障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例 令和6年度活動報告書 令和7年6月 長崎県福祉保健部障害福祉課 はじめに 本県では、障害のあるなしにかかわらず、誰もが社会を構成する一員として、あらゆる社会活動に参加できる共生社会の実現を目指して、障害のある人に対する差別を禁止し、差別をなくすための施策を推進するための事項を定めた、 「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」を制定しています。 この報告書は、条例全面施行から11年目にあたる令和6年度、1年間の相談活動実績をまとめたものです。 相談窓口にどのような相談が寄せられ、問題の解消のために何が求められているのかを県民の皆様に知っていただくことで、障害のある人に対する差別をなくし、共生社会を実現するためにできることは 何なのか考えていただくきっかけになればと思います。   目次 T 条例の仕組み 1 条例の目的 2 障害のある人とは 3 差別の禁止 4 相談体制 5 問題解決のための調整機関 6 問題解決までの流れ U 相談活動の実績 1 相談者 2 相談方法 3 相談分類 4 相談分野 5 対応方法 6 活動回数と活動期間 7 連携 8 圏域別の相談件数 V 相談事例 W 障害理解・啓発活動 T 条例の仕組み                                   1  条例の目的 この条例は、障害や障害のある人に対する県民の理解を深め、障害のあるなしにかかわらず、誰もがあらゆる社会活動に参加できる共生社会の実現を目指しています。   2 障害のある人とは 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病を原因とする障害など心身の機能の障害があり、これらの障害と社会的障壁によって、継続的又は断続的に日常生活や社会生活に 相当な制限を受ける状態にある人を「障害のある人」と規定しています。            3 差別の禁止 不均等待遇を行うこと 不均等待遇とは、障害や障害に関することを理由として、区別、排除、制限したり、条件を課すなど、障害のない人と異なる取扱いをすることです。特別な事情がないのに不均等待遇を行うことは差別に当たります。 合理的配慮を怠ること 合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と同等に権利を行使したり、同等の機会や待遇を受けるために必要な現状の変更や調整を過度な負担が生じない範囲で行うことです。障害のある人の求めがあった場合に、 特別な事情がないのに合理的配慮を怠ることは差別に当たります。 4 相談体制 差別に関する相談窓口として、各市町に地域相談員を158名(令和7年3月31日現在)、長崎県障害福祉課内に広域専門相談員を2名配置しています。相談を受けた地域相談員と広域専門相談員は、当事者それぞれの話を 十分に聴き、問題解決に向けて取扱方針を決定し、その方針に基づき連携して対応します。地域相談員は、各市町が委嘱している身体障害者相談員・知的障害者相談員・精神保健福祉相談員で承諾が得られた方に委託しています。 地域相談員の内訳(令和7年3月31日現在) 長崎市10名(身体4名、知的4名、精神2名) 佐世保市17名(身体13名、知的4名) 島原市4名(身体1名、知的3名) 諫早市6名(身体3名、知的2名、精神1名) 大村市7名(身体3名、知的2名、精神2名) 平戸市7名(身体3名、知的4名) 松浦市11名(身体8名、知的3名) 対馬市9名(身体4名、知的5名) 壱岐市9名(身体6名、知的3名) 五島市13名(身体9名、知的4名) 西海市12名(身体8名、知的4名) 雲仙市8名(身体4名、知的4名) 南島原市16名(身体9名、知的5名、精神2名) 長与町7名(身体5名、知的2名) 時津町3名(身体2名、知的1名) 東彼杵町3名(身体2名、知的1名) 川棚町4名(障害区分なし) 波佐見町3名(身体2名、知的1名) 小値賀町0名 佐々町2名(身体1名、知的1名) 新上五島町7名(身体3名、知的3名、精神1名) 相談員数計158名(身体障害者相談員90名、知的障害者相談員56名、精神障害者相談員8名) 5 問題解決のための調整機関 地域相談員や広域専門相談員による問題解決が困難な場合は、障害のある人やその関係者からの申し立てにより、「障害のある人の相談に関する調整委員会」(以下、「調整委員会」という。)が助言やあっせんを行います。調整委員会は、申立てのあった事案について専門的な見地から公正・中立な判断をし、当事者双方の事情や意見を検証して、解決に向けた助言やあっせんを行います。 6 問題解決までの流れ 差別に関する問題が発生したら、県の相談窓口である地域相談員又は広域専門相談員が相談を受け付けます。相談員が調査や調整等を行い問題の解決を図ります。相談員による解決が困難な場合は、申立てにより調整委員会による助言・あっせんを行い解決を図ります。特に悪質な差別があったと思われる事案を解決するための手段として、知事による勧告・公表を用意しています。 U 相談活動の実績                                 1 相談者 相談者と障害区分 (本人)肢体不自由3件、視覚障害4件、聴覚障害1件、知的障害1件、精神障害6件、難病1件、その他2名、不明1件、計19件 (家族)難病1件、計1件 (支援関係者)視覚障害1件、計1件 (友人・知人)肢体不自由1件、計1件 (その他)肢体不自由1件、視覚障害1件、聴覚障害1件、精神障害1件、発達障害1件、不明5件、計10件 (計)肢体不自由5件、視覚障害6件、聴覚障害2件、内部障害0件、知的障害1件、精神障害7件、発達障害1件、難病2件、その他2件、不明6件、計32件 ※区分については、相談者に確認して分類しています。 相談者は、障害のある「本人」が19件(60%)と最も多くなっています。次いで、「家族」、「支援関係者」、「友人・知人」が各1件(3%)でした。「その他」の10件(31%)は、行政職員と事業者からの相談でした。 障害区分では、「肢体不自由」5件、「視覚障害」6件、「聴覚障害」2件を合計した「身体障害者」が13件と最も多く、次いで「精神障害」が7件、「難病」が2件、「知的障害」、「発達障害」が各1件、「その他」、「不明」の8件は、障害全般に関わる相談でした。 2 相談方法 障害のある人に対する差別に関する相談は、電話、面談、手紙、ファックス、メールにより受理しています。相談は、障害の特性や状況に合わせて相談者が伝えやすい手段でできるようにしていますが、電話による相談が25件と大半を占めています。 受付時の相談方法 電話25件、面談4件、手紙0件、ファックス1件、メール2件、計32件 3 相談分類 令和6年度、1年間に相談窓口に寄せられた相談は32件でした。結果として、不均等待遇や合理的配慮の欠如に該当する相談は1件でした。調整委員会への申立てが行われた事案は、ありませんでした。 相談分類別の件数 主訴として、不均等待遇9件、合理的配慮の欠如3件、不適切な行為0件、不快・不満6件、意見・要望1件、問い合わせ13件、傾聴事案0件、計32件でした。結果として、不均等待遇1件、合理的配慮の欠如0件、不適切な行為0件、不快・不満9件、意見・要望1件、問い合わせ13件、傾聴事案8件、計32件でした。 ※相談分類項目の定義 「不適切な行為」条例の不均等待遇、合理的配慮の欠如には該当しないが、差別的・不適切な行為があったと考えられるもの。 「不快・不満」差別や不適切な行為があったとは判断できないが、相談者が差別と捉えて不快・不満の訴えをしているもの。 「意見・要望」条例や福祉制度、県への意見や要望に類するもの。 「問い合わせ」条例や福祉制度、合理的配慮の対応方法に関する問い合わせやリーフレットの提供依頼など。 「傾聴事案」相談者自身の気持ちを聞いてもらいたいというものや、対応不要の意思表示があったもの。 相談分類と障害区分 受付時の主訴 (不均等待遇)肢体不自由3件、知的障害1件、精神障害3件、難病1件、不明1件、計9件 (合理的配慮の欠如)視覚障害3件 (不適切な行為)0件 (不快・不満)視覚障害2件、精神障害3件、その他1件、計6件 (意見・要望)聴覚障害1件 (問い合わせ)肢体不自由2件、視覚障害1件、聴覚障害1件、精神障害1件、発達障害1件、難病1件、その他1件、不明5件、計13件 (傾聴事案) 0件  (計)肢体不自由5件、視覚障害6件、聴覚障害2件、内部障害0件、知的障害1件、精神障害7件、発達障害1件、難病2件、その他2件、不明6件、計32件 結果 (不均等待遇)肢体不自由1件 (合理的配慮の欠如)0件 (不適切な行為)0件 (不快・不満)肢体不自由1件、視覚障害4件、精神障害3件、その他1件、計9件 (意見・要望)聴覚障害1件 (問い合わせ)肢体不自由2件、視覚障害者1件、聴覚障害1件、精神障害1件、発達障害1件、難病1件、その他1件、不明5件、計13件 (傾聴事案)肢体不自由1件、視覚障害1件、知的障害1件、精神障害3件、難病1件、不明1件、計8件 (計)肢体不自由5件、視覚障害者6件、聴覚障害2件、内部障害0件、知的障害1件、精神障害7件、発達障害1件、難病2件、その他2件、不明6件、計32件 主訴として「差別に関する相談(特定相談)」で、「不均等待遇」に分類される相談は、障害区分の「肢体不自由」で3件、「知的障害」で1件、「精神障害」で3件、「難病」、「不明」でで各1件の計9件ありました。 「合理的配慮の欠如」に分類される相談は「視覚障害」で3件でした。 事実確認などの結果としては、「問い合わせ」が13件と最も多く、「不快・不満」9件、「傾聴事案」8件、「不均等待遇」「意見・要望」が各1件でした。 4 相談分野 条例では、日常生活や社会生活での10の個別分野における差別行為の禁止を特に定めています。 (差別の禁止が規定されている10の個別分野) 福祉サービスの提供、医療の提供、商品及びサービスの提供、労働及び雇用、教育、建築物の利用、交通機関の利用、不動産取引、情報の提供等、意思表示の受領 相談分野と障害区分は、主訴が「不均等待遇」・「合理的配慮の欠如」の「差別に関する相談(特定相談)」の12件を相談の分野で分類したものです。 相談分野と障害区分 (福祉サービスの提供)精神障害1件 (医療の提供)知的障害1件、精神障害1件、計2件 (商品及びサービスの提供)肢体不自由2件、視覚障害1件、計3件 (労働・雇用)精神障害1件 (教育)その他)0件 (建築物の利用)0件 (交通機関の利用)肢体不自由1件、不明1件、計2件 (不動産取引)計0件 (情報の提供等)視覚障害2件 (意思表示の受領)0件 (その他)難病1件 (計)肢体不自由3件、視覚障害3件、聴覚障害0件、内部障害0件、知的障害1件、精神障害3件、発達障害0件、難病1件、その他0件、不明1件、計12件 10分野別の相談件数 福祉サービスの提供1件、医療の提供2件、商品及びサービスの提供3件、労働及び雇用1件、教育0件、建築物の利用0件、交通機関の利用2件、不動産取引0件、情報の提供等2件、意思表示の受領0件、その他1件、計12件。 障害区分ごとに、どのような分野の相談があったかをみると、障害区分の「肢体不自由」がある人からの相談3件は、「商品及びサービスの提供」が2件、「交通機関の利用」が1件でした。「視覚障害」がある人からの相談3件は、 「商品及びサービスの提供」が1件、「情報の提供等」が2件でした。「知的障害」がある人からの相談1件は、「医療の提供でした。「精神障害」のある人からの相談3件は、「福祉サービスの提供」「医療の提供」、「労働及び雇用」が各1件でした。 「難病」のある人からの相談は、私人間の問題によるものでした。「障害の有無が不明な方」からの1件は、「交通機関の利用」でした。 10分野の分野別の相談件数をみると、「商品及びサービスの提供」の分野が3件で最も多く、「医療の提供」、「交通機関の利用」、「情報の提供」が各2件、「労働及び雇用」「その他」が各1件となっています。 5 対応方法 対応と相談分野 主訴が「不均等待遇」・「合理的配慮の欠如」の「差別に関する相談(特定相談)」の12件の対応を相談分野別に分類したものです。 (相手方との調整)商品及びサービスの提供1件 (事実確認等)福祉サービスの提供1件、商品及びサービスの提供1件、労働及び雇用1件、交通機関の利用1件、情報の提供等1件、計5件 (関係機関引き継ぎ)0件 (助言)情報の提供1件 (意見・要望の伝達)0件 (相談窓口の紹介)0件 (情報提供・資料送付)0件 (傾聴主体)医療の提供2件、商品及びサービスの提供1件、交通機関の利用1件、その他1件、計5件 (計)(福祉サービスの提供1件、医療の提供2件、商品及びサービスの提供3件、労働及び雇用1件、教育0件、建築物の利用0件、交通機関の利用2件、不動産取引0件、情報の提供等2件、意思表示の受領0件、その他1件、計12件  差別に関する相談についての対応は、全体として「事実確認等」が5件、「相手方との調整」、「助言」が各1件、「傾聴主体」が5件した。 「相手方との調整」を行った相談分野は「商品及びサービスの提供」1件で、「事実確認等」は「福祉サービスの提供」、「商品及びサービスの提供」、「労働及び雇用」、「交通機関の利用」、「情報の提供」が各1件でした。 対応と相談分類(結果)の関係 次の表は、相談に対する対応状況について、相談分類と対応の関係を表したものです。相談者の同意に基づき、相手方や関係者から聴き取り調査を行い、双方の意向を確認した後に条例における対応方針を決定し、調整や対応を行っています。 (相手方との調整)不均等待遇1件 (事実確認等)不快・不満7件 (関係機関引継ぎ)0件 (助言)不快・不満1件、問い合わせ6件、計7件 (意見・要望の伝達)0件 (相談窓口の紹介)不快・不満1件、問い合わせ4件、傾聴事案1件、計6件 (情報提供・資料送付)問い合わせ3件 (傾聴主体)意見・要望1件、傾聴事案7件、計8件 (計)不均等待遇1件、合理的配慮の欠如0件、不適切な行為0件、不快・不満9件、意見・要望1件、問い合わせ13件、傾聴事案8件、計32件 「問い合わせ」13件についての対応は、「助言」が6件、「相談窓口の紹介」が4件、「情報提供・資料送付」が3件でした。「不快・不満」9件についての対応は、「事実確認等」が7件、「助言」、「相談窓口の紹介」が各1件でした。 「傾聴事案」8件についての対応は、「傾聴主体」が7件、「相談窓口の紹介」が1件でした。「不均等待遇」1件についての対応は、「相手方との調整」で、「意見・要望」1件についての対応は、「傾聴主体」でした。 6 活動回数と活動期間 対応ごとの活動回数 (相手方との調整)1件、活動回数4回、平均回数4.0回 (事実確認等)7件、活動回数37回、平均回数5.3回      (関係機関引継ぎ)0件、活動回数0回、平均回数0.0回 (助言)7件、活動回数18回、平均回数2.6回 (意見・要望の伝達)0件、活動回数0回、平均回数0.0回 (相談窓口の紹介)6件、活動回数18回、平均回数3.0回 (情報提供・資料送付)3件、活動回数7回、平均回数2.3回 (傾聴主体)8件、活動回数12回、平均回数1.5回 (合計)32件、活動回数96回、平均回数3.0回 活動回数(対応回数)は、事案や対応方法によって大きな差がありますが、平均すると3回となりました。 「事実確認等」の対応は、複数の機関と連携して対応にあたることが必要なため活動回数(対応回数)が多い傾向がありました。また、相談件数は昨年度(28件)より4件増加でした。 相談受付から解決までの活動期間については、相談を受けた当日に解決したものが21件と最も多く、2日間が4件、3日間が1件、6日間が3件、8日間が1件、29日間が1件、71日間が1件でした。 7 連携 他機関との連携 問題解決のために、必要な場合には、他の機関等と連携を図って対応を行っています。対応をしていく中で、他機関等と連携し解決に至った件数は、 9件でした。  主な連携先は、県の担当課や、国・県・市町の関係機関です。複数の機関と連携を図った事案もありました。 地域相談員との連携 相談活動 地域相談員が「差別に関する相談」を受けた際は、広域専門相談員と連携して問題の解決を図っています。地域相談員が相談を受けて、広域専門相談員が対応を引き継いだ相談は1件、地域相談員からの紹介で広域専門相談員が対応した事案は2件でした。 地域相談員研修会 令和5年度から令和7年度にかけ、全圏域で地域相談員研修会を予定しています。令和6年度は、県内2地区(長崎・西彼地区、対馬地区)で2回の研修会を開催しました。 令和7年度は、県央地区、壱岐地区で研修会を開催する予定です 相談員通信 地域相談員と広域専門相談員の連携の一助として、相談員通信を年に年1回発行しています。内容は、地域相談員研修会の様子、 トピックスとして、改正障害者差別解消法で事業者への合理的配慮の提供が義務化されたこと、建設的対話の具体例を用いて、合理的配慮の提供に関しての説明を行いました。 8 圏域別の相談件数 相談者の居住地域を障害保健福祉圏域(10圏域)で分類しています。 圏域別相談件数 長崎圏域8件、西彼圏域3件、県央圏域6件、佐世保圏域1件、県北圏域0件、県南圏域6件、五島圏域0件、上五島圏域0件、壱岐圏域0件、対馬圏域0件、県外3件、不明5件、合計32件 圏域別の相談件数については、「長崎圏域」が8件と最も多く、「県央圏域」、「県南圏域」が6件、「西彼圏域」が3件、「佐世保圏域」が1件、「県外」が3件、不明が5件でした。 V 相談事例 寄せられた相談について、個人情報保護の観点から、内容を一部変更するなど再構成をしたうえで、事例として掲載しています。 1 商品及びサービスの提供  公共交通機関の車両基地見学について 相談者:身体障害のあるAさん 普段立ち入ることができない公共交通機関の車両基地内見学会に、身体障害のある友人達と参加しようと考えているのですが、申込みの同意書に「車椅子及びベビーカー等は、 安全の理由から使用いただけません」という記載がありました。 車椅子の友人が「これは自分は参加できないということだろうか」と非常に残念に思っています。 車両基地は作業場なので安全面を考慮してのことでしょうが、車椅子の友人も参加できるようみんなで協力しようと話し合っています。どうにか一緒に参加することはできないでしょうか。 (対応と結果) 車両基地へ車椅子利用者の見学について確認すると、車両基地内は、車椅子を利用して見学できるような設備は整っておらず、また、車両もかなりの高さがあるため危険性がある箇所もあり、 同意書にはやむを得ずそのような文面を記載しているということが分かりました。しかし、車椅子利用者は、天候やその時の車両の運用状況によって、見学の場所を制限したり全部のコースを 見学できない場合もありますが、事前に相談すれば、可能な限り見学ができるということでした。その旨をAさんに報告すると、「分かりました。早速申込みを行ってみます」と返答があり、 その後、Aさんは車椅子の友人と一緒に、車両基地の見学をすることができました。 (広域専門相談員から) 見学会申込みの同意書の「車椅子及びベビーカー等は、安全の理由から使用いただけません」という記載からだけでは、障害のない人との比較において同等の機会の提供を受けることが できないと受け止められてしまいます。 車両基地側は、相談すれば可能な限り対応するという意思はあるものの、障害のある人に正しく伝わらないことから、障害のある人は「差別されている」と感じてしまいます。 本件の場合では、「車椅子の方は事前にご相談ください」等の記載をする必要があると思われます。差別する意図がなくても、障害のある人が「差別されている」と感じることがない  よう、丁寧で細やかな情報発信が必要と考えます。 2 労働及び雇用 採用試験において、障害のある人への合理的配慮の提供について 相談者談者 行政職員Bさん 職員採用試験において、発達障害のある人が、作文試験時に瞬時に漢字を書くことが難しいためパソコンの持ち込みを希望されました。 事務局としては、全ての受験者に対しての平等性と不正行為等の観点から、パソコンの使用は難しいと考えています。 そこで代替案として、障害当事者はひらがなで字を書くことはできるため「作文の文字数を増やす、書きやすいよう原稿用紙を拡大する、 試験時間を延長する」等の提案ができたらと考えています。 やむを得ずパソコンを利用することになった場合は、医師からの意見書・診断書の提出を依頼しようと考えていますが、その方向で良いでしょうか。 その他に、視覚障害のある人から申し出があり、試験問題を点字訳に準備を進めています。 (対応と結果) 合理的配慮の提供に当たっては、障害のある人とよく話し合って決定することが求められるため、採用試験時の配慮として障害のある人からの申し出が難しいと判断した場合は、 難しい理由を丁寧に説明し、事務局で提供可能な代替案を提案しながら両者で良く話し合ってみることを助言しました。また、やむを得ずパソコンの使用となる場合は、 立ち合いの職員を配置したり、医師からの意見書・診断書の提出などを条件付けることは、差し支えないのではということを助言しました。 その後、事務局と障害のある受験者とで話し合いが行われ、事務局が提案した代替案で、採用試験が行われました。 (広域専門相談員から) 今回の事例は、行政機関の採用試験において、障害のある人から申し出のあった方法での対応が難しいと判断したため、その方へ、その理由を説明し、代替案について 提案すると共に、双方で話し合いを行い、お互いの納得の行く方法で採用試験が行われたという好事例に当たります。 この他、民間事業者から採用試験時における、手話通訳の設置方法等についてお問い合わせの事例がありました。令和6年4月に改正障害者差別解消法が施行され、 県条例だけでなく法律上においても民間事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。民間事業者においても、合理的配慮を提供するための 環境整備に関して、積極的に取り組もうとする姿勢が窺えました。 3 不動産取引 障害を理由に賃貸契約ができなかった 相談者:精神障害のあるCさんから相談を受けた市役所の障害者担当者(以下「障害担当者」という) Cさんは、不動産会社に精神障害があることを伝えた上で、入居可能な物件を紹介してもらい、申込みを行いました。後日、不動産会社の担当者から、希望物件の大家さんから 「入居は難しいので申込みをしないでほしい」と連絡がありました。 Cさんは、これは障害を理由とした差別にあたるのではないかと思い、市役所に相談に来られました。今後、Cさんは、障害のある人への差別であれば、不動産を 注意してほしいと言っています。今後、どのような対応を行っていけばいいのでしょうか。 (対応と結果) 障害担当者へ、障害を理由とした差別の問題と判断するには、一方だけの主張 だけで判断するのは難しいことを伝えました。Cさんが、相手側との調整を求めるのであれば不動産会社へ事実確認を行い、もし、障害を理由とする差別の問題が 確認できた場合は、不動産会社・大家さんに対して、障害や障害のある人への理解、条例の周知を行い、適切な配慮や対応をお願いするよう助言しました。 後日、障害担当者が不動産会社を訪問し、事実確認をした結果、大家さんが言う「難しい」というのは、障害を理由にしたものではなく、収入の面で判断したということが 分かりました。障害担当者は、不動産会社へ国土交通省のガイドライン等を提示しながら、不当な取扱いがないよう障害のある人への対応について、配慮を依頼しました。 (広域専門相談員から) 条例では、特別な事情がなく、障害を理由として、不動産の売買や賃貸を拒んだり、制限したり、条件を付けることは差別にあたると規定しています。 障害のある人へ、正当な手順による審査の結果入居を断るという場合であっても、障害のある人への差別と誤解されないよう、入居審査がきちんと行われたこと等を 納得のいくよう伝えることが大切です。 また、入居の相談の際、お客さまから障害があると申し出られた場合、不動産会社・大家さんは差支えのない範囲で障害の特性をお聞きし、必要な合理的配慮を提供する 必要があると考えます。 相談対応等に際しては、まず相談者として一番身近な市町が基本的な窓口の役割となり、県は対応困難な事案など求めに応じて助言や情報提供を行い、必要に応じて 連携を図りながら、相談活動に取組んでいきたいと考えます。 4 その他 他人の心ない発言について 相談者 難病のあるDさん 私はいつもヘルプマークを付けていますが、避難所や公民館を利用した時、他の利用者から心ない発言を受けたり、障害のある人に対する差別ではないかと思うことがあり、 とても悲しい気持ちになります。 もっと障害者への理解が深まってほしいです。 (対応と結果) 県の条例では社会的枠組みが介在しない私人間の問題は、調整の求めがあっても傾聴にとどめることを基本方針としています。Dさんが受けている発言は非常に 残念なことですが、条例での対応は難しいことを説明し、傾聴主体の対応をしました。 Dさんは、「話を聞いてもらえたことで、気持ちが楽になりました」と言い、相談は終了しました。 (広域専門相談員から) 相手の心ない言葉や対応に傷つき、辛い思いをしたという相談は、他にも多数寄せられています。他人の何気ない発言や行動が、障害のある人にとっては、大変な 心理的負担になる場合があります。 相手側との調整を希望される方もいらっしゃいますが、「話を聞いてほしかっただけです」と、安心した様子で電話を切られる方もいらっしゃいます。広域専門相談員は、 相談者の気持ちに寄り添いながら、必要に応じて、情報提供や助言、関連する相談窓口の紹介等を行っています。 障害のある人が地域の中で安心して暮らしていくには、一人ひとりの障害や障害のある人に対する理解を深めていくことが大切です。障害の有無にかかわらず、 すべての人がお互いを大切にし、共に支え合いながら、安心して生活したり働くことができる「共生社会」を作っていくため、条例の周知とともに障害や障害のある人に 対する理解を深めていく取組を行っていきたいと思います。 W.障害理解・啓発活動                                  1.地域相談員研修会 県内2地区(長崎会場、対馬会場)で、地域相談員研修会を開催しました。研修会の前半は、県条例について理解を深め、後半は、日常生活や社会生活の場面ごとに、差別事案の対応を検討しました。 グループワークでは、障害のある人が暮らしやすい社会や街を作るために、私たちはどのように行動したら良いのか意見を交換し合い、参加者同士の交流を深める機会となりました。   2.「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」認知度調査 ながさきWEBアンケート全モニター349名を対象に、「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」の認知度調査を実施し、結果を県ホームページに 掲載しました。 その中から、「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」の認知度は約3割程度、「合理的配慮」の認知度は約6割程度の結果となりました。        3.心の輪を広げる障害者理解促進事業 県では、毎年12月3日から9日までの『障害者週間』に合わせ、障害のある人とない人が共に生きる社会の構築を目指し、内閣府との共催事業として、「心の輪を広げる 体験作文」と「障害者週間のポスター」の募集を行っています。令和6年度は、作文部門で60編、ポスター部門で59点の応募をいただき、その中から入賞作品を収録した作品集を作成し、 県内の小・中・高等学校や行政機関、福祉団体、障害者施設などに広く配布を行いました。 また、長崎県「障害者週間のポスター」中学生部門で最優秀賞を受賞した作品が、内閣総理大臣表彰を受賞し、「障害者週間」広報ポスターとして、 『障害者週間』を中心に全国各地で掲載されました。 4.障害者理解促進に向けた関係団体と事業者との意見交換会  障害や障害のある人への理解を深めるため、関係団体と事業者が建設的な意見交換を通じて交流を深め、相互に相談できる関係性を築いていく機会を目的とし、 障害者関係団体と民間事業者との意見交換会を行いました。 当日は、約26名の方に参加いただき、皆さまとの意見交流を通し、双方の立場や理解が深まる機会となり、今後の関係性の構築に繋がる有意義な意見交換会となりました。 5.障害のある人もない人も共に生きる社会の実現を目指すための街頭キャンペーン 令和6年12月に、「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」に基づき、県民の皆様に障害及び障害のある人に関する理解を深めていただくため、 長崎市浜の町アーケードにおいて、街頭キャンペーンを実施しました。県議会議員・障害者関係団体・県福祉保健部が参加し、多くの道行く人々に条例リーフレット・ウエットティッシュ等を配布しました。 おわりに 本県では、平成26年4月1日に「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」を施行し、条例施行後10年目となる令和5年度は、前年度の活動経験も踏まえ、 相談活動や条例の普及啓発に努めてきました。 国においては、平成28年4月1日から「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、障害者差別解消法)」が施行され、その後、令和3年5月1日に「障害者差別解消法」の 一部を改正する法律が成立し、令和6年4月1日にこの法律が施行されました。 この改正法では、障害を理由とする差別の解消の一層の推進を図るため、事業者に対して社会的障壁の除去実施について必要かつ合理的配慮することを義務づけるとともに、 行政機関相互の連携強化を図るほか、障害を理由とする差別を解消するための 支援措置を講ずることとされています。 本県の条例もこの法律も、全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指しています。 今後も相談制度の適切な運営を図るとともに、法律と併せて、条例の更なる普及啓発に努めてまいります。 相談・問合せ先 長崎県福祉保健部障害福祉課 広域専門相談員   〒850-8570 長崎市尾上町3-1 電話 (095)895-2450 ファックス (095)823−5082 メール 相談内容の入力フォームをホームページ内に掲載