玉之浦町矢ノ口は荒川湾奥に位置し、ヘゴ自生地は南向きの渓流のほとりにある。この指定地は、明治39(1906)年、五島列島で初めて田代善太郎によって発見されたところである。田代によると、海岸から300mほど入った標高100m以上のところで、幅6m、延長200mないし300mにわたってヤブニッケイ・ヤブツバキ・ネズミモチなどの茂る中に大小76本を数えたという。現在、環境の変化で、その存在があやぶまれている。増田町二里木場の指定地は、大正10(1921)年に県書記の内山芳郎が発見した。内山によると、海岸から2㎞、標高100m附近を中心に、渓流のほとりでヤブツバキ・シキミなどが茂る中に、高さ5mばかりのヘゴの成木と幼木合わせて20本ばかりがあり、附近にアオノクマタケランやヤマコンニャクも見られたという。ところが、現在は成木にまで成長しているものはなく、幼木が10本程ある程度である。附近にはヒロハノコギリシダ・リュウビンタイ・ケホシダなどがある。熱帯性のシダ植物であるヘゴの自生北限地帯として価値が高い。なお、『へご自生北限地帯』における指定地は複数都県にまたがっており、五島市以外には、東京都八丈島八丈町、鹿児島県肝属郡南大隅町・肝付町、南さつま市、薩摩川内市里町・上甑町・下甑町、宮崎県日南市に指定地がある。
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