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ホルモン製剤を活用した簡易な牛受精卵採取技術

2018年(平成30年)3月18日

牛の妊娠期間は人とほぼ同じ約285日間でまれに双子も産まれるが、通常生まれる子牛は1頭ずつ。生涯を通して順調に分娩ができたとしても15頭程度が限界だ。そこで良い子牛を数多く生産するための手法として、優秀な母牛から受精卵を複数採取し、他の雌牛に移植する「受精卵移植技術」が普及しており、畜産農家の所得向上や牛の改良にも役立つ技術として活用されている。

しかし、受精卵の採取にはこれまで2つのハードルがあった。1つは、21日間ある牛の発情周期の中で受精卵採取のための処置ができる期間が3日間と短いこと。もう1つは、母牛への注射による薬の投与が9回必要となり、母牛にも世話をする人にも負担が大きいことだ。

県農林技術開発センターでは、母牛の膣内にホルモン製剤を留置する簡易な受精卵採取技術を開発した。ホルモン製剤を用いて牛が体内でホルモンを出す機能を代替えすることで、受精卵採取の処置ができる期間を最大20日に拡大できた。ホルモン製剤の膣内への挿入と抜き取りは簡単で、母牛の痛みもほとんどない。

また、注射のやり方も変更。従来の筋肉注射から皮下注射に変え、薬の効果が低減していくスピードを緩やかにすることで、注射の回数を3~4回に減らすことができた。

今後も母牛と人間の双方の負担軽減ができるこの技術を活用し、県内における受精卵移植技術の普及を進めていきたい。















(畜産研究部門大家畜研究室 主任研究員 山﨑邦隆)