江迎本陣は、平戸往還の中で最も平戸に近い平戸藩の本陣である。現在も本陣や茶屋跡などの建物や庭園が残っている。
本陣の御成座敷は、平戸藩第10代藩主松浦熙(まつらひろむ)公によって「枕水舎」と命名された。松浦熙公は命名した「枕水舎」の名を自ら書き、螺鈿細工としていることが、由来書からも明らかとなっている。松浦熙公は江戸勘亭流の大家として知られ、螺鈿細工の書体は江戸勘亭流である。螺鈿細工は横78cm、縦47cmの扁額であり、裏面には天保3(1832)年の年号とともに、松浦熙公の銘が残る。
螺鈿細工は朱漆地(しゅしっち)に大きな貝片で文字を表しており、当時としては珍しい技法を用いている。長崎の螺鈿細工職人の手によるものと推定される。
由来書および扁額の裏面に残る銘から、松浦熙公由来の扁額であることが明らかであり、当時としては珍しい技法を用いていることから、きわめて貴重な文化財である。