長崎市南山手地区は、市の中央部、長崎湾東岸に位置し、港を見下ろす眺望の良い丘の上に位置する。安政5年(1858)の5カ国修好通商条約により設けられた長崎の開港場の旧居留地内にあり、南山手の居留地は、主として住宅用地として使われていた区域である。
保存地区は、旧居留地の下等地である南山手町の大部分で、南北約700m、東西約200mの区域と海岸寄りの小曽根町の中等地、重要文化財旧長崎税関下り松派出所や重要文化財旧香港上海銀行長崎支店がある松ヶ枝町の上等地の一部を含む。
南山手町の北よりには国宝大浦天主堂、重要文化財旧羅典神学校がある。その南隣にはグラバー園があり、幕末から明治にかけて活躍した政商達の住宅として重要文化財旧グラバー住宅、重要文化財旧リンガー住宅、重要文化財旧オルト住宅が現存している。その他、市内から移築した明治中頃の旧ウォーカー住宅、旧スチイル記念館、旧三菱第二ドックハウスなどがある。加えて地区内には明治初期の十六番館、明治中期の旧雨森邸がある。
地区の中心から南側は静かな住宅地で、明治中期の洋風住宅が比較的良好に残っており、十六番地所には明治31年(1898)建設の煉瓦造3階建のマリア園がある。
松ヶ枝町の旧長崎税関下り松派出所は運上所が置かれていたところでこの敷地は大浦川河口の角地にあたる。かつては隣の旧香港上海銀行長崎支店とともに入港する船からの海岸の目印となる景観を構成していた。
この地区では幕末から明治時代にかけて建てられた洋風住宅、教会などが良好に残っており、旧居留地の地割りを示す歴史的風致と石垣、石畳、石段、側溝などの土木遺構を今日に伝えている。
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