障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例 令和4年度活動報告書 令和5年6月 長崎県福祉保健部障害福祉課 はじめに 本県では、障害のあるなしにかかわらず、誰もが社会を構成する一員として、あらゆる社会活動に参加できる共生社会の実現を目指して、障害のある人に対する差別を禁止し、差別をなくすための施策を推進するための事項を定めた、 「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」を制定しています。 この報告書は、条例全面施行から9年目にあたる令和4年度、1年間の相談活動実績をまとめたものです。 相談窓口にどのような相談が寄せられ、問題の解消のために何が求められているのかを県民の皆様に知っていただくことで、障害のある人に対する差別をなくし、共生社会を実現するためにできることは 何なのか考えていただくきっかけになればと思います。   目次 T 条例の仕組み 1 条例の目的 2 障害のある人とは 3 差別の禁止 4 相談体制 5 問題解決のための調整機関 6 問題解決までの流れ U 相談活動の実績 1 相談者 2 相談方法 3 相談分類 4 相談分野 5 対応方法 6 活動回数と活動期間 7 連携 8 圏域別の相談件数 V 相談事例 W 障害理解・啓発活動 T 条例の仕組み                                   1  条例の目的 この条例は、障害や障害のある人に対する県民の理解を深め、障害のあるなしにかかわらず、誰もがあらゆる社会活動に参加できる共生社会の実現を目指しています。   2 障害のある人とは 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病を原因とする障害など心身の機能の障害があり、これらの障害と社会的障壁によって、継続的又は断続的に日常生活や社会生活に相当な制限を受ける状態にある人を 「障害のある人」と規定しています。            3 差別の禁止 不均等待遇を行うこと 不均等待遇とは、障害や障害に関することを理由として、区別、排除、制限したり、条件を課すなど、障害のない人と異なる取扱いをすることです。特別な事情がないのに不均等待遇を行うことは差別に当たります。 合理的配慮を怠ること 合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と同等に権利を行使したり、同等の機会や待遇を受けるために必要な現状の変更や調整を過度な負担が生じない範囲で行うことです。障害のある人の求めがあった場合に、 特別な事情がないのに合理的配慮を怠ることは差別に当たります。 4 相談体制 差別に関する相談窓口として、各市町に地域相談員を171名(令和5年3月31日現在)、長崎県障害福祉課内に広域専門相談員を2名配置しています。相談を受けた地域相談員と広域専門相談員は、当事者それぞれの話を 十分に聴き、問題解決に向けて取扱方針を決定し、その方針に基づき連携して対応します。地域相談員は、各市町が委嘱している身体障害者相談員・知的障害者相談員・精神保健福祉相談員で承諾が得られた方に委託しています。 地域相談員の内訳(令和5年3月31日現在) 長崎市10名(身体6名、知的4名) 佐世保市17名(身体13名、知的4名) 島原市4名(身体1名、知的3名) 諫早市11名(身体6名、知的3名、精神2名) 大村市7名(身体3名、知的2名、精神2名) 平戸市7名(身体3名、知的4名) 松浦市11名(身体8名、知的3名) 対馬市9名(身体4名、知的5名) 壱岐市10名(身体7名、知的3名) 五島市15名(身体9名、知的5名、精神1名) 西海市10名(身体6名、知的4名) 雲仙市13名(身体6名、知的7名) 南島原市17名(身体9名、知的6名、精神2名) 長与町7名(身体5名、知的2名) 時津町3名(身体2名、知的1名) 東彼杵町2名(身体1名、知的1名) 川棚町4名(障害区分なし) 波佐見町3名(身体2名、知的1名) 小値賀町0名 佐々町2名(身体1名、知的1名) 新上五島町9名(身体4名、知的3名、精神2名) 相談員数計171名(身体障害者相談員96名、知的障害者相談員62名、精神障害者相談員9名) 5 問題解決のための調整機関 地域相談員や広域専門相談員による問題解決が困難な場合は、障害のある人やその関係者からの申し立てにより、「障害のある人の相談に関する調整委員会」(以下、「調整委員会」という。)が助言やあっせんを行います。調整委員会は、申立てのあった事案について専門的な見地から公正・中立な判断をし、当事者双方の事情や意見を検証して、解決に向けた助言やあっせんを行います。 6 問題解決までの流れ 差別に関する問題が発生したら、県の相談窓口である地域相談員又は広域専門相談員が相談を受け付けます。相談員が調査や調整等を行い問題の解決を図ります。相談員による解決が困難な場合は、申立てにより調整委員会による助言・あっせんを行い解決を図ります。特に悪質な差別があったと思われる事案を解決するための手段として、知事による勧告・公表を用意しています。 U 相談活動の実績                                 1 相談者 相談者と障害区分 (本人)肢体不自由5件、視覚障害7件、聴覚障害2件、知的障害3件、精神障害7件、その他5件、計29件 (家族)肢体不自由1件、視覚障害1件、知的障害2件、精神障害1件、発達障害1件、計6件 (支援関係者)肢体不自由1件、視覚障害2件、知的障害1件、その他4件、計8件 (友人・知人)精神障害2件、計2件 (その他)肢体不自由1件、その他2件、計3件 (計)肢体不自由8件、視覚障害10件、聴覚障害2件、内部障害0件、知的障害6件、精神障害10件、発達障害1件、難病0件、その他11件、計48件 ※区分については、相談者に確認して分類しています。 相談者は、障害のある「本人」が29件(60%)と最も多くなっています。次いで、「支援関係者」が8件(15%)、「家族」が6件(13%)、「友人・知人」が2件(4%)でした。「その他」の3件は(8%)は、行政職員と職場の上司からの相談でした。 障害区分では、「肢体不自由」8件、「視覚障害」10件、「聴覚障害」2件を合計した「身体障害者」が20件と最も多く、次いで「精神障害」が10件、「知的障害」が6件、「発達障害」が1件、「その他」の11件は、障害全般に関わる相談でした。「難病」がある人からの相談はありませんでした。 2 相談方法 障害のある人に対する差別に関する相談は、電話、面談、手紙、ファックス、メールにより受理しています。相談は、障害の特性や状況に合わせて相談者が伝えやすい手段でできるようにしていますが、電話による相談が39件と大半を占めています。 受付時の相談方法 電話39件、面談4件、手紙0件、ファックス1件、メール4件、計48件 3 相談分類 令和4年度、1年間に相談窓口に寄せられた相談は48件でした。結果として、不均等待遇や合理的配慮の欠如に該当する相談は2件でした。調整委員会への申立てが行われた事案は、ありませんでした。 相談分類別の件数 主訴として、不均等待遇12件、合理的配慮の欠如8件、不適切な行為4件、不快・不満10件、意見・要望1件、問い合わせ11件、傾聴事案2件、計48件でした。結果として、不均等待遇0件、合理的配慮の欠如2件、不適切な行為2件、不快・不満21件、意見・要望2件、問い合わせ13件、傾聴事案8件、計48件でした。 ※相談分類項目の定義 「不適切な行為」条例の不均等待遇、合理的配慮の欠如には該当しないが、差別的・不適切な行為があったと考えられるもの。 「不快・不満」差別や不適切な行為があったとは判断できないが、相談者が差別と捉えて不快・不満の訴えをしているもの。 「意見・要望」条例や福祉制度、県への意見や要望に類するもの。 「問い合わせ」条例や福祉制度、合理的配慮の対応方法に関する問い合わせやリーフレットの提供依頼など。 「傾聴事案」相談者自身の気持ちを聞いてもらいたいというものや、対応不要の意思表示があったもの。 相談分類と障害区分 主訴 (不均等待遇)肢体不自由1件、視覚障害2件、聴覚障害1件、知的障害1件、精神障害4件、その他3件、計12件 (合理的配慮の欠如)肢体不自由2件、視覚障害3件、聴覚障害1件、知的障害2件、計8件 (不適切な行為)肢体不自由2件、精神障害1件、その他1件、計4件 (不快・不満)肢体不自由1件、視覚障害3件、知的障害2件、精神障3件、その他1件、計10件 (意見・要望)視覚障害1件、計1件 (問い合わせ)肢体不自由1件、視覚障害1件、知的障害1件、精神障害1件、発達障害1件、その他6件、計11件 (傾聴事案) 肢体不自由1件、精神障害1件、計2件  (計)肢体不自由8件、視覚障害10件、聴覚障害2件、内部障害0件、知的障害6件、精神障害10件、発達障害1件、難病0件、その他11件、計48件 結果 (不均等待遇)計0件 (合理的配慮の欠如)視覚障害1件、聴覚障害1件、計2件 (不適切な行為)肢体不自由1件、その他1件、計2件 (不快・不満)肢体不自由3件、視覚障害4件、聴覚障害1件、知的障害5件、精神障害6件、その他2件、計21件 (意見・要望)視覚障害2件、計2件 (問い合わせ)肢体不自由2件、視覚障害者1件、知的障害1件、精神障害1件、発達障害1件、その他7件、計13件 (傾聴事案)肢体不自由2件、視覚障害2件、精神障害3件、その他1件、計8件 (計)肢体不自由8件、視覚障害者10件、聴覚障害2件、内部障害0件、知的障害6件、精神障害10件、発達障害1件、難病0件、その他11件、計48件 主訴として「差別に関する相談(特定相談)」で、「不均等待遇」に分類される相談は、障害区分の「肢体不自由」で1件、「視覚障害」で2件、「聴覚障害」で1件、「知的障害」で1件、「精神障害」で4件、「その他」で3件、の計12件ありました。「合理的配慮の欠如」に分類される相談は「肢体不自由」で2件、「視覚障害」で3件、「聴覚障害」で1件、「知的障害」で2件の計8件でした。 事実確認などの結果としては、「不快・不満」が21件と最も多く、「問い合わせ」が13件、「傾聴事案」8件、「合理的配慮の欠如」、「不適切な行為」「意見・要望」が各2件でした。 4 相談分野 条例では、日常生活や社会生活での10の個別分野における差別行為の禁止を特に定めています。 (差別の禁止が規定されている10の個別分野) 福祉サービスの提供、医療の提供、商品及びサービスの提供、労働及び雇用、教育、建築物の利用、交通機関の利用、不動産取引、情報の提供等、意思表示の受領 相談分野と障害区分は、主訴が「不均等待遇」・「合理的配慮の欠如」の「差別に関する相談(特定相談)」の20件を相談の分野で分類したものです。 相談分野と障害区分 (福祉サービスの提供)計0件 (医療の提供)肢体不自由1件、視覚障害1件、精神障害1件、計3件 (商品及びサービスの提供)聴覚障害1件、その他1件、計2件 (労働・雇用)肢体不自由1件、視覚障害1件、知的障害2件、精神障害1件、計5件 (教育)その他1件、計1件 (建築物の利用)精神障害1件、その他1件、計2件 (交通機関の利用)視覚障害1件、計1件 (不動産取引)計0件 (情報の提供等)視覚障害1件、知的障害1件、計2件 (意思表示の受領)肢体不自由1件、視覚障害1件、聴覚障害1件、計3件 (その他)精神障害1件、計1件 (計)肢体不自由3件、視覚障害5件、聴覚障害2件、内部障害0件、知的障害3件、精神障害4件、発達障害0件、難病0件、その他3件、計20件 10分野別の相談件数 福祉サービスの提供0件、医療の提供3件、商品及びサービスの提供2件、労働及び雇用5件、教育1件、建築物の利用2件、交通機関の利用1件、不動産取引0件、情報の提供等2件、意思表示の受領3件、その他1件、計20件。 障害区分ごとに、どのような分野の相談があったかをみると、障害区分の「肢体障害」がある人からの相談3件は、「医療の提供」、「労働及び雇用」、「意思表示」でした。「視覚障害」がある人からの相談5件は、「医療の提供」、 「労働及び雇用」、「交通機関の利用」、「情報の提供等」、「意思表示の受領」でした。「聴覚障害」がある人からの相談2件は、「商品及びサービスの提供」「意思表示の受領」でした。「知的障害」がある人からの相談3件は、 「労働及び雇用」が2件、「情報の提供等」が1件でした。「精神障害」のある人からの相談4件は、「医療の提供」、「労働及び雇用」、「建築物の利用」「その他」が各1件でした。「その他」の1件については、 相手が特定できない一般私人の発言内容についての相談でした。「障害の有無が不明な方」からの3件は、「商品及びサービスの提供」、「教育」、「建築物の利用」が各1件でした。 10分野の分野別の相談件数をみると、「労働及び雇用」の分野が5件で最も多く、次いで「医療の提供」「意思表示の受領」が各3件、「商品及びサービスの提供」、 「建築物の利用」「情報の提供」が各2件、「教育」、「交通機関の利用」、「その他」の分野が各1件となっています。 5 対応方法 対応と相談分野 主訴が「不均等待遇」・「合理的配慮の欠如」の「差別に関する相談(特定相談)」の20件の対応を相談分野別に分類したものです。 (相手方との調整)医療の提供1件、意思表示の受領1件、計2件 (事実確認等)商品及びサービスの提供2件、労働・雇用3件、建築物の利用1件、情報の提供等2件、意思表示の受領2件、計10件 (関係機関引き継ぎ)労働及び雇用1件、建築物の利用1件、交通機関の利用1件、計3件 (助言)0件 (相談窓口の紹介)医療の提供1件、教育1件、その他1件、計3件 (情報提供・資料送付)計0件 (傾聴主体)医療の提供1件、労働及び雇用1件、計2件 (その他)意思表示の受領1件、計1件 (計)福祉サービスの提供0件、医療の提供3件、商品及びサービスの提供2件、労働及び雇用5件、教育1件、建築物の利用2件、交通機関の利用1件、不動産取引0件、情報の提供等2件、意思表示の受領3件、その他1件、計20件  差別に関する相談についての対応は、全体として「事実確認等」が10件、「関係機関引継ぎ」、「相談窓口の紹介」が各3件、「相手方との調整」「傾聴主体」が各2件でした。「相手方との調整」を行った相談分野は「医療の提供」、 「意思表示の受領」で、「事実確認等」は「労働及び雇用」が3件、「商品及びサービスの提供」「情報の提供」「意思表示の受領」が各2件、「建築物の利用」が1件でした 対応と相談分類(結果)の関係 次の表は、相談に対する対応状況について、相談分類と対応の関係を表したものです。相談者の同意に基づき、相手方や関係者から聴き取り調査を行い、双方の意向を確認した後に条例における対応方針を決定し、調整や対応を行っています。 (相手方との調整)合理的配慮の欠如1件、不快・不満1件、計2件 (事実確認等)合理的配慮の欠如1件、不適切な行為1件、不快・不満13件、問い合わせ1件、計16件 (関係機関引継ぎ)不適切な行為1件、不快・不満3件、意見・要望1件、計5件 (助言)問い合わせ1件、計1件 (相談窓口の紹介)不快・不満4件、問い合わせ4件、計8件 (情報提供・資料送付)問い合わせ7件、計7件 (傾聴主体)意見・要望1件、傾聴主体8件、計9件 (その他)0件、 (計)不均等待遇0件、合理的配慮の欠如2件、不適切な行為2件、不快・不満21件、意見・要望2件、問い合わせ13件、傾聴事案8件、計48件 「不快・不満」21件についての対応は、「事実確認等」が13件、「相談窓口の紹介」が4件、「関係機関引継ぎ」が3件、「相手方との調整」が1件でした。「問い合わせ」13件についての対応は、 「情報提供・資料送付」が7件、「相談窓口の紹介」が4件、「事実確認等」、「助言」が各1件でした。「傾聴事案」8件についての対応は、すべて「傾聴主体」でした。「合理的配慮の欠如」2件についての対応は、 「相手方の調整」、「事実確認等」でした。「不適切な行為」2件についての対応は、「事実確認等」、「関係機関引継ぎ」でした。「意見・要望」2件についての対応は、「関係機関引継ぎ」、「傾聴主体」でした。 6 活動回数と活動期間 対応ごとの活動回数 (相手方との調整)2件、活動回数33回、平均回数16.5回 (事実確認等)16件、活動回数91回、平均回数5.7回      (関係機関引継ぎ)5件、活動回数26回、平均回数5.2回 (助言)1件、活動回数3回、平均回数3.0回 (相談窓口の紹介)8件、活動回数19回、平均回数2.4回 (情報提供・資料送付)7件、活動回数12回、平均回数1.7回 (傾聴主体)9件、活動回数19回、平均回数2.1回 (その他)0件、活動回数0回、平均回数0.0回 (合計)48件、活動回数203回、平均回数4.2回 活動回数(対応回数)は、事案や対応方法によって大きな差がありますが、平均すると4.2回となりました。 「相手方との調整」や「事実確認等」「関係機関引継ぎ」などの対応は、複 数の機関と連携して対応にあたることが必要なため活動回数(対応回数)が多い傾向がありました。また、相談件数は昨年度(39件)より9件増加でした。 相談受付から解決までの活動期間については、相談を受けた当日に解決したものが25件と最も多く、2日間が6件、3日間が2件、4日間が1件、5日間が1件、6日間が1件、7日間が2件、8日間が3件、9日間が1件、 13日間が1件、14日間が1件、17日間が1件、22日間が2件、28日間が1件でした。 7 連携 他機関との連携 問題解決のために、必要な場合には、他の機関等と連携を図って対応を行っています。対応をしていく中で、他機関等と連携し解決に至った件数は、24件でした。  主な連携先は、県の担当課や、国・県・市町の関係機関です。複数の機関と連携を図った事案もありました。 地域相談員との連携 相談活動 地域相談員が「差別に関する相談」を受けた際は、広域専門相談員と連携して問題の解決を図っています。地域相談員が相談を受けて、広域専門相談員が対応を引き継いだ相談、地域相談員からの紹介で広域専門相談員が対応した事案はともに0件でした。 地域相談員研修会 平成30年から、障害のある人への理解促進のための研修会と併せて地域相談員研修会を実施しています。令和3年度は、コロナ禍のため開催できませんでしたが、令和4年度は、全地区の地域相談員と市町の職員に参加を呼びかけ、 各市町において同時にWEBでの研修会を開催しました。 相談員通信 地域相談員と広域専門相談員の連携の一助として、相談員通信を年に 1回発行しています。内容は、地域相談員研修会の様子、広報媒体での周知活動、街頭キャンペーン、県条例リーフレット(小学生版)の作成、障害者理解促進に向けた関係団体と事業者との意見交換会の様子などについてでした。 8 圏域別の相談件数 相談者の居住地域を障害保健福祉圏域(10圏域)で分類しています。 圏域別相談件数 長崎圏域14件、西彼圏域2件、県央圏域5件、佐世保圏域3件、県北圏域0件、県南圏域10件、五島圏域4件、上五島圏域1件、壱岐圏域0件、対馬圏域0件、県外4件、不明5件、合計48件 圏域別の相談件数については、「長崎圏域」が14件と最も多く、「県南圏域」が10件、「県央圏域」が5件、「五島圏域」「県外」が各4件、「佐世保圏域」が3件、「西彼圏域」が2件、「上五島圏域」が1件、不明が5件でした。 V 相談事例 寄せられた相談について、個人情報保護の観点から、内容を一部変更するなど再構成をしたうえで、事例として掲載しています。 1 医療の提供  医療機関での意思疎通について 相談者 身体障害があるAさん Aさんは、医療機関に入院した際、自分は言語障害があるため意思疎通の手段として文字盤を使用したいとスタッフに申し出ましたが、対応してもらえませんでした。普段から、スタッフが自分の話を聞いてくれなかったり、文字盤の使用について 対応してくれないのは、自分に障害があるからではないかと感じました。Aさんは今後、障害のある人にこのような対応をしないよう、医療機関に改善してほしいと思いました。 (対応と結果) 医療機関を直接訪問し状況確認を行ったところ、相談者が意思疎通の手段とし て文字盤の使用を望んでいる事をスタッフ間で共有できていませんでした。また、スタッフは、相談者との会話でコミュニケーションが取れていると思い込んでいたことが分かりました。 医療機関に、県の条例の趣旨や国が示しているガイドラインを提示しながら、合理的配慮の提供義務について説明し、障害のある人が安心して医療機関を受診できるように、障害のある人への理解や障害の特性に合わせた配慮を依頼しました。 (広域専門相談員から) 障害のある人が意思表示をしようとする場合、自らの都合でコミュニケーションの手段を制限したり、コミュニケーションそのものを拒否したりすることなく、障害のある人の立場になって、真摯に対応する必要があります。 障害の種類や程度は様々で個人差があり、配慮や対応の方法も様々です。どのような配慮が必要であるかは、障害のある人とのコミュニケーションによって分かるものです。「わかりましたか?」「お困りごとはないですか?」など積極的に声をかけ、 本当に必要とされている配慮を見極めていくことが大切です。 2 商品及びサービスの提供 自動車学校への合宿入校について 相談者 聴覚障害のあるBさん(他県在住) Bさんは、長崎県内にある自動車学校のホームページから、合宿教習の入校申込みをしました。翌日、自動車学校から自宅へ電話があり、対応した家族が「Bさんは聴覚障害がある」ということを伝えると、「聴覚障害のある人は、 合宿教習の受け入れをすることができない」と言われました。家族からそのことを聞いたBさんは、自動車学校に「自分には聴覚障害はあるが、音声認識アプリや筆談ボードを使用すれば意思疎通ができ、特別な対応は必要ない」とメールで伝えましたが、 「障害のある人の合宿教習は難しい」という回答に、Bさんは障害を理由とした差別だと思いました。Bさんは、このことを居住する県の広域専門相談員にも相談しました。 (対応と結果) 自動車学校へ事実確認を行った結果、Bさんが希望する合宿教習は、最短日数で卒業することを目的としているため、これまで障害のある人を受け入れたことがありませんでした。また、聴覚障害のある人を受け入れるための教材の準備や職員研修、 教習車・教習コースの設備などの環境を整えるため、相談者が希望する入校日に間に合わないという理由から、入校をお断りせざるを得なかった状況にあったことが分かりました。しかし、そのことがBさんに上手く伝わっていませんでした。 自動車学校に、対応が難しい場合は、その理由を相手方が納得されるよう、できるだけ詳しく丁寧な説明を心掛けていただくことをお願いしました。その後、Bさんは居住地の自動車学校に入校することになりました。 (広域専門相談員から) 本件は、相談者と事業者がメールでのやり取りであったため、双方の建設的対話が困難な状況にありました。差別の意図はなくても、説明不足や、説明内容が正しく伝わっていないことなどから、誤解につながり、障害のある人が「差別されている」 と感じることがあります。説明する側は、丁寧な説明を心掛け、正しく伝わっているか確認する必要があります。 他県の人からの相談であっても、本県で起きた事案は条例の適用となるため、本県が自動車学校との対応を行い、相談者が居住する県の広域専門相談員と常に情報共有を行いながら、終結に至りました。 3 商品及びサービスの提供 金融機関の窓口カウンターでの対応について 相談者:視覚障害のあるCさん(弱視) Cさんは、最近、突然目が不自由になり、車の運転も難しく運転免許証を返納するなど、精神的ストレスを抱えながら生活しています。また、普段は、白杖は使用せず、サングラスを着用しています。金融機関のカードの切り替えが必要という書類を受け取り、 身分証明書としてマイナンバーカードを持って金融機関へ行きました。窓口で、担当職員にカードの切り替えに来たことを伝えると、「身分証明書として運転免許証を提示してほしい」と言われました。Cさんは突然視覚障害になり、 車の運転もできなくなって辛い思いをしているのに、そのように言われ非常に悲しい気持ちになりました。また、視覚障害があると伝えましたが、書類への自署を求められました。視覚障害になったということで精神的苦痛を感じているのに、 障害のある人に対してもっと配慮をしてほしいと思いました。 (対応と結果) 金融機関の責任者に、条例の趣旨と相談内容を伝え事実確認を行いました。担当職員が、相談者へ書類に自署を求めたことに関しては、代替手段として家族が代筆ができる旨を伝えていることが分かりました。また、相談者はサングラスを着用していたため、 見た目では視覚障害があるということがわからず、配慮のない対応をしてしまい、深く反省をしているとのことでした。金融機関側へ、窓口を訪れる人の中には、障害のある人も含まれていることを念頭に置き、 見た目ではわからない障害のある人に対しての理解と、障害の特性に配慮した丁寧な対応を心掛けてもらうようお願いしました。 (広域専門相談員から) 本件では、職員の何気ない発言が相談者を深く傷つけることになってしまいました。外見から分かりにくい障害は、どのようにコミュニケーションをとるべきかとっさに判断することが難しいですが、障害のある人の思いを想像して、気持ちに寄り添うことで、 声掛けや行動等が配慮のあるものになっていくのではないでしょうか。 4 労働及び雇用 就職に関する採用試験について 相談者 精神障害のあるDさん Dさんは、看護師資格を持っており、病院や施設で勤務した経験から、また看護師として働きたいと思いました。Dさんは、事業所の看護師募集の求人を見て、履歴書を提出し、面接を受けることになりました。 面接時に、「看護師は、人と関わる仕事であるのため、精神障害があると、何か問題を起こしたときの対応に困る」という理由で、不採用となりました。障害を理由に採用を断わられたことに対して、憤りを感じました。 (対応と結果) Dさんは、相手方との調整までは望まず、障害があることを理由に採用を断る事業所があることを知ってほしいという要望だったため、傾聴主体の対応としました。Dさんへ、条例と障害や障害のある人に対する理解について啓発に努ることを伝えました。 (広域専門相談員から) 本年度は、労働及び雇用の分野において、他にも「職場で差別的発言や対応を受けた」「職場で障害があるのに配慮をしてもらえない」などの相談も多数寄せられました。雇用の分野では、障害者雇用促進法で障害者に対する差別が禁止され、 合理的配慮の提供を義務付けすることが定められています。障害のある人が地域の中で自立した生活を営むには、一人ひとりが障害のある人に対する誤解や偏見をなくし、障害に対する理解の促進や障害に応じた適切な配慮が何より大切です。 5 意思表示の受領 店舗の配達サービスについて 相談者:聴覚障害のあるEさん Eさんは店舗で購入した商品の配達サービスを利用したいと店舗スタッフへ申し出たところ、配達の際の緊急連絡として電話での対応が必要と言われました。Eさんは、聴覚障害があるため電話での対応が難しく、連絡手段としてFAXやショートメールでの 対応を希望しましたが、きちんとした説明もなく、対応を断られました。配達サービスを受けるにはどうしたらよいか、困ってしまいました。 (対応と結果) 店舗の責任者へ、対応状況を確認した上で、条例の趣旨と合理的配慮の提供義務について説明したところ、「そのような対応をして申し訳なかった。当店舗のみでは判断ができず、早急に本社に確認して対応について検討を行う」という回答がありました。 後日、店舗から、聴覚障害のある人への緊急の連絡手段としてFAXでのやり取りが可能になったと報告があり、Eさんは、配達サービスを受けることができるようになりました。  その後、店舗では障害や障害のある人への理解と対応について社員研修が行われ、聴覚障害のある人へのサービスの一環として筆談等も提供されることになりました。 (広域専門相談員から) 事業者は、聴覚障害のある人の申し出に対し、対応できない理由の十分な説明や代替案の提案もなく、合理的配慮の提供を怠っていました。条例では、特別な事情がなく、障害のある人が意思表示をする時に、情報保障としての手段を拒んだり、 特定の手段しか認めず、代替手段を認めないことは差別に当たると規定しています。合理的配慮は、障害の特性や配慮が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様で個別性の高いものです。まずは、障害のある人が求めている内容を聞き、 何ができるか考え、事業者として可能な配慮の方法を提案し、双方でお互いの事情を考慮しながら、理解を深めることが重要です。 6 その他 障害を理由とした誹謗中傷について 相談者:障害を子どもを持つFさんの知人 相談者は、精神障害のある子どもを持つFさんと、長い間ご近所付き合いをしています。Fさんは、障害のある子どものことで、これまで近所に根も葉もない噂を流されたり、障害を理由に誹謗中傷を受けています。相談者は、苦しい思いをされている Fさんを見て悲しくなり、「こんな酷いことをする人を調査してほしい」と差別の窓口に相談しました。 (対応と結果) 条例では、社会的枠組みが介在しない私人間の問題は、調整の求めがあっても傾聴にとどめることを基本方針としています。Fさんが受けている行為は非常に残念なことですが、相談者へ条例での対応は難しいことを説明し、適切な相談窓口を紹介しました。 (広域専門相談員から) 当窓口に寄せられる相談は、障害を理由に差別されたという相談の他、相手の心ない言葉や対応に傷つき辛い思いをしたという相談も多く寄せられています。なかには、「相手方に謝罪してもらいたい」「県から指導してほしい」 という相談もありますが、条例では、共生社会の実現に向けて差別する人と差別された人に分けて、相手側を一方的に非難し制裁を加えるのではなく、相手方の事情も考慮しながら、話し合いによって解決を図ることとしています。 相談者の意向に沿う形で解決に至らないこともありますが、広域専門相談員は、常に相談者の気持ちに寄り添いながら、安心して相談できる環境を築いていくことを心掛けています。 W.障害理解・啓発活動                                  1.地域相談員研修会 障害のある人の差別に関する相談は多岐にわたっており、日常生活や社会生活の場面ごとの具体的な相談事例を通して、その事案の背景や問題について考え、解決に至るまでの配慮の方法等を学ぶことを目的に、地域相談員研修会を開催しました。 今回の研修会は、以前までのワークショップ型の研修の形式を変更し、各市町の会場でWEBを通して研修会を開催し、各市町の地域相談員をはじめ市町職員の多数の参加がありました。 2.「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」リーフレット(小学生版)の作成 子どもの頃から、障害を理由とした差別を考える機会をもつことで、障害や障害のある人を正しく知り、障害について理解を深めてもらい、障害のある人もない人も共に生きる共生社会の実現につなげていくことを目的に、小学生を対象とした 「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」リーフレット(小学生版)を作成し、県内小学校、特別支援学校、市町障害福祉課、関係機関等に配布しました。 3.障害者理解促進に向けた関係団体と事業者との意見交換会 共生社会の実現に向け、障害や障害のある人への理解を深めるため、関係団体と事業者が相互に気軽に相談できる関係性を築いていく機会の創出を目的とし、障害者関係団体と民間事業者との意見交換会を行いました。当事者からは社会の障壁や困りごとについて、 事業者からは、日頃、周知徹底していることや不安なこと、今後の課題等についての意見が挙がりました。      4.心の輪を広げる障害者理解促進事業 県では、毎年12月3日から9日までの『障害者週間』に合わせ、障害のある人とない人が共に生きる社会の構築を目指し、内閣府との共催事業として、毎年「心の輪を広げる体験作文」と「障害者週間のポスター」の募集を行っています。 令和4年度は、作文部門で95編、ポスター部門で55点の応募をいただき、ご応募いただいた多くの作品の中から入賞作品を収録した作品集を作成し、県内の小・中・高等学校や行政機関、福祉団体、障害者施設などに広く配布を行いました。 5.その他 令和4年12月に、長崎県議会、障害者関係団体と長崎市で「障害のある人もない人も共に生きる社会の実現を目指すための街頭キャンペーン」を行いました。また、県の全世帯広報誌「つたえる県ながさき」では、12月の障害者週間に合わせ、 県民の皆様へ障害のある人に対する理解を深めることを目的とし、特集で県条例をはじめ障害者の芸術・文化、スポーツ活動、障害者の就労状況、ヘルプマークなどの紹介を行いました。   おわりに 本県では、平成26年4月1日に「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」を施行し、条例施行後9年目となる令和4年度は、前年度の活動経験も踏まえ、相談活動や条例の普及啓発に努めてきました。 国においては、平成28年4月1日から「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、障害者差別解消法)」が施行され、その後、令和3年5月、「障害者差別解消法」の一部を改正する法律が成立しました。 また、令和5年3月には、令和6年4月の改正法施行に向け、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」の変更が行われました。  この基本方針の変更では、不当な差別的取扱いの基本的な考え方、具体的事例の追記、社会的障壁を除去するためには建設的対話・相互理解が重要であることが追記されました。さらに、「相談及び紛争防止等のための体制の整備」の項目が新設され、 相談対応等について、国及び地方公共団体の役割分担並びに連携・協力に向けた取組についても記載されました。 本県の条例もこの法律も、全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指しています。今後も相談制度の適切な運営を図るとともに、法律と併せて、 条例の更なる普及啓発に努めてまいります。 相談・問合せ先 長崎県福祉保健部障害福祉課 広域専門相談員   〒850-8570 長崎市尾上町3-1 電話 (095)895-2450 ファックス (095)823−5082 メール 相談内容の入力フォームをホームページ内に掲載