五島灘で獲れたアジを丸ごと一匹!紀寿し
紀寿し
400年の歴史に新しい命を吹き込んで。

 「紀寿(きず)し」は奈良尾(ならお)地区の郷土料理である。初めて見る人の中には、アジを1匹丸ごと使ったその姿に一瞬ギョッとなる人もいるらしいが、味は極めてまろやかで上品。2つくらいならペロリである。
 今から400年ほど前、現在の和歌山県から奈良尾の地にたどり着いたのが魚群を追い求めてきた紀州(きしゅう)の漁師たち。彼らは長い船旅に備えて、酢漬けにした魚とおにぎりを合わせた「生寿司(きずし)」を食していた。以来、奈良尾では各家庭で独自の味付けがなされ、祝い事には欠かせないものとなっていった。
 この生寿司を「現代風にアレンジしてもっと美味(おい)しくしたら、多くの人に広まるのではないか」と考えたのが谷佳江(たによしえ)さんだ。今から7年前に奈良尾町漁業協同組合女性部「郷土料理研究会」を立ち上げ、7名のメンバーと共に取り組みを開始。地元の主婦たちに話を聞いたり、頭や骨が柔らかくなるように生酢(きず)への漬け込みを工夫したりと試行錯誤を重ね、ようやくの思いで完成させた。そして、ネーミングも「紀寿し」と改め、世に送り出した。
 紀寿しはとにかく手間がかかる。旬の時期に地元で捕れたアジを塩に一晩以上漬け、その後生酢に二晩、甘酢に一晩以上漬ける。もちろん骨も1本1本丁寧に抜く。アジを捌(さば)いてから食べるまでに最低でも1週間ほどかかるのである。
 販売は島内の朝市や県内のイベント会場などで行っている。「地元のおばあちゃんなんてこの味が気に入って家で作らなくなったんですよ」と谷さん。地元の人も保証済みのこの味は、平成23年度には「ながさき水産業大賞 特別賞」を受賞。また、地域の郷土料理や食文化などの保存・開発に努め、地域の活性化に繋(つな)げているその活動自体も認められ、「食アメニティコンテスト」において審査会特別賞も受賞した。
 谷さんは「今後は紀寿しを上五島の味として広めたいですね。みなさんに1匹丸ごとかぶりついてほしいです!」と語る。400年受け継がれた伝統に新しい命を吹き込んで生まれた「紀寿し」。ぜひご賞味あれ。

 

奈良尾町漁業協同組合女性部「郷土料理研究会」
南松浦郡新上五島町奈良尾郷379-3 TEL:090-1165-6295(代表・谷佳江)
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