概要:
銀錯体-金属水酸化物-モンモリロナイト系抗菌剤(平成12年度特許出願、以下銀-粘土系抗菌剤)の製造プロセスを確立し県内の産業界へ技術移転することを目的として、実用化に際し求められる抗菌剤の改良と、抗菌剤をベースとした無機有機複合材料の開発を行った。本研究の内容は概ね以下のとおりである。
(1)表面親水性の改善
モンモリロナイトに銀錯体を導入して得られる抗菌剤は疎水性となり、抗菌力に間接的に影響していたが、Al水酸化物カチオンを銀錯体添加の前に添加することで、その表面を親水性に変えることができた。水中での分散性を考慮すると、(銀錯体添加量)-(AL水酸化物添加量)<50mol%となるようにAl水酸化物を加えることが望ましい。
(2)粗製原料による抗菌剤作製
安価な原料である粗製ベントナイトに、銀錯体を添加して作製した抗菌剤のMIC値は200ppm(大腸菌)であったが、この結果は精製モンモリロナイトから作製した抗菌剤のMIC値と大差がなかったことから、初期的な抗菌力は、イオン交換容量の小さな粗製ベントナイトに依っても充分であることが分かった。
(3)生理活性物質と粘土鉱物との複合化
①モンモリロナイトにポリフェノールの一種であるカテキン(エピガロカテキンガレート粗抽出物)と硫酸第1鉄水溶液の混液を接触させ、モンモリロナイト層間への導入を試みた。蛍光X線及びCHNコーダーによる分析から、得られた試料は炭素を6wt%以上、Fe2O3を約4wt%含有しており、カテキン及び鉄イオンはモンモリロナイトの層間若しくは層面へ存在することが明らかで、カテキン-モンモリロナイト複合材料が得られたものと考えられる。
②陰イオン交換型の粘土鉱物であるハイドロタルサイト(Mg(8-x)Alχ(OH)16(CO32-)・4H2O)の500℃で熱処理し、植物生長調節剤のナフチル酢酸(NAA)及びインドール酪酸(IBA)の水溶液を接触させ、両化合物のインターカレーションによる複合材料の作製を試みた。得られた試料のX線回折分析から、上記粘土鉱物本来の再水和以外による回折ピークが確認され、CHNコーダーによる分析からも炭素量の大幅な増加が認められたことから、植物生長調節剤と粘土鉱物による複合材料ができたものと考えられる。
以上、製造技術上の知見は、本研究の産学官連携体制*のなかで、参加県内企業へ技術移転した。(*本研究は㈱微研テクノス、県立長崎シーボルト大学、産業技術総合研究所中部センター(名古屋市)、長崎県衛生公害研究所及び長崎県窯業技術センター(オーガナイザー)が参加し実施された。生理活性物質と粘土鉱物の複合化については特許出願を行った。)