竜頭は一頭の竜が笠形上の宝珠を噛み、竜のとりつく脹らみの強い笠形は瑞雲文が飾られている。鐘身の上帯には雲文や篳篥(ひちりき)や横笛などがあしらわれ、上帯に接する四方の乳廓は唐草文で埋め、内部に3段3列の蓮蕾形の乳を配していて朝鮮鐘の意匠である。乳廓相互の間には飛雲や七宝や楽器を散らしているが、鐘身面には山水風景のなかに十六羅漢のさまざまな姿が薄肉に鋳出され、飛雲飛竜を点じて一幅の絵のごとく仕上げている。竜頭の長軸線上に配した撞座は、中房を大きく素文とした単弁八葉の蓮華文である。竜頭に添えられる筒状の旗挿と呼んでいるものを省略し、鐘身面に羅漢群像を風景とともに絵画的に鋳出すなど、朝鮮鐘の意匠を和風化したもので、鋳技も秀れ、優秀な工人たちの制作であることがわかる。制作は江戸時代前期と考えられる。総高76.5㎝。
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