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みんなで取り組む災害に強い長崎県づくり条例(平成25年3月29日長崎県条例23号)

 目次
 前文
 第1章 総則(第1条―第8条)
 第2章 県民等による防災対策(第9条―第16条)
 第3章 市町の基本的な施策(第17条―第23条)
 第4章 県の基本的な施策(第24条―第38条)
 第5章 雑則(第39条・第40条)
 附則


 長崎県は、その自然的・地理的条件から、台風、豪雨、地すべり、土石流、山崩れ、火山噴火、火砕流等様々な災害が発生する可能性を有しており、これまでも尊い人命と貴重な財産が災害によって度々失われてきた。
 中でも、昭和32年7月の諫早大水害、昭和57年7月の長崎大水害、平成2年から平成7年まで続いた雲仙普賢岳噴火災害では、甚大な被害が生じ、多くの尊い人命が失われたことは、今でも多くの県民が記憶しているところである。
 近年は、地球温暖化の影響もあり、全国各地で豪雨による被害が度々発生しているだけでなく、台風の大型化が懸念されており、本県においても、今後ますますこうした災害に警戒する必要性が高まっている。
 さらには、雲仙活断層群を始めとした活断層が確認されている地域だけでなく、これまで地震が想定されていなかった地域においても、大きな地震が発生する可能性があり、その対策が急務となっている。
 また、本県は、玄海原子力発電所から最短で8.3キロメートルの距離にあることから、万一原子力災害が発生した場合には、本県も大きな影響を受ける可能性が高い。
 県は、これまでも、様々な災害の発生に備えて、市町及び防災関係機関と連携して各種の防災対策を進めてきたところである。しかしながら、災害による被害を最少化するためには、行政による防災対策のみならず、県民自らが防災対策を講じるとともに、自主防災組織の結成等により、周囲と互いに助け合いながら地域の安全を確保することが必要である。また、過去に経験した災害を語り継ぐことによって、そこから災害による被害の軽減につながる教訓を学び取り、その教訓を防災対策に活かすことが重要である。
 少子高齢化や過疎化によって人口減少が進み、地域コミュニティの衰退が懸念されるなど、本県を取り巻く社会環境が大きく変化している中、個々の県民による防災対策と地域における防災対策それぞれの重要性を改めて認識するとともに、過去に経験した災害から得られた教訓を伝承することによって、災害への対応能力を高めなければならない。
 ここに、私たちは、災害を未然に防止し、たとえ災害が発生したとしてもその被害を軽減することができる「災害に強い長崎県」を実現するため、県民、地域、事業者、市町及び県がともに力を合わせて防災対策を推進することを決意し、この条例を制定する。



第1章 総則


(目的)
第1条 この条例は、防災対策に関し、基本理念を定め、並びに県民、自主防災組織及び事業者(以下「県民等」という。)の役割、市町の役割及び県の責務を明らかにするとともに、県民等による防災対策の基本となる事項並びに市町及び県の基本的な施策を定めることにより、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)その他の法令と相まって、県民等、市町及び県の協働による防災対策を総合的に推進し、もって災害に強い長崎県の実現を図ることを目的とする。


(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 災害 災害対策基本法第2条第1号に規定する災害及び原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)第2条第1号に規定する原子力災害をいう。
(2) 防災 災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう。
(3) 防災対策 防災のために行う対策(減災(災害による被害を最小化することをいう。)のために行う取組を含む。)をいう。
(4) 防災関係機関 次に掲げる機関をいう。
  ア 国の地方行政機関であって、長崎県を管轄区域とするもの
  イ 自衛隊
  ウ 消防組織法(昭和22年法律第226号)第9条の規定により県内の市町(一部事務組合を含む。)が設置する消防本部、消防署及び消防団
  エ 水防法(昭和24年法律第193号)第5条第1項の規定により県内の市町が設置する水防団(消防団が兼ねる場合を含む。)
  オ 災害対策基本法第2条第5号に規定する指定公共機関であって、県内で業務を行うもの
  カ 災害対策基本法第2条第6号に規定する指定地方公共機関であって、県内で業務を行うもの
(5) 自主防災組織 県民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織をいう。
(6) 災害時要援護者 高齢者、障害者、乳幼児、妊産婦、傷病者、外国人等であって、災害時の避難等において援護を要する者をいう。

(基本理念)
第3条 災害に強い長崎県を実現するための防災対策は、次に掲げる事項を基本として効果的かつ着実に行われるものとする。
(1) 自助(県民が自らの安全を自らで守ることをいう。)、共助(県民等が地域の安全を守るために互いに助け合うことをいう。)及び公助(県、市町及び防災関係機関が県民等の安全を守ることをいう。)の理念の下に、県民等、防災関係機関、市町、県の適切な役割分担が図られること。
(2) 男女双方の視点、災害時要援護者の支援等が配慮されること。

(県民の役割)
第4条 県民は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、次に掲げる事項を行うよう努めるものとする。
(1) 平常時から防災に関する意識を高め、自ら防災対策を実施すること。
(2) 県、市町及び防災関係機関が実施する防災対策に協力すること。

(自主防災組織の役割)
第5条 自主防災組織は、基本理念にのっとり、災害時に果たす役割を認識し、次に掲げる事項を行うよう努めるものとする。
(1) 地域住民と協力して、地域における防災対策を実施すること。
(2) 県、市町及び防災関係機関が実施する防災対策に協力すること。

(事業者の役割)
第6条 事業者は、基本理念にのっとり、災害時に果たす役割を認識し、次に掲げる事項を行うよう努めるものとする。
(1) 平常時から防災に関する意識を高め、自ら防災対策を実施すること。
(2) 県、市町及び防災関係機関が実施する防災対策に協力すること。
(3) 避難場所の提供等により、地域住民及び自主防災組織が実施する防災対策に協力すること。

(市町の役割)
第7条 市町は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項を行うよう努めるものとする。
(1) 当該市町の住民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、県及び防災関係機関と連携し、防災対策を総合的に推進すること。
(2) 県及び防災関係機関が実施する防災対策に協力すること。

(県の責務)
第8条 県は、基本理念にのっとり、県民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、市町及び防災関係機関と連携し、防災対策を総合的に推進しなければならない。

第2章 県民等による防災対策


(防災に関する意識の高揚等)
第9条 県民は、防災訓練に参加すること、県、市町又は防災関係機関が提供する災害等に関する情報を活用すること等により、防災に関する知識の習得及び家庭、職場等を通じた防災に関する意識の高揚に努めるものとする。
2 自主防災組織は、定期的に防災訓練等を実施することにより、地域住民に対する防災に関する知識の普及に努めるものとする。
3 事業者は、定期的に防災訓練等を実施することにより、従業員に対する防災に関する知識の普及に努めるものとする。


(災害教訓の伝承)
第10条 県民は、過去に経験した災害から得られた教訓(以下「災害教訓」という。)を伝承し、今後の防災対策に活かすよう努めるものとする。


(自主防災組織の活動への参加)
第11条 県民は、自主防災組織を結成し、その活動に積極的に参加するよう努めるものとする。


(県民等による物資の備蓄等)
第12条 県民は、自らが災害時に必要とする水、食料、医薬品その他の物資を備蓄するよう努めるとともに、災害等に関する情報を収集できる機器を準備するよう努めるものとする。
2 自主防災組織及び事業者は、災害に備えて、あらかじめ、初期消火、負傷者の救助等に必要な物資及び資機材を備蓄し、又は整備し、及び点検するよう努めるものとする。

(建築物の倒壊等の防止)
第13条 県民及び事業者は、災害に備えて、あらかじめ、その所有又は管理する建築物、工作物等について、災害による倒壊等を防ぐ措置を講ずるよう努めるとともに、当該建築物等が災害時に倒壊したときは、自己の安全の確保に支障を生じない限度において、二次災害(当該建築物等の倒壊に伴って新たに生ずる火災等をいう。)による被害の発生等を防止するよう努めるものとする。
2 県民及び事業者は、災害に備えて、あらかじめ、その所有又は管理する家財について、災害による転倒等を防ぐ措置を講ずるよう努めるものとする。

(円滑な避難)
第14条 県民は、災害に備えて、あらかじめ、自ら災害等に関する情報を収集するよう努めるとともに、災害が発生し、又は発生するおそれがあるときは、自主的に避難するよう努めるものとする。
2 県民は、避難のための立退きの勧告等があったときは、速やかに、これに応じるよう努めるものとする。この場合において、災害時要援護者、旅行者等の円滑な避難に配慮するよう努めるものとする。
3 自主防災組織は、災害が発生し、又は発生するおそれがあるときは、地域住民の安全を確保するため、地域住民に対し、災害等に関する情報の伝達、避難の誘導等を行うよう努めるものとする。この場合において、災害時要援護者の円滑な避難に配慮するよう努めるものとする。
4 事業者は、災害が発生し、又は発生するおそれがあるときは、その所有又は管理する施設の利用者、従業員及び周辺地域の住民(以下この項において「施設利用者等」という。)の安全を確保するため、施設利用者等に対し、災害等に関する情報の提供、避難の誘導等を行うよう努めるものとする。

(観光施設等の利用者の安全の確保)
第15条 観光施設、宿泊施設(農林漁村体験民宿業の施設を含む。)その他観光に関する施設を所有又は管理する者は、当該施設の利用者に対して、災害に備えて、あらかじめ、避難場所及び避難経路を教示するよう努めるとともに、災害が発生し、又は発生するおそれがあるときは、災害等に関する情報の提供、避難場所への誘導等を行うよう努めるものとする。

(事業継続計画)
第16条 事業者は、あらかじめ、大規模災害時における経営上中核となる事業の中断を防止するため及び中断した事業をできる限り早期に再開するために必要な事項を定めた計画を策定するよう努めるものとする。



第3章 市町の基本的な施策


(市町による災害等に関する情報の収集等)
第17条 市町は、災害等に関する情報を災害時に住民に対して的確に提供することができるよう、災害等に関する情報の収集及び提供を行うために必要な体制を整備するよう努めるものとする。
2 市町は、災害に備えて、あらかじめ、ハザードマップ(災害により住民の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると想定される区域、避難場所、避難経路その他の災害に関する情報を記載した地図をいう。)を作成するよう努めるとともに、その内容を住民に周知するよう努めるものとする。


(自主防災組織の育成)
第18条 市町は、自主防災組織の結成を促進し、その活動に対する支援を行うよう努めるものとする。


(消防団の充実強化)
第19条 市町は、防災対策の推進を図るため、消防団の充実強化に努めるものとする。
2 市町は、消防団の充実強化に当たっては、消防団が水防活動に従事する場合があることに配意するものとする。


(市町による物資の備蓄)
第20条 市町は、災害応急対策に必要な物資の備蓄に努めるものとする。

(避難計画の策定等)
第21条 市町は、災害に備えて、あらかじめ、避難場所、避難所、避難経路等について定めた避難計画を策定するよう努めるものとする。
2 市町は、前項の避難計画の策定に当たっては、福祉避難所(通常の避難所においては生活が困難な災害時要援護者を受け入れるための設備等を整えた避難所をいう。)を指定するよう努めるものとする。
3 市町は、避難場所への誘導のための標識の設置その他円滑な避難に資するための措置を行うよう努めるものとする。
4 市町は、避難所の運営における女性の参画を促進し、避難所の運営が男女双方の意向に配慮したものとなるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(医療救護体制の整備)
第22条 市町は、災害に備えて、あらかじめ、災害時の医療救護活動(心のケアを含む。)に関する体制(以下「医療救護体制」という。)の整備を図るよう努めるものとする。

(市町の業務継続計画)
第23条 市町は、あらかじめ、大規模災害時の限られた人員、物資等を基に、災害応急対策に係る業務及び優先度が高い通常業務を災害が発生した直後から適切に実施できるようにするために必要な事項を定めた計画を策定するよう努めるものとする。

第4章 県の基本的な施策


(防災教育等の機会の確保等)
第24条 県は、県民等が行う防災対策が円滑に行われるよう、市町及び防災関係機関と連携して、次に掲げる事項を行うよう努めるものとする。
(1) 県民等に対する防災教育、防災訓練等の機会を確保すること。この場合において、幼児又は児童生徒に対する防災教育、防災訓練等については、その発育段階に応じたものとなるよう留意すること。
(2) 防災推進員(自主防災組織、事業所等による防災対策において中心的役割を担う者をいう。)その他防災対策の推進に資する人材を育成すること。


(災害教訓の伝承に対する支援)
第25条 県は、市町及び防災関係機関と連携して、災害教訓の伝承の重要性について普及啓発を行い、県民が災害教訓を伝承する取組を支援するものとする。

(県による物資の備蓄等)
第26条 県は、災害応急対策に必要な物資の備蓄を行うものとする。
2 県は、被災市町からの要請があったときは、県の備蓄品を提供するとともに、当該市町が必要とする物資の調達を行うよう努めるものとする。


(事業者との協定)
第27条 県は、災害時の避難場所の提供、食料、医薬品等の物資の供給、緊急輸送等が的確かつ迅速に行われるよう、事業者との協定の締結に努めるものとする。

(防災に関する施設等の整備)
第28条 県は、災害を未然に防止し、又は被害の拡大を防ぐため、その管理する道路、河川、港湾、漁港、学校その他の施設について、計画的に整備するよう努めるものとする。

(孤立地区対策の推進)
第29条 県は、孤立地区(災害によって交通が途絶する地区をいう。以下この条において同じ。)の発生に備えて、離島半島地域の特性を踏まえつつ、あらかじめ、市町及び防災関係機関と連携し、孤立地区に対する医療の提供、物資の輸送、情報の提供等に関する体制の整備を図るものとする。

(県による災害等に関する情報の収集等)
第30条 県は、市町及び防災関係機関と連携し、災害等に関する情報を収集するとともに、広く県民等がこれらの情報を共有するために必要な措置を講ずるものとする。

(災害時要援護者への支援)
第31条 県は、災害時要援護者への情報の提供及び災害時要援護者の避難の支援を円滑に行うため、自主防災組織及び市町と連携して、必要な措置を講ずるものとする。

(旅行者の安全の確保)
第32条 県は、旅行者の安全を確保するため、市町及び防災関係機関と連携して、県内外の観光地等における災害の発生の状況に関する情報の提供、災害時の避難場所への誘導等に資する環境の整備を図るものとする。

(防災ボランティアへの支援等)
第33条 県は、被災地の状況に応じた災害応急対策又は災害復旧を円滑に実施するため、平常時から防災対策に関するボランティア団体と連携するよう努めるとともに、当該団体に対して必要な支援を行うよう努めるものとする。
2 県は、市町及び防災関係機関と連携し、県民等に対して、防災対策に関するボランティア活動への参加について啓発するよう努めるとともに、当該ボランティア活動に参加するために必要な情報の提供等を行うよう努めるものとする。

(広域的な医療救護体制の整備等)
第34条 県は、災害に備えて、あらかじめ、広域的な医療救護体制の整備を図るものとする。
2 県は、第22条の規定に基づいて市町が実施する施策を支援するために必要な措置を講ずるものとする。

(公衆衛生の確保)
第35条 県は、市町と連携して、災害時における感染症の発生の予防及びまん延の防止その他公衆衛生上の危害の発生を防止するための体制の整備を図るよう努めるものとする。

(県の業務継続計画)
第36条 県は、あらかじめ、大規模災害時の限られた人員、物資等を基に、災害応急対策に係る業務及び優先度が高い通常業務を災害が発生した直後から適切に実施できるようにするために必要な事項を定めた計画を策定するものとする。

(災害復旧及び復興の推進)
第37条 県は、市町及び防災関係機関と連携し、災害を受けた地域の復旧及び復興の円滑かつ計画的な実施を推進するものとする。

(県民等の意見の反映)
第38条 県は、県の防災に関する施策について、県民等の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

第5章 雑則


(長崎県防災月間)
第39条 県民等の間に広く防災についての関心と理解を深めるとともに、防災対策の一層の推進を図るため、長崎県防災月間を設ける。
2 長崎県防災月間は、7月1日から7月31日までとする。


(財政上の措置)
第40条 県は、防災に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。


附 則
この条例は、平成25年4月1日から施行する。

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