3.フッ化物の安全性について

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Q12.フッ化物を摂り過ぎた場合どんな害がありますか。

A12.
どんなに安全と思われている物質でも量が過ぎれば害を生じます。フッ化物も同様で、適量では身体の栄養、むし歯予防に役立ちますが、過量に摂取すると害(中毒)を生じます。このフッ化物の有害作用は次の2つに分けられます。
(1)慢性中毒
長年飲料水等により過量のフッ化物を摂取したとき生じるもので斑状歯(歯牙フッ化物症)と骨硬化症の2つがあります。
斑状歯(歯牙フッ化物症)となるのは、適量の2-3倍以上の量のフッ化物を、顎の骨の中で歯がつくられている時期に継続して摂取した場合です。
骨硬化症は、適量の10倍以上のフッ化物を数十年摂取し続けた場合に起こる場合があります。

(2)急性中毒
一度に多量のフッ化物を摂取したときに生じるもので、吐き気、嘔吐、腹部不快感などの症状を示します。
フッ化物の急性中毒量は、体重1kgあたりフッ化物の量2mgです。例えば、体重20kgの子供が40mgのフッ化物を摂取することで生じます。
通常むし歯予防に利用するフッ化物(フッ化物洗口、フッ化物塗布、フッ化物入り歯磨剤)では、適量を使用している限り中毒を起こすことはありません。

フッ化物の量と作用

 

適量

過量

 

慢性中毒

急性中毒 

摂取方法

飲料水

飲料水などから、フッ素を長期間過量に摂取した場合

一度に多量のフッ化物を摂取した場合

量・濃度

 

(ppm)
0.8-1.2

 

飲料水のフッ化物濃度(ppm)

フッ化物の量(mg)

2以上

 8以上

100以上

2,500以上

症状

むし歯予防

斑状歯(歯牙フッ化物症)

骨硬化症

腹部の激痛、嘔吐、悪心

 中毒死

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Q13.フッ化物洗口液を誤って飲み込んでも大丈夫ですか?

A13.
結論から言ってQ12で述べたとおり大丈夫です。フッ化物洗口のうち、最もフッ化物濃度の高い週1回法(フッ化物濃度900ppm)についてみてみると、洗口液10ml全量を誤って飲み込んだ場合、9mg(900μg /ml×10ml)のフッ化物を体内に摂取したことになります。この場合、軽度な中毒による不快症状(悪心、嘔吐、口渇、発汗などで主に胃の刺激症状)が発現するフッ化物量は、体重1kgあたり2mgとされているので、洗口可能な4歳児の平均体重が我が国ではおよそ16.5kg(平成元年国民栄養調査)であることから、4歳児の急性中毒量は33mg(2mg/kg×16.5kg)となり、1回量を謝って飲んでも問題はありません。

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Q14.フッ化物は劇薬であると聞きましたが、使用しても問題はありませんか?

A14.
この劇薬という意味は、薬事法で該当する薬品を示します。むし歯予防に用いられるフッ化物化合物にはいろいろなものがありますが、主にフッ化ナトリウムが多く用いられています。このフッ化ナトリウムの粉末そのものは、薬事法上劇薬に該当しますが、処方通りに溶解して、その濃度がフッ化物として1%(10,000ppm)以下のものは普通薬として扱われます。したがって、家庭や学校・幼稚園で専門家以外の人が取り扱ってもなんら問題はありません。ただし、その溶液の作製や保管に関しては十分に注意する必要があることは、言うまでもありません。
フッ化物(フッ素)についての補足説明

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Q15.フッ化物は骨に蓄積して障害をもたらしませんか。また、他の組織に対してはどうですか?

A15.
Q6で説明したように、フッ化物は骨や形成途上の歯に多く取り込まれます。適量な場合は障害をもたらすことはなく、有益な作用しか示しませんが、過剰になると歯に対しては斑状歯(歯牙フッ化物症)、骨に対しては骨硬化症という病気を引き起こすことがあります。(Q6、Q12を参照)しかし、前述しているようにこれらの障害が発生しない量に調節しているので心配ありません。また、むし歯予防に用いる量のフッ化物で障害が出たという根拠ある報告は今までありません。

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Q16.フッ化物塗布で歯が黄色くなったり、黒く変色すると聞いたことがありますが、本当ですか?

A16.
フッ化物塗布によって歯が黄色くなったり、黒く変色することはありません。歯が黄色や褐色になるのは単なる汚れや飲食物による着色が多いようです。また、フッ化物を塗って黒く変色するのは、サホライド(フッ化ジアンミン銀)というむし歯の進行を抑制する薬剤を塗布したためと考えられます。黒く変色するのは、この薬剤に含まれる硝酸銀が、むし歯になった部分や歯の表面の微小な凹凸部に作用してタンパク質と結合するためです。(つまり、歯を黒く変色させたのではなく、色が付いたようなもの)しばしば、市町村・保健所・歯科医院などでは、初期のむし歯にサホライド(フッ化ジアンミン銀)を塗布し、その後数時間たって塗布した面を黒変させるためにフッ化物で黒くなると誤解することがあります。

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Q17.フッ化物塗布後、唾液は飲み込んでも大丈夫ですか?

A17.
フッ化物塗布は年に2回から4回実施します。したがって、フッ化物の過剰な量を摂取していることはありません。また、フッ化物塗布に用いる薬剤は、塗布する準備段階ですべて飲み込んでも急性症状を発現しない安全な量に調節されています。実際は、歯ブラシに残ったり、塗布後の過剰ゲルをふき取るなどしても、準備量の約25%程度のフッ化物が口に残ります。これは、急性症状の発現量に比べ、十分に安全な量であるため、唾液を飲み込んでも全く問題ありません。

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Q18.子供の歯に時々白い斑点がみられますが、フッ化物と関係ないでしょうか?

A18.
歯の形成期に長期間にわたり過量のフッ化物を摂取し続けると斑状歯(歯牙フッ化物症)が現れること、また、フッ化物以外の原因でも斑状歯と同じような症状が現れることはすでに述べたとおりです。
フッ化物による白斑はQ12で述べたとおり、通常の方法を行っている限り、白斑が生じる心配はありません。
フッ化物以外の白斑には様々なものがありますが、このうち特に多いのが「むし歯」です。むし歯のなりはじめには歯の表面のカルシウムが溶けだし歯に白い斑点やしま模様が生じます。しかしこの状態から全部がむし歯に進むとは限りません。原因となる歯垢(歯の汚れ)を適切な歯みがきで除去したり、フッ化物の応用により白斑が元通りなることは臨床上よくみられることです。
したがって、フッ化物は歯の白斑を生じさせるというよりも、むしろ白斑を治す作用を有しているということができます。

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Q19.フッ化物洗口液やフッ化物塗布液で歯が侵されたり歯が脆くなるということはありませんか?

A19.
フッ化物洗口やフッ化物塗布に使われるフッ化ナトリウムは、化学的に安定した物質であり、その溶液で歯が侵されることはありません。一方、フッ化水素などのように極めて強い酸で、ガラスを溶かす性質のあるものもあります。このように同じフッ化物でも結びつくものによって性質がまったくことなるのはQ4で述べたとおりです。
また「フッ化物は歯を強くする」という言葉が、往々にして「歯が固くなって強くなる」と受け取られ、このため「歯がもろくならないか?」、「折れやすくならないか?」などの疑問がでてくるようです。しかし、フッ化物は細菌の産生する酸に対して抵抗力のある歯質を作るのであって、フッ化物洗口、フッ化物塗布、フッ化物入り歯磨剤などにより歯がもろくなる、折れやすくなる、あるいは治療を受けたとき欠けやすくなるといったことはありません。

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Q20.病気によっては、フッ化物洗口やフッ化物塗布を行ってはいけないものがありますか?

A20.
むし歯予防に使用するフッ化物に関しては、Q12からQ19までにも述べているとおり適量のフッ化物を使用している限り、身体に影響が現れることはありません。
フッ化物洗口やフッ化物塗布等のフッ化物応用法は、安全性の確立した方法ですからすべての人々が利用できます。また、身体の弱い子供や障害者(児)が特にフッ化物の影響を受けやすいという事実もありません。

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Q21.フッ化物はガンの原因になると聞きましたが、どうなんでしょうか?

A21.
以前、ある学者から「水道水にフッ化物が添加されている地域ではガンによる死亡率が高い」という報告がなされたことがありましたが、その後の調査でフッ化物とガンの因果関係は否定されました。また、フッ化物が実験用動物でガンを引き起こしたという報告されましたがその後、再検討された結果、問題がないことが明らかになりました。
したがって、フッ化物とガンとの因果関係を示す根拠が無く、フッ化物がガンの原因になることはありません。

※補足
フッ化物とガンとの調査を行うとき、ガンになりうるほかの因子(人種構成、地理的条件、社会経済状態、年齢、性差等)を考慮しないで、比較されていた。これらの因子を考慮に入れると、ガンの死亡率の差はそれぞれの母集団の年齢と人種差に起因していた。
また、再吟味した結果、指導的な立場にある機関は(米国国立ガン研究所、その他各医学機関・科学機関)でフッ化物がガンを引き起こすという主張を否定している。

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Q22.水道水のフッ化物添加(フッ化物の応用)は、エイズの原因になるのでしょうか?

A22.
結論から言ってフッ化物とエイズとは全く関係ありません。
エイズは、同性間あるいは異性間での性行為、血液・血液製剤での感染、薬物使用者によって汚染された注射器の共用、エイズに感染した母親から胎児や新生児への周産期感染といった感染経路が確認されていて、レトロウィルスによる感染であるという決定的な証拠があります。また、フッ化物がエイズの発症や感染の原因あるいは補助因子となる主張は、科学的に立証されておらず、疫学的、実験に基づけばフッ化物とエイズの関係を根拠づけるものはありません。

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Q23.フッ化物は遺伝的な危険性がありますか?

A23.
至適濃度のフッ化物が染色体(人の遺伝子)の構造を変えることはありません。
動物実験においても至適なフッ化物濃度の100倍も高いフッ化物レベルですら、骨髄や精細胞の染色体異常を認めていません。わかりやすくいえば、フッ化物が遺伝的障害を与えることはありません。

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Q24.フッ化物添加は、ダウン症候群の子供の出生率を増加させますか?

A24.
ある雑誌で、「飲料水中のフッ化物とダウン症候群との関係がある。」と発表があったが、これには、統計処理と研究計画に重大な欠点があり、否定されています。また、他の研究でもダウン症候群と関係があるという根拠はありません。したがって、ダウン症候群とフッ化物添加との関係はありません。

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Q25.水道水フッ化物添加(フッ化物の応用)は、アルツハイマー病の原因になりますか?

A25.
アルツハイマー病の正確な原因は知られていません。いくつかの学説が研究途上にあるが、現在までに立証されたものはありません。湯を沸かすのに調理器具が使われるときフッ化物添加水がアルミニウムを溶出させるため、フッ化物がアルツハイマー病進行の共通要因として、関係してくるしてくるという主張がなされてきました。米国の大学(ヴァージニア大学)の実験でフッ化物の存在の有無という最も相対する条件の下で、アルミニウム製の調理器具からアルミニウムの溶出量を測定しようとしたが、極端な酸性あるいはアルカリ性の条件下でも、どんな調理器具からも有意なアルミニウム量が溶出することはありませんでした。

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Q26.フッ化物添加は心臓病の原因、あるいはその一因となりますか?

A26.
結論から述べると、心臓病や他の原因の死亡が、推薦量のフッ化物を含有する飲料水と関連する事はありません。
米国の国立心臓、血管、肺研究所によると最終レポートで「フッ化物添加都市と非添加都市に居住する住民の健康比較調査から、また、生涯にわたり天然のフッ化物暴露を受けた人や産業活動による高度の暴露を受けた人の健康診断と病理診断から、また、フッ化物添加についての幅広い国家的な経験から、これらすべてに一致した所見はフッ化物添加は心臓血管の健康に悪い影響を示さない。」と結論づけています。

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Q27.飲料水中のフッ化物はアレルギー反応を引き起こすことがありますか?

A27.
米国アレルギー学会では、フッ化物によって起こりうるアレルギー反応についての臨床報告を再検討して、「水道水フッ化物添加で用いられるフッ化物でアレルギーや不耐性を起こすことはない。」と述べています。また、WHOも報告されているアレルギー反応は、「無関係な状況」に該当するとして、フッ化物によるアレルギー反応の証拠はないとしています。
したがって、管理されたフッ化物がアレルギー反応を引き起こすことはありません。

参照
最近、フッ化物が人の健康に対して有害であるというフッ化物添加反対論者による申し立てに答えて、米国口腔衛生研究所は、「フッ化物添加反対論者のパンフレットにおける科学文献の誤用」を公表した。それの中で著者は、フッ化物添加反対論者によって作られた、最適のフッ化物添加飲料水の飲用による有害な影響についての申し立てに関する230以上の主張に対し、論及、論破しています。

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Q28.妊娠中の母親がフッ化物を摂取しても胎児に悪影響はありませんか。また、授乳中の母親の母乳に対してはどうでしょうか?

A28.
水道水フッ化物添加がなされている地域でも、胎児に対する悪影響は報告されていません。また、死産や新生児の死亡率が増えるという報告もありません。仮に母親が誤って大量のフッ化物を飲み込んだとしても、血液や胎盤を経由するうちに胎児に移行するフッ化物はごく少量になってしまいます。それが証拠に胎児期に歯の形成が行われている乳歯にはフッ化物を原因とする斑状歯(歯牙フッ化物症)がほとんどみられません。
永久歯の形成は生後まもなく始まりますから、赤ちゃんにとって母乳中のフッ化物も重要です。しかし、母親が摂取するフッ化物のほんの僅かしか母乳に移行しませんから、乳児に害を及ぼすことはありません。むしろ母乳保育中の乳児は、フッ化物が不足しがちであるといえます。

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Q29.水道水へのフッ化物添加は「純粋な水」の品質に影響を及ぼしますか?

A29.
水道水には、周囲の土壌や岩から溶出する多くの物質が種々の量で含まれています。これらの物質の中にフッ化物もあり、それは歯の健康に必要とされている至適濃度以下であったり以上であったりします。水道水では、フッ化物を実益性や健康増進のために至適濃度を管理して飲料水に添加されます。したがって、水道水の品質に影響を及ぼすことはありません。  

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Q30.フッ化物添加水は、魚や他の生物に悪影響を与えませんか?

A30.
むし歯予防のために水道水に添加されるフッ化物濃度は、1.0ppm前後に調節されています。その点海水には、もともと1.3ppm前後のフッ化物が含まれていますから、海水魚に関しては全く心配ありません。また、金魚などの淡水魚もフッ化物添加された水の中で健康に生息することが確認されています。農産物や家畜に対してもフッ化物添加水の悪影響は認められません。

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Q31.宝塚や西宮ではどうして斑状歯(歯牙フッ化物症)が起きたのでしょうか?

A31.
1970年代に社会問題化した宝塚や西宮の斑状歯(歯牙フッ化物症)はフッ化物洗口によるものでなく、天然に含まれた飲料水中の過量のフッ化物が原因で起きたものです。宝塚市、西宮市のある六甲山系は、地質に多くのフッ化物を含み、天然の水にもかなり高濃度のフッ化物が含まれていました(高濃度地区は2.7ppmと推定されています)。この天然水中のフッ化物濃度が高いという事実を知らずに、この水を水道水として長期間にわたり使用し続けたため、子供たちの中に斑状歯(歯牙フッ化物症)が発生してしまったのです。
天然水中のフッ化物も多すぎれば、減らすようにコントロールすることが必要です。

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