福井洞窟は、佐世保市北部の福井川の浸食で形成された砂岩洞窟で、昭和35(1960)年、38(1963)年、39(1964)年に日本考古学協会により発掘調査が行われ、旧石器時代から縄文時代の移行期の資料が層位的に出土した。この成果により、昭和53(1978)年に国史跡に指定された。
今回重要文化財に指定されるのは、平成23(2011)年、平成24(2012)年度に佐世保市教育委員会が実施した史跡整備を目的とした調査の出土品一括である。調査により、旧石器時代から縄文時代草創期の包含層が層位的に確認され、各層から土器や石器が数多く出土した。最も特徴付けるのは、旧石器時代終末期の系譜を引く細石刃石器群(さいせきじんせっきぐん)が縄文時代草創期まで残り、隆起線文土器や爪形文土器と一緒に出土する点にある。旧石器時代の主要な狩猟具であったヤリと、縄文時代に主要な煮炊き具であった土器が一緒に使われたことを示しており、九州北部地域における旧石器時代から縄文時代の移行期の特徴をよく示している。また、細石刃及び細石刃核の接合資料はきわめて遺存状態が良く、細石刃を剥離する技術工程を明瞭に読み取れる点で、学術的価値が極めて高い。