長戸鬼塚古墳は、有明海に突出した標高約10mの丘陵先端部に築造された、直径15m、高さ5mの円墳である。石室は、玄室、前室、羨道(せんどう)をもつ複室構造の横穴式石室で、羨道が短く玄室と前室の区別が明確な7世紀前半頃の特徴を持つ。石室の構築には安山岩の塊(かい)石(せき)を用いているが、特にその腰石には自然石の巨岩を据え、その前室西側と玄室東側及び西側部分の3か所に自由画風的な線刻画を施す。線刻は鯨を表現したものと考えられるもの、そして船と十数本の櫂(かい)を描いたと思われる図から構成される。
有明海沿岸では装飾古墳が多く分布しており、長崎県本土部の装飾古墳として確認された長戸鬼塚古墳、小長井町の丸尾古墳、高来町の善神さん古墳の3基も、有明海沿岸部に築造されている。長崎県本土部の装飾古墳3基の中で、本古墳は最も保存状態が良く、古墳築造当時のこの地域の様相を知るうえでも貴重な古墳である。
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