江戸時代後期に活躍した長崎の絵師・川原慶賀の筆よる長崎の人・永島キクの肖像画。熊本藩士で国学者・歌人である中島広足(なかしまひろたり)(1792~1864)の賛。落款から慶賀75歳の時の作とわかるが、広足賛文の年記が萬延元年(1860)であるので、そこから慶賀の生年が天明6年(1786)であることも知ることができる。慶賀の生年を知る唯一の資料とも言える。本図は長崎で「お絵像」と称される肖像画であるが、そのなかでも優品のひとつに数えられる。慶賀の絵画的特色は写実性にあるが、本図においてもそれを十分にうかがうことができる。賛文に「八十ぢにさへあまりぬるに、さらにおひおひしきけはひもなきは……」とあるが、慶賀は画像においてそれを見事に表現した。細やかな顔面描写による老女の似姿の生き生きとした表現、衣装の帯や襟の群青と襟元、袖口の朱の対比による若々しい雰囲気の描出などに、それを見ることができる。絹本着色。掛幅装。縦97.5cm、横37.3cm。
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