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ビワの寒害防止に向けた剪定時期の研究 4月の「切り返し」効果的

2018年(平成30年)1月21日

初夏を告げる果物であるビワは栽培面積、生産量ともに本県が国内トップを誇ることで知られる。だが、近年は温暖化によって晩秋から初冬にかけて以前よりも高温となることが多く、つぼみが出そろう時期や開花時期が前倒しする「前進化」の現象が起きている。2016年に発生した甚大な寒害もこの前進化の影響が大きい。

前進化が発生すると、果実が1cm程度に成長した「幼果」の状態で厳冬期を迎えるため、特に露地栽培では寒害を受けやすい。幼果が凍死したビワ樹は、春先の気温上昇とともに通常より早く新しい枝(新梢)が発生したり、枝の伸びが早くなったりしやすい。そのため、次年産のつぼみが出そろう時期や開花する時期も再び前進化してしまい、次年産の果実が繰り返し寒害を受ける懸念がある。

こうした被害をなくすため、農林技術開発センターでは寒害を受けた「なつたより」の枝を使った試験を実施した。試験では、早く伸びた枝先を途中で剪定する「切り返し」をすることで、前進化をリセットさせることに取り組んだ。

切り返しをする枝先は4月6日から約20日間隔で4種類を用意。切り返しをしない枝先を含めた5種類を比較し、秋季に付くつぼみの数や生育状況を調べた=表参照=。極低温で幼果が死滅した枝の先端を4月中に切り返すことで、十分は数のつぼみが確保され、生育の前倒しが抑制できることが明らかとなった。

今後も研究開発を進め、よりおいしいビワを安定して生産できるように取り組みたい。





枝の切返しによる新梢と幼果の生育状況
切返し時期 着房率(%) 花房進度 開花率(%) 幼果径(mm) 凍死果率
無処理 100.0 3.7 90.7 10.7 48.2
4月 6日 98.7 2.8 77.0 9.0 16.7
4月 26日 99.0 2.5 72.3 8.7 14.3
5月 16日 65.9 1.6 47.1 8.1 15.5
6月 5日 55.0 1.3 38.8 7.9 13.0






剪定される新梢の先端





(果樹・茶研究部門 ビワ・落葉果樹研究室 専門研究員 松浦正)