新聞報道

    

壱岐 五島での普及期待 二条大麦有望品種「はるか二条」

2014年(平成26年)6月22日

本県は麦焼酎のルーツとして知られており、壱岐や五島では近年、島内で生産された麦を使った焼酎づくりが行われている。県内で栽培される麦の60%は焼酎原料となる二条大麦で占められる。その主要品種の「ニシノホシ」は九州で育成された品種で焼酎醸造適性が高いものの、収穫期に雨が続くと種実が穂に付いたまま発芽(穂発芽)しやすく、土壌伝染性であるオオムギ縞萎縮病に弱いことから収量や品質面で課題となっている。

そのため、耐病性で多収かつ高品質が期待される新品種「はるか二条」の本県での適応性を検討し、特性を明らかにした。

はるか二条(旧系統名:西海皮69号)は、穂を支える茎の部分が短く丈夫であるため倒伏しにくい「羽系B0080」と、多収かつオオムギ縞萎縮ウイルス系統に抵抗性を持つ「西海皮59号」との組み合わせにより、九州沖縄農業研究センターで育成された。国内のオオムギ縞萎縮病ウイルスには複数の種類があるが、はるか二条はその全てに抵抗性があり、穂発芽性もニシノホシの「やや易」に比べ「やや難~難」である。

センター内ほ場および現地での栽培試験の結果、主な特性は次の通りであった。出穂期はニシノホシと比較して2~6日早く、成熟期は0~2日早い。稈長(かんちょう)は短く、容積重(1㍑当たりの重量)は重い。外観品質は同程度で、収量はおおむね多収である。

以上の結果を踏まえ、はるか二条は、2013年12月に本県の奨励品種に採用され、現在、五島・壱岐を中心に普及が進められている。なお、栽培上の留意点として、赤かび病にやや弱いので適期防除が大切である。



    

   はるか二条(左)とニシノホシ




   「はるか二条」の生育、収量および品質特性


地域 品種名


(月.日)



(月.日)



(㎝)








(
kg/a)



(%)



(g)



(g)



センター はるか二条 4.01 5.18 77 0.3 0.1 42.1 124 722 45.5 2.3
ニシノホシ 4.04 5.18 81 0.1 0.0 34.0 100 687 42.1 2.9
諫早 はるか二条 4.08 5.24 73 0.0 0.3 39.8 145 737 44.9 3.0
ニシノホシ 4.14 5.24 80 0.0 0.3 27.5 100 699 45.5 3.3
五島 はるか二条 3.24 5.20 72 0.0 45.4 122 731 49.7 3.5
ニシノホシ 3.30 5.22 79 0.0 37.2 100 712 48.1 5.0
壱岐 はるか二条 4.05 5.28 82 0.0 0.0 51.5 88 738 48.7 2.5
ニシノホシ 4.07 5.29 85 0.0 0.0 58.3 100 737 48.9 4.0
注1:病害程度は0(無)~5(甚)の6段階表示。
注2:倒伏程度は0(倒伏無し)~5(完全倒伏)の6段階表示。
注3:検査等級は1(1等上)~6(2等下)及び7(規格外)の7段階表示。






(農産園芸研究部門作物研究室 主任研究員 大脇淳一)