肥前島原松平文庫は松平島原藩に由来する古書籍や地図・絵図類であり、その来歴は松平島原藩初代の忠房に収集にかかるものまで遡及できる。古書籍類は、寛政5年(1793)に藩校「稽古館」が設立されると、藩校の教科書として活用されたと言われている。廃藩置県後は、「松平文庫」と銘打たれ、城西の一隅の松平家管理事務所に保管されていた。戦後、松平家から島原市へ寄贈の申し出があり、昭和39年(1964)に島原城天守閣復元を記念して、松平家から島原市に正式に寄贈された。現在は、島原図書館の2階に収蔵庫を設置し管理している。
肥前島原松平文庫の構成は、文学・歴史・宗教・政治・経済・教育・風俗・自然科学・医学・産業・芸術と多岐にわたる。その中には貴重本を含み、文学書では、日本で唯一の伝本である「伊勢物語聞書抄」や、最古の写本の一つである「夜寝覚」などがある。また、歴史資料でも、甲斐武田氏の分国法の写本である「甲州式目」は、最古の写本として知られている。そのほか、色彩豊かに描かれる「鳥獣図鑑」は、島原藩の本草学の成果を示すものである。
肥前島原松平文庫は、質・量ともに充実しており、きわめて貴重な資料であるといえる。また、島原図書館の収蔵庫において管理し、肥前島原松平文庫の理解を深めるための公開活用が可能である。
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