雲版は主に禅寺の庫裡(くり)や斉堂(食堂)に掛けて食事などの時を知らせるために打鳴らす器具である。定光寺の雲版は、裏は素文で、いわゆる片面式のものである。大きめの頭部には2個の吊手穴があり、まわりに菊座が鋳出(いだ)されている。雲版の頭頂には中央に稜を立て、その左右に2弧をつくり、縁廻りの断面は蒲鉾形で子縁をそえている。両腰脇にくびれをつけ、下方は丸くととのえ、下方の撞座は筋の入った四葉重弁の蓮華文にかたどられている。表面の中央に「肥前州上松浦廣瀬之村瑞宮山慶龍禅寺住持比丘首一」、向かって右に「意趣者壽命長遠福祿圓成」、左に「嘉吉三年癸亥十月廿三日氏女慶幸」の刻銘がある。また、裏面下方にも「妙安大姉(みょうあんだいし)」「源麿宗廣」の刻字もみえる。嘉吉3(1443)年、在銘は雲版の基準作となっている。縦57.5㎝、横50.8㎝。