和銅元年(708)、行基が創建したと伝える和銅寺の本尊。十一面観世音菩薩は、頭部に十一面の顔をあらわしている変化観音の一つである。
本像は、頭部に頂上仏面(ちょうじょうぶつめん)をはじめ変化面(へんげめん)十をつけ、右手は垂下し手のひらを外に向けてわずかに五指を曲げ、左手は蓮華をとって、蓮台に立っている。天衣(てんね)はショールのごとく両肩を覆い、その端は左右の前腰部でたゆみの輪をつくりながら一周し、体側にそって垂れ、蓮(れん)肉(にく)上で止まっている。条帛(じょうはく)・裳(も)は通例のものであるが、裳の上端の折り返しが大きく腰部をおおっている。目鼻立ちがしのぎ立っており、きりっと引き締まった表情をしている。クス材を使用した一木造りで、素木仕上げ。頭部地髪にほどこした群青や宝冠台・臂釧(ひせん)・腕釧(わんせん)・裳の打ち返しの縁取りなどの金泥(きんでい)などは後補である。彫眼で、白毫は水晶製である。両肘部から左右にとびだしたあげまき型の天衣などは別造りである。あげまき型の天衣は鎌倉時代末期ごろからあらわれるもので、体躯の造型や腰部の衣のひだやしわの表現などと考え合わせて室町時代中期頃の作と思われる。保存状態もよく、引締まった容貌や美しい素木仕上げは、県下の十一面観世音像の代表作の一つといえる。総高124.9cm。
大きな地図で見る