田平天主堂は、長崎県北部、海峡を介して平戸島を西望する位置にある。設計施工は、長崎県を中心に九州地方北部に数多くの教会堂を手がけた本県出身の鉄川与助による。大正6年10月に竣工し、大正7年5月14日に献堂式が行われた。
構造は、煉瓦造及び木造で、正面中央に八角形のドームを頂く鐘塔を付けた重層屋根構成である。
外壁の煉瓦積みの方法は小口積の列を交えた「変形イギリス積」を採用している。教会堂の正面、側面、背面でそれぞれ煉瓦の積み方を変え、基礎のほか軒下の飾りにも小口積を取り入れている。ギザギザ上のロンバルド帯やのこぎり歯状の飾りも使われている。小口積の部分に色の濃い小豆色の煉瓦を使い、色彩の面でもアクセントを付けている。
内部は3廊式で身廊部の立体構成はアーケード、トリフォリウム、クリアストリーを備えた本格的な構成であり、天井は身廊部・側廊部ともに木製の4分割リブ・ヴォールト天井である。
主祭壇背面までトリフォリウムの連続アーチを延ばし、祭壇とのデザイン的な一体化を試みている。
田平天主堂は鉄川与助の煉瓦造教会堂作品の中では最後のもので、外観、内部とも全体的に均整のとれた構成であり、鐘塔を中央に付設した象徴的な正面の構えや、多彩な煉瓦積み手法を駆使した華やかな細部も意匠的に優れており、外観の表情に彩りをも添えている。
平戸瀬戸を見下ろす高台に位置し、教会の周囲には畑地、北側にはキリシタン墓地が広がっている。司祭館をはじめ、門柱、石段、石垣などが当初の状態で残り、周囲の歴史的環境がよく保存されている。
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