本建物は明治32(1899)年に長崎税関口之津支署庁舎として建築されたもので、明治後期の大型木造洋館で、全国的に数少ない税関庁舎の遺構である。
建物は長方形平面の平屋建てで、屋根は寄棟造りの桟瓦葺き、外壁は下見板張りで四隅と出入り口両脇の柱を露出する。
平面は中央より東側に寄せて中廊下を通し、西側には大きな検査場、事務室の2室を置き、東側に湯沸所、小使詰所、T形の廊下を介して休憩室、応接所を並べる単純で機能的な構成である。
意匠的にも、外観では浅い軒裏木製の蛇腹とすること、全て単一な同形状の上げ下げ窓の上部にくり型のついた楣状の木製庇を付すこと、出入り口上部の付庇の軒下にバージ(切り抜き板飾り)を取り付けた装飾がなされている。
全体的には簡素な造りながら木割が太く堂々とした造形で明治時代の税関建物の特徴をよく伝えている貴重な遺構である。
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