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バレイショ新品種「ながさき黄金」開発

2016年(平成28年)1月24日

バレイショは南米アンデス地方原産で、日本の伝来地は長崎である。ジャガタラ(現在のインドネシア・ジャカルタ)を経由して伝わったことから「じゃがいも」と呼ばれるようになったともいわれる。本県の生産量は、北海道に次いで全国2位であり、各地の消費者が食している。

品種は「ニシユタカ」「メークイン」などがある。外観は、長楕円(だえん)形の「メークイン」を除いて丸形のため、消費者が店頭で見分けるのは難しい。健康志向の高まりから、機能性成分を含み食味も良い「インカのめざめ」の人気が高いが、収量が少なく病害虫にも弱いため栽培量は少ない。

課題解決に向け、県農林技術開発センターは「インカのめざめ」の欠点を補う新品種「ながさき黄金(こがね)」(品種登録出願中)を開発したので、特性を紹介する=表=。

特長は、抗酸化力が強い色素「カロテノイド」の一種で、白内障などの眼病予防への効果が期待される機能性成分「ゼアキサンチン」「ルテイン」を多く含む。皮色、肉色ともに黄色で、一般のバレイショと区別しやすい。病害虫に強く、減農薬栽培も期待できる。

「ニシユタカ」と比べると、収量は少なく、重量も1個平均80グラム程度と軽い。しかし、ホクホクとした食感に関係するでんぷん価は「ニシユタカ」より高く、「インカのめざめ」並みで、食味が良い。鮮やかな黄色を生かしたフライドポテトやサラダへの使用などでも高い評価を得ている。

市場投入は来年を予定している。機能性成分を生かした多品種との差別化や加工利用、新産地の育成といった新たな展開が期待できる品種である。




    

下が「ながさき黄金」、左上は「インカのめざめ」右上は「ニシユタカ」



「ながさき黄金」の特性
作型※ 品種名 収量 平均重量 でんぷん価 食味
(kg/a) (g/1個) (%)
春作マルチ栽培 ながさき黄金 362 88 15.6
インカのめざめ 201 56 16
ニシユタカ 416 133 12.2 中~やや否
秋作普通栽培 ながさき黄金 274 79 12.7 良~やや良
ニシユタカ 330 119 9.4 やや否
※春作マルチ栽培:2013~2015年の平均値
 秋作普通栽培:2012~2014年の平均値



品種名※ カロテノイド含量 病害虫抵抗性※
(μg/生いも100g)
ゼアキサンチン ルテイン PCN PVY 青枯病
ながさき黄金 801.1 43.8 あり あり
インカのめざめ 1131.7 79.7 なし なし
デジマ 0 48.1 なし なし
※PCN:ジャガイモシストセンチュウ
 PVY:ジャガイモYウイルス



(農産園芸研究部門馬鈴薯研究室 主任研究員 森一幸)