多良岳にある金泉寺(高野山真言宗)の本尊は、不動明王像と制吒迦(せいたか)童子像・矜羯羅(こんがら)童子像からなり、寺伝では空海の作となっている。
不動明王像と制吒迦童子像は、一木造で像高はそれぞれ87.6cm、53.3cm。不動明王像は、右手の剣は失われているものの左手に縄を持ち、怒りの表情をみせる不動像の典型である。造像法や彫刻表現から2軀ともに、平安時代後期12世紀の造像と考えられる。 矜羯羅童子像は像高53.1cm。寄木造であることなどから、中世に造像されたものと判断される。12世紀に作られた当初の像が失われたため新たに補ったものと考えられ、不動三尊像への信仰が途切れることなく続いていたことを示している。不動明王像や制吒迦童子像にみられる簡明な彫刻表現は、仏像でありながら神像に通じる特徴も備えている。また荒々しくノミ跡を残すのは鉈(なた)彫(ぼ)りと呼ばれる技法で、霊木から神仏が出現する様子を表現したものと考えられている。