紐差地区は、明治以降、キリスト教が解禁となる中、平戸におけるキリスト教布教の拠点となった。その地に立つ紐差教会は、昭和4(1929)年に鉄川与助の設計・施工によって建築された鉄筋コンクリート造の教会である。大正12(1923)年の関東大震災以降、煉瓦造や石造など組構造の教会に代わって鉄筋コンクリート構造による教会がつくられるようになるが、本教会はその初期の作例のひとつである。
外観的な造形は、鉄川が手がけた煉瓦造教会の形態を継承して均整がとれており、内部も列柱の太さや天井高に至るまで空間を構成する各部の寸法がよく考えられ、バランスがとれている。また、保存状態も良好である。
本教会は、長崎県内における昭和初期の鉄筋コンクリート造教会を代表するものであり、鉄川与助による県下唯一の鉄筋コンクリート造教会としても貴重な建造物である。
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