中国・明代末、万暦38年(1610)、福建省の人、呉(ご)彬(ひん)の筆である。黄檗寺院の崇福寺に所蔵されている。作者の呉彬は字を文中(文仲)といい、生没年は不明である。本図はおそらく福建省の寺院のために制作され、寛永6年(1629)の崇福寺建立後まもなく請来されたものと推測されるが、伝来の経緯を語る資料はない。ただし、本図をもとに描かれた涅槃図二幅が佐賀県に存在し、うち一幅に元禄2年(1689)2月の款記があるため、遅くともそれ以前にもたらされたことは確実である。人物の独特な表情や原色の多用という特色は、日本の画家にも影響を及ぼしていると考えられる。明末の特異な仏涅槃図であり、呉彬の仏画の代表作であるとともに、江戸時代の画壇に与えた明代絵画の影響という点からも注目すべき作品である。寸法は、縦400.2㎝、横208.4㎝で、右下に款記・印章がある。
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