五島八朔鼻は、五島市岐宿町の北端に位置し、地形的には岬の先端にある小島が堆積物によって陸続きとなった、いわゆる陸けい島となっている。その周辺地区を八朔鼻とよび、その地域の海岸は溶岩海岸となっているが、八朔鼻はそれに砂礫が堆積した浜が見られる。したがって狭い地域ながら、福江島で海岸植物が最も多い地区となっている。岬の砂礫が堆積した部分は、海浜植生が発達しているが、土壌が浅いことや、踏みつけの影響などで、シバ群落となっている。踏みつけの弱い部分ではケカモノハシ群落や、砂礫の多い部分はハマゴウ群落となっていたり、ハマオモト群落が発達している。また、高潮線付近には、スナビキソウが点々と生育している。浜の前面の溶岩海岸は凹んだ部分にわずかな土壌が堆積し、海水や雨水などがたまり、潮溜まり状の塩湿地となっている。そこにはシオクグ群集、アイアシ群集、ハマサジ群集などの塩性植生が見られる。背後の海岸低木林は、ハマビワ-オニヤブソテツ群集が広い面積に渡って発達し、崖地はダルマギク-ホソバワダン群集、ハマホラシノブ群落、また海岸林の縁にはノアサガオが見られる。
(価値)狭い範囲に長崎県に産する海岸植物の約3分の1が生育するという、きわめて海岸植物が豊富な場所である。海岸植物の中にはレッドデータブックに記載されているスナビキソウ、ハマサジ、ゲンカイミミナグサが生育している。また、対馬暖流によって運ばれる南方系種子も発芽しており、グンバヒルガオも毎年見られる。
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