本図は明治2年(1869)にパリ外国宣教会のプチジャン神父(1829~84)がマニラで発見し、ローマ法王に献上したが、日本に置くべきものとして大浦天主堂に移されたものである。かなり破損しているが、図様は知ることができる。画面下部に、「1596 In Sep Jap Ariya」と、有家で慶長元年(1596)に刊行されたという記銘がある。柔らかな刻線、微妙な明から暗へのトーンの表現など非常に技巧的である。本図の原図は天正12年(1584)刊のマルタン・ド・ヴォス原図、サドレル彫版の版画で、それを逆版として写している。聖アンナ聖母子のみが中央を占めているが、1584年刊原図の左後方に小さくヨセフの大工姿が認められるところから、「聖家族」としての図像の性格を有するものである。
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