万日堂は、江戸時代初期から小値賀を根拠地として鯨組(捕鯨業)等を展開した小田家の、二代目当主・小田伝次兵衛重利(おだでんじべえしげとし)(1671~1724)が自家の私堂として正徳6(1716)年に建立した念仏堂である。記録等により建立年が明確なもので県内に現存する木造建築物としては、五島列島で最古の木造建造物である。幸いにも火災を免れて現代に伝えられ、昭和36(1961)年に小田家から阿弥陀寺に寄進された。方三間の念仏堂であり、堂内全体の空間構成はよく引き締まっていて秀逸である。床は畳を敷き、正面両脇は半蔀(はじとみ)を建て込み、その上半は室内側に吊り上げて開く。中央の須弥壇(しゅみだん)に安置されている阿弥陀仏坐像は、正徳5(1715)年、泉州堺の仏師・村田與三兵衛(よさべえ)の作であることが墨書によって判明している。当初の部材の残存率が高く、内外観とも意匠的・空間的に優れており、建築史上の価値が高い。
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