(1)嘉勢照太氏について
氏は、昭和57年に八田刺繍店2代目の八田桂次氏に弟子入りし、長崎刺繍の技術習得に努めた。八田氏逝去後も1人で刺繍を続け、平成7年には自宅に「長崎刺繍工房」を設立された。現在は着物や帯の縫い紋や装飾紋を専門とするかたわら、創作活動にも積極的に取り組まれ、日本美術展覧会(日展)にも4度の入選を果たされている。
また長崎くんちの衣装の修理や制作、傘鉾の垂れの復元に取り組まれるなど、一度衰退しかけた長崎刺繍の技術を復活・再生させた優れた技術保持者である。
(2)長崎刺繍の由来・特徴
長崎刺繍は、長崎市中に居住していた唐人によって17世紀後半頃に伝えられた刺繍技術が長崎に定着したものといわれている。
特徴は、色糸を縒ってさまざまな太さの糸を作って質感を変化させていることや、縫った色糸に着色して繊細なグラデーションを施していること、また刺繍の下に綿や紙縒を入れて立体感を出す「盛り上げ」がなされていることである。
また、長崎刺繍は地域文化の一つであるとともに、「長崎くんち」の衣装や傘鉾の垂れなどの諸道具の修理や新調に欠くことのできない技術である。
大きな地図で見る