本図は、文禄慶長の役に出征した平戸松浦家26代鎮信(しげのぶ)が朝鮮から請来し、のち松浦宗静が平戸談議所(最教寺)に寄進したものであることが、古い軸木や箱書の銘によって判明している。高麗仏画の精緻さにくらべ、やや簡略な描法がみられるため、李朝中期(16世紀中葉)の作品と考えられる。図様は涅槃の場面を中央に大きく描き、その周囲に釈迦の入滅前後の説話を細かに描き加えて、説話性の強い涅槃図としている。構図的にも、上部は涅槃直前の出来事、下部は涅槃以後の説話と対比して描くなどの工夫がみられる。日本と朝鮮の涅槃図の交渉展開を知る上に貴重な作品といえる。
大きな地図で見る