香港上海銀行は、明治29年長崎に支店を開設した。現在の社屋は下田菊太郎の設計によって明治37年に完成した。この支店は昭和6年に閉鎖された後、警察関係の庁舎として用いられ、その後歴史民俗資料館に使用され、保存修理後は記念館として公開されている。建物は煉瓦造3階建であるが、港に面した正面は石造とし、1階部分をアーケードとして出入口を設け、2・3階はコリント式の円柱を通した大オーダーとし、上に切妻破風をあげてデザインをこらしている。内部は1階を業務用、2・3階を居住用として使用した。
1階は正面一間通りをアーケードとし、中央を玄関口にして東側5スパンの営業室の北側から東側に矩折れにカウンターを設け外に面した一間を客溜りとして石敷とした。
2階は中廊下で表裏にわけ、主室4室を配する。表側は左右2室の広い部屋でともにベランダに面している。裏側は階段室と東側に2室が左右に並び、主室には暖炉がつく。
3階も2階とほぼ同じ構成だが表側は中央を廊下とし左右に部屋を配している。
2・3階の用途は明確ではないが2階の表側は建具の引き込み戸の状況より食堂と応接間として使用されていたと思われる。
旧香港上海銀行長崎支店は、下田菊太郎の現存唯一の建築といわれ、規模が大きく、特に海に面する正面は居留地時代の銀行建築として石造りの重厚で端正な意匠を今に伝えている。
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