梅ヶ谷津偕楽園は、平戸島北部東岸にあり、平戸瀬戸に面して立地し、松浦家35代(平戸藩第10代藩主)松浦熈(まつらひろむ)の別邸として建てられた。ここで詩歌や書画に優れた文客と茶の湯等の数寄を楽しんだ様相を随所に窺い知ることができ、建築的価値をさらに高めている。
建築年代が天保10(1839)年と明らかで、往時の様相を現在もよく留めている。
主屋は、南側の海と広大な庭園に臨み、斜面の中腹に石段を築いて建っており、段差を利用した複雑な平面を持つ。
石塀及び石段は、北側の山から下りてくる来訪者の通路としてつくられ、下部は整形した石を表面に揃えて築き、上部はこぶし大の黒石を漆喰で固めて築く技法が見られる。
石垣は、建物真下部分は角の出隅をきっちりと整えて積み、前面東側は自然石を整形してなだらかな曲線を描くように積み、前面西側は大きめの自然石を乱積みする。各種の石積み方法の組み合わせによって、風趣に富んだ景観を造りだしている。
また、稲荷社は庭園の西側に位置し、石造の祠と鳥居からなる。共に年紀が陰刻される等細部まで凝っており秀逸な意匠である。
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