の深化や生徒と地元企業等が直接触れ合う場を設けるなどして、さらなる充実を図ること。
    (3)長崎県立大学への設置が予定されている情報セキュリティ産学共同研究センター(仮称)においては、学生、県内企業及び県外企業との交流を促進する効果的な仕組みを構築するなど、魅力的な企業の誘致や学生の県内定着等の好循環の創出を図るよう、様々な検討を行うこと。
    (4)1(2)記載の新たな地方回帰の流れを踏まえ、離島半島地域等を含めた企業誘致の推進を図ること。また、今般の医療ビジネスの拡大の流れを捉え、豊富な感染症研究の蓄積を有する長崎大学の優位性を生かし、同大学と連携した新たな分野の企業誘致の推進も図ること。
    (5)本県における高卒者及び大卒者の3年以内の離職率は、全国水準を上回る状況にあるため、特に入社3年以内の若手社員の離職防止を図ること。一方、働き方への意識の変化に伴い離職事由も多様化していることから、離職者の多様なニーズに応じた再就職を応援するなど、離職者の県外流出防止のための支援策の構築を図ること。

 
 以上、意見書を提出する。 


  令和3年2月24日


長 崎 県 議 会

(提出先)

長崎県知事       中村 法道 様