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JAZZ SASEBO
アメリカ文化が根付いた街にジャズが流れる

 明治中期から旧日本海軍の鎮守府として重要な役割を担っていた佐世保市は、戦後まもなくして進駐軍が入り、米軍基地と共存する街となった。
 その頃、隣国・朝鮮半島で覇権をめぐって東西が対立し、朝鮮戦争が勃発。アメリカ軍を中心とする連合国軍への物資補給のほとんどが日本で行われ、皮肉にもこの戦争が経済復興への第一歩を踏み出すきっかけとなる。「朝鮮特需景気」で街は大いに賑わい、日本での最前線となったのが佐世保港だった。物資の補給所としてはもちろん、前線に出ていく多くの兵士たちや後方支援の米軍関係者が佐世保市に集結。娯楽産業が生まれたのはいうまでもなく、彼ら相手の女性やミュージシャンたちが全国から流れてきた。
 昭和26年から30年頃までの当時、市内には民間のダンスホールやキャバレーが15ヶ所ほど、米軍関係のクラブが9ヶ所あった。いずれもバンドを抱えており、その数は30バンド以上、200人以上ものミュージシャンがこの小さな地方都市で食べていたという事実に驚かされる。その中には、当時のナンバーワントランぺッター南里文雄(なんりふみお)をはじめ、スマイリー小原(おはら)、原信夫(はらのぶお)、ジョージ川口(かわぐち)など、後に東京で大活躍することになるプレイヤーもいたという。街の中は兵士たちや、彼らに連れられた女性たちであふれ、満員のダンスホールでは水兵たちが日本人女性とジルバやブルースを踊り、明日をも知れぬわが身への不安を吹き消すようにドルを使っていたという。
 アメリカナイズされた当時の面影は、今でも湊(みなと)町から栄(さかえ)町の外国人バーなどに残っているが、音楽に関しても佐世保市とジャズは切っても切れない仲。その関係を再燃させたのが、この街で40年近くジャズスポット『いーぜる』を経営している山下(やました)ひかるさんである。「いつか仲間と一緒に野外ジャズライブをやること」という夢を常連客や音楽仲間に呼びかけ、1990年に実現した小さなステージが、今日のジャズフェスティバルにつながっている。
 翌年は市制90周年の記念事業として、市と協力してジャズの本場・ニューオリンズから超一流の演奏者たちを招き、佐世保港が一望できる干尽(ひづくし)公園で『サンセット99ライブ・サセボ』を開催。2003年からは会場をハウステンボスに移し、『サンセット・ジャズ・イン』と名称を変えて極上のライブを毎年くり広げている。また、ノージャンルの野外音楽イベントや市内のライブハウスと協力して「SASEBOライブウィーク」、全県下で開催されている「ながさき音楽祭」の佐世保バージョンで、ジャズを中心とした公園やアーケードでの街角ライブなども仕掛けている。
 「ジャズの魅力は決まりがないこと。崩していく面白さというか、なんでもありの猥雑(わいざつ)さが人ば惹(ひ)きつけるとじゃなか?」
 港街・佐世保とジャズは似ている。

ジャズスポットいーぜる
山下ひかるさん

JAZZ SPOT いーぜる
佐世保市下京町3-1ラテスビル2階 TEL.0956-25-1170
海きらら
九十九島の海を体感する人気の水族館「海きらら」

 海きららは、九十九島の海を体感できる水族館。多くの島々が点在し、砂浜や干潟(ひがた)など環境の変化に富んだ九十九島の海をできるだけ忠実に再現し、そこに生息する海の生物たちのリアルな姿を伝えている。その象徴的な光景を見ることができるのが九十九島湾大水槽。青く輝く水中を移動するマイワシの大群、優雅に泳ぐサメやエイ…。設置された擬岩は実際に九十九島の岩の型をとって造ったものだという。大水槽は天井がないので、自然の光がそのまま降り注いでとてもきれいだ。この美しい光景が実際の九十九島の中に広がっているのかと思うとワクワクしてくる。飼育員のひとり野見山理美(のみやまさとみ)さんは、「できるだけ自然に近い環境で魚たちを育てるように心がけています。それを見てお客様に感動していただけるととても嬉(うれ)しいですね」。きらきらと瞳を輝かせながらこう語ってくれた。
 次に出会ったのは暗闇に光る幻想的なクラゲたち。国内最大級のクラゲ展示場「クラゲシンフォニードーム」は、光の届かない深い海底に潜っていくかのように階段を降りたところにあった。青く、白く、時には緑色に姿を変える20種類のクラゲたち。九十九島の海にはこんな幻想的な世界が広がっているのだ。クラゲたちの育ての親ともいえるのが、クラゲ博士と呼ばれている秋山仁(あきやまひさし)さん。クラゲ研究室で繁殖させたたくさんの赤ちゃんクラゲを育てている。「九十九島には100種類ほどのクラゲが生息しています。いろんな種類のクラゲを見て楽しんでいただきたいと思います」と秋山さん。
 展望ロビーを抜けて青空の下に出ると、歓声が聞こえてきた。そこには3頭のイルカの愛らしい姿。九十九島の海には実際にイルカたちがよく遊びにくるという。
「ここのイルカは人懐っこくて、とても優しい性格をしているんですよ」と言うトレーナーの出来真由美(できまゆみ)さん。現在、3頭はまだまだ訓練中というが、プログラム以外でも観客達にボールを投げて遊びに誘うなど愛嬌(あいきょう)たっぷり。それだけイルカと観客の距離が近いのだ。
 海きららは、規模の大きな水族館にはない魅力がある。ただ海の生物を見学するのではなく、より九十九島の生物に近づけるという感覚。スタッフの皆さんの生物に対する愛情と、16000匹の命の温もりをぜひ感じていただきたい。

 「海の中を見られることがすごく不思議だったんです」。魚類担当の野見山理美さんは、幼い頃の水族館での感動が忘れられず、水産系の大学に進学。しかし卒業時は飼育員の募集がなく、別のレジャー会社に就職したそうだ。それでも夢を諦められなかった彼女は、昨年この水族館の募集を知り長年の夢を叶えた。毎日が幸せだと、彼女の笑顔が語っていた。
 クラゲはまだ解明されていないことも多いらしい。そもそもハッキリとした定義付けができないというのだから不思議な生物である。「クラゲはとても美しいですし、癒されますし、研究しがいがあります」と語る秋山さんは、目に見えないほど小さな赤ちゃんクラゲに餌をあげていた。毎日、水替えの時には一匹ずつスポイトで移動させるというから驚きだ。
 イルカは毎日、サンマやアジなどの餌を12~13kgほど食べるそうだ。そんなイルカの餌作りから毎朝の健康チェック、トレーニングなどを行う鹿児島出身の出来さん。一日に3回行われるプログラムについては「毎日がぶっつけ本番なのでハラハラしていますが、イルカ達の愛嬌と賢さと、お客様の歓声に助けられています」と元気一杯に話してくれた。
九十九島水族館「海きらら」
佐世保市鹿子前町1008 TEL. 0956-28-4187
魚市場のセリ場

流通にのせるため、魚種を問わず規格から外れた魚たちが入れられる色箱

九十九島の海の恵み規格外の魚を活かす「もったいない食堂」の取り組み

 九十九島の海は県内屈指の好漁場。佐世保市民は海の恩恵を受けながら暮らしてきた。だからこそ海の恵みを無駄(むだ)にしたくない。そんな想いから「もったいない」をキーワードにした取り組みが始まっている。
 佐世保市西部に位置する相浦(あいのうら)港にある佐世保魚市場。ここには、一般の人でも食事ができる「もったいない食堂」がある。美しい九十九島の景色を楽しみながら食事ができるこの食堂では、もったいないといわれてきた魚たちが活躍している。
 食堂の発起人である金子卓寛(かねこたくひろ)さんに話を伺った。「魚市場のセリ場には、たくさんのトロ箱に混ざって、サイズや数が揃わない半端な魚を入れる色箱というものも並べられます。こういった規格外の魚は、食べるのには何の問題もないのですが、その価格は数百円という安値で取引をされている。なんとかならないものかとずっと考えていたんです」。
 そして、金子さんのもう1つの「なんとかならないか」は、給食センターに運営を任せていた社員食堂のことだった。毎日ここでは新鮮この上ない魚たちが水揚げされている。それにも関わらず、社員食堂は冷凍ものや輸入物の魚を使った料理が出されていたのである。熊本で規格外の野菜を使った食堂があることを知ったのはそんなときだった。その取り組みに共感した金子さんは、さっそく社員食堂を市場直営にし、色箱の魚たちを使うようにした。色箱を市場価格より数百円高く買い取り、食堂の料理として提供する。漁師たちはもちろん、新鮮な魚を食べられるようになった社員たちも大いに喜んだ。しかし、メニューを決めるのはなかなか大変だという。調理を担当する福田(ふくだ)とみ代(よ)さんは、毎朝4時から始まるセリ前に出社し、その日の色箱を確かめている。「色箱に入った魚は種類も数もその日によってさまざまです。でも今では、見に行く前からどんな魚たちが色箱に入るのか分かるようになったんですよ」とにこやかに話してくれた。
 「もったいない食堂」は、それから約1年後、一般市民も受け入れる食堂となり、今では新鮮な魚料理を求める多くの人たちで賑わっている。そして、もったいない魚たちは、真空パックされた「もったいないセット」や「アジのたたき身」として商品化された。
 「これからは市場と一般の人々との距離をもっともっと縮めたいと思っているんですよ」と金子さん。もったいない魚の取り組みは、まず規格外とされる魚たちの存在を知ることから始まる。この日の日替わり定食のメインは「アジのポテトのせフライ」。新鮮なヤズの刺身もついてきた。
 今や世界で通じる言葉になりつつある「MOTTAINAI」。人々の営みと自然を共存させていくこの取り組みが、佐世保から世界へと広がっていくことを期待したい。

 

食堂発起人の金子卓寛さん

調理担当の福田とみ代さん

佐世保魚市場株式会社
佐世保市相浦町1563 TEL. 0120-58-0343
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