長崎県

Vol. 140 中国 周小慶(シュウ ショウケイ)


2017年11月13日更新

中国の少子高齢化問題

                ――江蘇省如東県を例として――

 

 長崎の皆さま、こんにちは。中国から来た新しい国際交流員の周小慶です。よろしくお願いいたします。

 大学に入ってからずっと上海で過ごしてきましたが、出身は上海と長江を隔てて向かい合う江蘇省南通市の沿海部に位置する如東県です。ついでに如東県は北緯が長崎と同じく32度で、長崎と海を挟んで相対しています。なぜ自分の出身地をここまで詳しく紹介するかというと、今回のコラムでご紹介したいのは出身地の如東県に関することですから。

 

図1.上海から車で2、3時間離れたところにある江蘇省南通市如東県。
http://map.mapbar.com/a_nantong_rudong_map

 去年の12月から、なんの変哲もなく、ずっと無名だった如東県が急に、週刊誌『南方週末』や国営の中央テレビをはじめとするメディアに大いに報道され、話題になりました。報道されたのは如東県を悩ます少子高齢化問題です。

 へぇ、人口大国の中国も少子高齢化?と自分の目を疑うほど驚いた方もいるでしょう。実は高速な経済成長を続けている中国において、少子高齢化も急速に進行しています。如東県はその中で、ひときわ目立つ存在です。報道によりますと、2014年末に、如東県の戸籍人口が約104万人で、1997年から17年連続で「マイナス成長」となっています。同年末の60歳以上人口が総人口に占める割合は29.26パーセントで、全国の15.5パーセント(同年末)をはるかに上回っています。

 

図2.写真は如東県のある若い男性。後ろの両親、祖父母、曾祖父母などを一人で養う必要がある。
http://www.recordchina.co.jp/a92224.html

 少子高齢化の急速な進行で如東県が全国に注目されるようになったのは昨今のことですが、少子高齢化がもたらした影響はずっと前から、私が身に染みて感じています。小学校5年生(1999年)のころ、通っていた小学校が隣の4校と合併し廃校になり、キャンパスがその後工場になりました。わずか数年後、5校が合併した小学校も同じ運命を迎えました。また、2014年、実家の鎮(県の下の行政区画)で唯一の高校が生徒数の減少で、生徒募集の停止を県の教育局から命じられました。母校の中学校が廃校した高校のキャンパスに移転したため、そのキャンパスも工場になる見通しです。少子化に伴う学校の統廃合で、自分の通っていた学校のキャンパスが次々と工場に変わるのを見て、本当に寂しいです。

 

図3.写真は人気のない工業中等教育校のキャンパス。
http://www.afpbb.com/articles/-/3054587

 学校の統廃合はもちろん、少子高齢化による影響のひとつに過ぎません。高齢者の介護、経済の伸び悩みなどがさらに県の幹部らを悩ましています。

 では、なぜ如東県の少子高齢化がひときわ厳しいのか。二つの原因が挙げられます。

 一つは周知のように、一人っ子政策です。如東県は中国全土より10年も早く「一人っ子政策」を実施し始め、計画出産の「模範県」として国に表彰されていました。「子供は一人がいい」(“只生一个好”)という多くのほかの地域ではなかなか受け入れられない当局のキャッチフレーズが如東県民の共通の認識あるいはコモンセンスとして定着してきました。申し遅れましたが、私は如東県育ちですが、生まれは隣の町です。自分に兄弟が2人いることを、進学の度に、新しく出会った同級生に話したら、みんな「へぇ、周さんには兄弟がいるの?」とびっくりします。

 もう一つは、若者が大学進学のため、如東を離れ、卒業後戻らないことです。如東県は甘粛省会元市、湖北省黄岡市と並んで、「中国の基礎教育(小中高教育のこと)の三つの馬車」とある教育研究者に呼ばれたことがあります。私の通っていた高校は毎年の大学進学率が90から95パーセントぐらいに達しています。しかし、報道によりますと、過去10年間に、県内の各高校を卒業し、大学に進学した5.9万人のうち、卒業後、如東に戻った人は1万人弱しかいません。進学や就職による地元離れが少子化にいっそうの拍車をかけました。

 如東県は進行している中国の少子高齢化社会の縮図だと言えます。より早く少子高齢社会に突入した如東県は全中国に警鐘を鳴らしました。少子高齢化に歯止めをかけようと、2015年、中国政府は「一人っ子政策」を廃止すると発表しました。しかし、子供の養育費や学費負担が大きいため、二人目の子供の出産をまったく考えない人がほとんどです。これからも少子高齢化が進行し、厳しい状況が続く見通しです。

 少子高齢化に早くから対応してきた日本は、いまだに問題解決のめどが立っていないようです。少子高齢化はこれから日中両国が協力して取り組める課題の一つになるでしょう。

 前の国際交流員のコラムより、ちょっと堅い話題ですが、飲食とか祭りとかだけではなく、今中国が抱える、日本と共通する社会問題も皆さまに知っていただきたいので、少子高齢化というテーマにしました。この論文みたいなコラムを最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

このページの掲載元

  • 国際課
  • 住所:長崎市元船町14番10号 橋本商会ビル6F
  • 電話:095-895-2081
  • ファクシミリ:095-827-2487
先頭に戻る

メニュー