甲子夜話は、江戸時代、平戸藩主であった平戸松浦家34代清(きよし)の随筆で、正編100冊・続編100冊・三編78冊の合計278冊約7,000項目からなる。清(きよし)は学問を奨励した大名として知られ、文化3(1806)年に隠居後は江戸本所の別邸に居住、学芸・風流の生活を送った。江戸幕府の大学頭(だいがくのかみ)林述斎(はやしじゅっさい)から古人の善行や嘉言を記して後世に伝えることを勧められ、文政4(1821)年11月17日甲子の夜に起稿した。ここから「甲子の夜」が書名となり、以来、天保12(1841)年6月に死去するまで書き続けた。清(きよし)の没後13年を経た嘉永6(1853)年にその平戸松浦家35代熈(ひろむ)の念願で副本が作成された。
甲子夜話には、古今の人物の逸話・故実・学問・芸能・民俗・信仰・自然現象・地理、その他狐狸妖怪等々の記述があり、また、極彩色の挿図も数多く描かれており、江戸文学を代表する随筆集と言える。大塩平八郎の乱やシーボルト事件に関する伝聞等の記述も含まれており、近世後期の社会情勢や文化を知る上で貴重な記録である。
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