ふるさと再発見 南国ムード満点!潮風吹く夏の野母崎へ
長崎県亜熱帯植物園内のジェードバイン
出迎えてくれたのは宝石のような花だった

 ジェードバインーーこの美しい花の名前である。花色が宝石の翡翠(ひすい)に似ていることから「ヒスイカズラ」という和名でも親しまれている。自然界でも珍しいブルーの花色と、女性らしい優美なフォルムは神秘的で、見る者の心を惹(ひ)きつける。
 長崎市中心部から車で約40分。ジェードバインは長崎県亜熱帯植物園のオープン以来、40年以上に渡り毎年咲き続けている。濃い青緑から淡いブルー、最後は紫へと徐々に変化する複雑な花色は幻想的で、この花を見るためだけに訪れる人も多いという。他にも園内には1,200種、45,000本の亜熱帯植物が生い茂り、四季を通して楽しむことができる。
 半島周辺を流れる対馬(つしま)暖流の影響で、長崎市内でも特に温暖な気候として知られている野母崎(のもざき)。海は光り輝き、沿道にはヤシの木がそびえ立つ。今回はそんな南国ムード満点の野母崎を旅する。

長崎県亜熱帯植物園
長崎市脇岬町833 TEL.095-894-2050
脇岬

天井絵(観音禅寺)<県指定有形文化財>

歴史もあれば、名物もある。のんびり脇岬散策

 ぶらりと町を散策しようと訪れたのは、脇岬(わきみさき)地区の「観音禅寺(かんのんぜんじ)」。アーチ型の石門をくぐると、まるでそこだけ時間が止まったかのような異空間が広がっていた。ここは約1300年前に行基菩薩(ぎょうきぼさつ)によって創建された真言宗(しんごんしゅう)の寺院跡に建立(こんりゅう)された寺で、現在のお堂は江戸時代に再建されたものだという。城を思わせる二重破風(にじゅうはふ)と、風雨にさらされ色褪(あ)せた欅(けやき)。堂内にはシーボルトお抱えの絵師・川原慶賀(かわはらけいが)や、その師匠である石崎融思(いしざきゆうし)が描いた天井絵が今も残っている。天井絵と同じく県指定有形文化財の十一面千手観音立像もあり、江戸時代にはこの岬の観音様を拝むため、多くの長崎の人々が現在の十人町(じゅうにんまち)から続く御崎道(みさきみち)を通り、足しげく通ったという。31キロの道のりを当時の人々はどんな思いで歩いたのだろう。境内には心地よい初夏の薫風(くんぷう)が吹き抜けていた。
 寺の周囲には民家や畑がある。畑のそばで地元のご婦人2人に出会った。この辺りは土壌がいいそうで、みんな自分が食べる分くらいの野菜を作っているらしい。「今じゃがいもば掘ったとよ。あっちにはナスやキュウリ、トウモロコシば植えとるけん、夏が楽しみ」と笑う。畑の脇には美しいウコンの花が咲き、2人はその花を眺めながら、朝のひとときを楽しんでいるようだった。

仁王門(観音禅寺)

脇岬の町並み

 細い路地に入ると、懐かしさを感じさせる風景に出会った。家々のすき間から見える美しい海、それぞれの庭や玄関には南国を思わせる花々が咲いている。 路地裏では、犬や猫がのんびりとしていて、日頃の喧噪を忘れさせてくれた。
 路地を抜けると大きな「ごまどうふ」の看板が見えた。ごま豆腐製造元「観月(かんげつ)」。テイクアウト専門店だが、お願いすれば箸(はし)を付けてくれるとのこと。今回はその場でいただくことにした。まず驚いたのはその質感。いかにも手作り感あふれる断面に期待が膨らむ。口に入れると、まったりとした食感が広がり、まるでスイーツのよう。「ごまプリンと呼ぶ方もいらっしゃるんですよ」と社長の吉田啓穂(よしだけいほ)さん。この味と食感にたどり着くのに10年かかったという。商品はスタンダードなごま豆腐に加え、真っ白な金ごま豆腐と、期間限定で作る抹茶ごま豆腐の3種類。中でも一番気に入ったのは甘さを控えた金ごま豆腐だ。わさびを付ければ、酒のつまみとしてもイケる味である。野母崎で昔から親しまれているというごま豆腐。吉田さんは親子二代で伝統の味を守り続けている。

 野母崎の名産品として県外でも販売されているごま豆腐。吉田さん親子の笑顔を見ていたら「これは美味(おい)しいはずだ」と納得させられた。

野母崎の名産品ごま豆腐

吉田さん親子

ごま豆腐製造元 観月
長崎市脇岬町3628-5 TEL.095-893-2100
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