新聞報道

    

松くい虫被害対策 防除適期を解明

2015年(平成27年)6月21日

松林に甚大な被害をもたらす松くい虫被害は、マツノザイセンチュウという体長1㍉がに満たない線虫が松の中で通水障害を発生させ、枯らすことで引き起こされる。県内各地で防風、防潮などを目的に松が植栽されており、松くい虫被害も毎年発生している。

この線虫を松から松ヘ運ぶ”運び屋”が体長約3㌢のマツノマダラカミキリ=写真=である。松に産み付けた卵から羽化する時に線虫が体内に入り、ほかの健全な松を食べた際に線虫が松の中に入り込む。線虫用の殺虫剤は開発されていないため、カミキリの薬剤防除が重要となる。

県農林技術開発センターは1985年から30年間、カミキリが卵を産み付けた松を網室に置き、羽化数を調べることで、カミキリの発生パターンと最適な薬剤散布の時期を探ってきた。

調査結果をみると、カミキリは5月下旬から羽化し松の中から脱出する。総数の50%が脱出するピーク期は6月下旬から7月上旬、終息するのは7月下旬から8月上旬ということが明らかになった=図=。薬剤の効果は約2カ月間続くため、発生時期を効率的にカバーするには、羽化し始めて2週間後の6月上旬に散布するのが最適と分かった。

薬剤散布は噴霧器やヘリコプターを使っている。近年の県内の松くい虫被害量はピーク時の10分の1程度の年間約2千立方㍍となっている。被害を最小限にするには効果的な時期、方法で薬剤を散布するとともに、被害が発生した場合は、枯れた松の伐採や焼却など徹底した駆除も必要である。




マツノマダラカミキリ

    





マツノマダラカミキリの発生パタ-ン

    







(森林研究部門 研究員 深堀惇太郎)