石志文書は、肥前国松浦荘石志村(現在の佐賀県唐津市)の領主で松浦党の一族である石志家に伝来した家文書である。江戸時代に平戸松浦家の所有となり、現在は財団法人松浦史料館の所蔵となっている。
石志文書は、康永4(1345)年に石志照(いししてらす)が所持していた、正平安時代から南北朝時代までの文書29点を書写した重書案(石志照重書案)であり、巻子1巻にまとまっている。
各文書には文書の原本である正文(しょうもん)と校合した跡があり、正元二(1260)年の「将軍家政所下文案」には一色道猷の、永徳三(1383)年の「石志照軍忠状案」には今川了俊の裏書が残るなど、正文を写した案文(あんもん)ではあるものの、正文と同じ効力を持つ公的保証を得た案文であることが分かっている。
石志文書は、中世の松浦党一族の動向を確認できる史料であるとともに、中世の案文の形態を知るうえで、極めて貴重な史料である。
大きな地図で見る