長崎県ケアラー支援条例

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長崎県ケアラー支援条例[PDFファイル/12KB]

長崎県ケアラー支援条例

令和4年10月14日公布(令和5年4月1日施行)

前文

 身近な人に無償で介護、看護、日常生活上の世話等の援助を行うすべての人が、援助を受ける人と共に安心して人生を送ることができるようになることは、私たち県民の願いである。
 近年、少子高齢化、核家族化の進展等の社会環境の変化によって、家庭における介護等の人手が不足し、ケアラーに過度な負担がかかっている。また、根強く残る「家族が介護するのが当たり前」という規範意識もあいまって、ケアラーが孤立し、抱える悩みを声に出しにくくなっており、受けられる支援すら届かないという課題が生じている。
 これらの課題解決を図るため、ケアラーに対する早急な支援体制の強化等と併せて、県民等がケアラーの問題を理解し、ケアラーが孤立したり、心身が疲弊することのないよう、社会全体で支える機運を醸成していくことが重要である。
 ここに、私たちは、ケアラーに対する理解を深めるとともに、社会全体で支えていく仕組みを構築し、だれ一人取り残さないことを決意し、この条例を制定する。

第1条(目的)

 この条例は、ケアラーに対する支援(以下「ケアラー支援」という。)に関し、基本理念を定め、県の責務並びに県民等、事業者及び関係機関の役割を明らかにするとともに、ケアラー支援に関する施策の基本となる事項を定めることにより、ケアラー支援に関する施策を総合的かつ計画的
に推進し、もって全てのケアラーが健康で文化的な生活を営むことができる社会を実現することを目的とする。

第2条(定義)

 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) ケアラー 高齢、障害又は疾病等により援助を必要とする親族、友人その他の身近な人に対して、無償で介護、看護、日常生活上の世話その他の援助(以下「介護等」という。)を提供する者をいう。
(2) ヤングケアラー ケアラーのうち、18歳未満の者をいう。
(3) 県民等 県民、県内に通勤し、又は通学する者及び県内で活動する者をいう。
(4) 事業者 県内に事務所又は事業所を有し、事業活動を行う者をいう。
(5) 関係機関 介護、障害者及び障害児の支援、医療、教育、児童の福祉等に関する業務を行い、その業務を通じて日常的にケアラーに関わる可能性がある機関をいう。
(6) 民間支援団体 ケアラー支援を行うことを目的とする民間の団体をいう。

第3条(基本理念)

 ケアラー支援は、全てのケアラーが個人として尊重され、健康で文化的な生活を営み、その生活の継続性が損なわれることがないように行われなければならない。
2 ケアラー支援は、県、県民等、市町、事業者、関係機関、民間支援団体等の多様な主体が、それぞれの責務又は役割を果たし、相互に連携を図りながら、ケアラーが孤立することのないよう社会全体で支えるように行われなければならない。
3 ヤングケアラーに対する支援は、ヤングケアラーとしての時期が特に社会において自立的に生きる基礎を培い、人間として基本的な資質を養う重要な時期であることに鑑み、適切な教育の機会を確保し、かつ、心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られるように行われなければ
ならない。

第4条(県の責務)

 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、ケアラーに関する介護、障害者及び障害児の支援、医療、教育、児童の福祉等の制度間の調整を図りつつ、離島、へき地及び中山間地域の地域性及び特殊性を踏まえ、ケアラー支援に関する施策を総合的かつ計画的に
実施するものとする。

第5条(県と市町等との連携)

 県は、前条の施策を実施するに当たっては、市町、事業者、関係機関、民間支援団体等と相互に連携を図るものとする。
2 県は、ケアラー支援における市町の役割の重要性に鑑み、市町がケアラー支援に関する施策を実施する場合には、助言その他の必要な支援を行うものとする。

第6条(県民等の役割)

 県民等は、基本理念にのっとり、ケアラーが置かれている状況及びケアラー支援の必要性についての理解を深め、ケアラーが孤立することのないように十分配慮するとともに、県及び市町が実施するケアラー支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。

第7条(事業者の役割)

 事業者は、基本理念にのっとり、ケアラー支援の必要性についての理解を深め、その事業活動を行うに当たっては、県及び市町が実施するケアラー支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、雇用する従業員又は雇用しようとする者がケアラーである可能性があることを認識するとともに、ケアラーの就労の促進及び継続に資するよう、その就労と介護等との両立に資する環境の整備に努め、その者がケアラーであると認められるときは、当該ケアラーの意向を尊重しつつ、勤務するに当たっての配慮、情報の提供その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

第8条(関係機関の役割)

 関係機関は、基本理念にのっとり、県及び市町が実施するケアラー支援に関する施策に積極的に協力するよう努めるものとする。
2 関係機関は、その業務を通じて日常的にケアラーに関わる可能性がある立場にあることを認識し、関わりのある者がケアラーであると認められるときは、当該ケアラーの意向を尊重しつつ、当該ケアラーの健康状態、その置かれている生活環境等を確認し、支援の必要性の把握に努めるものとする。
3 関係機関は、支援を必要とするケアラーに対し、情報の提供、適切な他の支援機関への案内又は取次ぎその他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

第9条(教育機関の役割)

 関係機関のうち教育に関する業務を行うもの(以下次項において「教育機関」という。)は、前条第2項に規定するもののほか、その業務を通じて日常的にヤングケアラーに関わる可能性があることを認識し、ヤングケアラーの早期発見に努めるとともに、当該ヤングケアラーの教育の機会
の確保に係る状況を確認し、支援の必要性の把握に努めるものとする。

第10条(ケアラー支援推進計画)

 県は、ヤングケアラー及びこれらの者を含む多様なケアラーの現状を踏まえ、ケアラー支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための計画(以下この条において「推進計画」という。)を策定するものとする。
2 推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) ケアラー支援に関する基本方針
(2) ケアラー支援に関する具体的施策
(3) 前2号に掲げるもののほか、ケアラー支援に関する施策を推進するために必要な事項
3 県は、推進計画を定め、又は変更したときは、遅滞なくこれを公表するものとする。

第11条(広報及び啓発)

 県は、広報活動及び啓発活動を通じて、ケアラー自身が、自らの置かれている状況について正しく理解したうえで、適切な支援を求めることができるよう必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、広報活動及び啓発活動を通じて、県民等、事業者、関係機関、民間支援団体等が、ケアラーが置かれている状況、ケアラー支援の方法等のケアラー支援等に関する知識を深め、社会全体としてケアラー支援が推進されるよう必要な施策を講ずるものとする。

第12条(人材の育成)

 県は、ケアラー支援の充実を図るため、相談、助言、日常生活の支援等のケアラー支援を担う人材を育成するための研修の実施その他の必要な施策を講ずるものとする。

第13条(体制の整備)

 県は、ケアラー支援を適切に実施するため、ケアラー支援に関する施策を総合的かつ計画的に実施するために必要な体制及び県、市町、関係機関、民間支援団体等の相互間の緊密な連携協力体制の整備に努めるものとする。

第14条(民間支援団体等による支援の推進)

 県は、民間支援団体その他のケアラーを支援している者が適切かつ効果的にケアラー支援を推進することができるよう情報の提供、助言その他の必要な施策を講ずるものとする。

第15条(財政上の措置)

 県は、ケアラー支援に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

附則

 この条例は、令和5年4月1日から施行する。

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