新聞報道

    

諫早湾干拓地バレイショ畑で害虫の天敵の住処となる植物

2016年(平成28年)9月18日

本県の諫早湾干拓地では、大規模露地農地における環境保全型農業が実践されており、環境負荷低減と生産性、収益性を併せもつ生産技術の開発が求められている。そこで、当センターでは、農地やその周辺に生息し、農作業に害をもたらす虫を捕食する「土着天敵」を活用した害虫管理技術の研究を進めている。

具体的には、農地内に土着天敵をとどめ、増殖を助ける「インセクタリープラント(天敵温存増殖植物)」を植栽。そこで増殖された土着天敵が作物に発生した害虫に速やかに対応することを想定している=図=。

天敵温存増殖植物として適しているのは①天敵が継続して生息できる多年生植物②開花期間が5月~10月と長く、天敵の餌となる蜜や花粉を長く供給できるものー。以上を踏まえ、クマツヅラ科のヒメイワダレソウを選び、その効果を確認した。さらにヒメイワダレソウは、踏圧に強いほか、被覆速度も速く土中深くまで高密度で根群が発達するなど雑草抑制でも効果が期待できる。

研究で、ヒメイワダレソウは多様な土着天敵の発生が確認された。特に,春作バレイショの重要害虫であるアブラムシとその天敵であるアブラバチ幼虫の発生増減パターンはほぼ一致。さらに、ヒメイワダレソウでのアブラバチ成虫の発生パターンともほぼ一致した。

また、そのアブラバチ成虫の発生量を農地内の雑草地と比べると約1.7倍多く、ヒメイワダレソウの天敵温存効果が明らかになった。今後も研究を続け、諌早湾干拓地における土着天敵を活用した実用的な害虫管理技術の確立を目指したい。




    

     開花しているヒメイワダレソウ





      インセクタリープラントのメカニズム






(環境研究部門 病害虫研究室 主任研究員 植松綾子)