「みさきの観音」と呼ばれ、古くから信仰を集めてきた円通山観音禅寺の半丈六千手観音像。像高は2m半に近い。頭上に十一面を載き、頬の張りも豊かで、おだやかに見おろす円満な面相はいかにも藤原彫刻のふくよかさを伝えている。像容は42臂の普通の千手観音像で裳(も)の襞(ひだ)はことに薄く浅く彫出され、平安末期の特色をみせている。八尺に及ぶ大像を、頭体根幹部は1材を用いて彫出するという豪放さは古式さの踏襲でもあるが、藤原後期のおだやかな彫技と古式な用材とのとり合せは、寄木の繊細な技巧になじみにくい地方彫像の特質ともいえる。
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