マリアは原罪を受けていない存在だったとする「無原罪(むげんざい)の御宿(おんやど)り」を主題とする絵画資料で、聖母の両脇下には2人のフランシスコ会の聖人を描いている。フランシスコ会系の要素を持つ図像を、教義に基づき巧みに組み合わせていることから、制作にあたってはフランシスコ会宣教師等の指導があったと推測される。したがって、制作時代はフランシスコ会が日本で宣教活動をした17世紀初期であると考えられる。
和紙に日本の近世絵画の絵の具で描かれており、墨の下書き線は日本の伝統的な筆法である一方、曲線的な衣装や彩色などには西洋画の描写手法がみられることから、日本の絵画技法の素養を持った人物が西洋画を模倣して制作したものと考えられる。
台紙には、フランス語で「プティジャン神父の贈り物」と印字があり、幕末から長崎で宣教活動をしていたプティジャン神父を経由してフランスへ渡ったと考えられる。
フランシスコ会系のキリシタン絵画として現存する唯一の作例であり、キリシタン資料として学術的価値が高い。