壱岐聖母宮に蔵する古唐津系在銘の茶壺である。銘文は漢字、片仮名、ひら仮名混りで刻入されている。郷ノ浦(百二良村)生まれで仏門に帰依した宗鶴(そうかく)によって天正20(1592)年に寄進されたものである。作りはたたき成型で、内側に薄く青海波文がある。釉(ゆう)薬はこげ茶系の流し釉で長石に土灰を基調としている。焼かれた窯は不明であるが作域から古唐津系製品の逸品の一つであり、器面に彫られた銘文は古唐津研究の上で欠かせない非常に貴重なものである。なお文献等では資料名として「叩き黒唐津天正二十年銘耳付茶壺」で紹介されている。総高23.3㎝、胴径21.4㎝、底径11.3㎝。