慶巌寺の名号石は、高さ169cm、幅120cmの南北朝時代に築かれた石造物である。碑面中央部に楷書で「南無阿弥陀仏」の名号が薬研彫りで陰刻されている。また右側に意趣と年紀の銘があり、貞和7年(1351)に衆生平等利益を祈念して建立したと記されている。貞和7年は、北朝の観応2年に当たるが、南朝であった足利直冬は観応年号を使わなかったとされるため、この地に直冬の勢力下もしくは支持勢力があったことを示している。この種の名号石は県下に類例がなく、地方史研究のうえからも貴重である。
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